ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

決算整理仕訳その4~①収益・費用の前払い・前受け、未払い・未収の概要説明~

収益・費用の前払い・前受け、未払い・未収

2019年3月までは、収益・費用の繰り延べ・見越しというタイトルでよかったのですが、わかりづらいということで言葉遣いが変更になりました。

これで、どれだけ受験者の負担が軽減されるか分かりません。

保険料とか会費とか、4月の期首ではない中途半端な時期に支払うと、次期の分まで含まれてしまいます。たとえば、保険料12,000円(1か月分1,000円)を8月に1年分支払うと、8月~3月分の8か月分が当期の費用、4月から7月の4か月分が次期の費用となります。何もしないと次期の費用まで当期の費用となってしまうので、次期の費用を減らす作業をしなければなりません。これを費用の繰り延べといいます。

先払い(先払いする方は前払い、先払いを承諾する方は前受け)をすると、繰り延べの処理が必要になります。

それとは逆に後払い(後払いする方は未払い、後払いを承諾する方は未収)をすると、見越しの処理が必要になります。

そんなわけで、見越しの方は「見」の部分を「未」に変えて、覚えてくださいという記憶方法があったのですが、使えなくなったのが残念です。

 

ところで、以前「未収入金と未払金、前受金と前払金」をお話ししましたが、覚えていますか?

 

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 それと今回のテーマ、「収益・費用の前払い・前受け、未払い・未収」。微妙に名称が違うことにお気づきでしたか?最初に「収益・費用の」というのがついています。

単発で買い物をしたり、取引をしたときは、前回の勘定科目を使います。しかし、保険料や家賃収入など継続的に行われる取引についての収益や費用については、「未収入金・未払金、前払金・前受金」の勘定科目は使用しません。

代わりに「未収収益・未払費用、前払費用・前受収益」という勘定科目を使います。

ここは、3級の本試験でも受験生を悩ませるテーマとなっています。そして長くなりそうなので、次回、ひとつずつ説明していきます。

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152回日商簿記検定の予想

もう本試験まで2週間を切りました。受験を目指している方は、総仕上げをしていることと思います。以前、2級だけですが本試験の予想をしました。

 

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 そして、いろんなところで予想が発表されていますので、ここでまとめてみました。

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当たり前といえば、当たり前の戦略なのですが、問題集を出版している会社に限って予想の量が多い!これで、「ここが当たった!」とか帯や表紙に記載して、販売数を伸ばそうとしているのが、あざといと思うのは自分だけでしょうか?

ただし、この予想表のすべての項目をマスターすれば、70点の合格点に余裕で到達するということは、毎回検証済みです。

決算整理仕訳その3

減価償却費の計上

減価償却費の計上については、ほぼ過去の記事でご説明しました。

 

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 補足説明として、本試験では年次決算(1年に1回の決算日)がよく出ますが、まれに月次決算(1ヶ月に1回の決算日)を採用している場合があります。

月次決算は、毎月行われるので、正確な会社の経営状況が把握できます。経営者は月次決算書または残高試算表を見て、迅速な経営判断が下せます。また、経理担当者としては、3月決算時に1年近く前の4月の出来事を思い出すことは困難です。記憶のあるうちにチェックすることで帳簿が合わなかったときに思い出せるわけです。

計算方法は、普通に1年分の減価償却費に12か月で割れば1か月分の減価償却費が出ます。

 

例)建物の減価償却費について、年間見積額360,000円を月割計算したものを毎月の決算で計上している。当月の減価償却費を計上しなさい。なお、記帳方法は間接法である。

毎月の減価償却費:360,000円÷12カ月=30,000円

減価償却費)30,000/(建物減価償却累計額)30,000

 

期首に1年間の見積額を仮で計算しています。期末に実際の計算額が違うときには、年次決算で調整します。

例えば、3月の年度末に計算したところ年間の減価償却費が400,000円だったときには、

400,000円(年間)-(30,000円(1か月分)×11カ月)=70,000円が3月の減価償却費となります。

減価償却費)70,000/(建物減価償却累計額)70,000

売上原価の計算

売上高から売上原価を差し引くと売上総利益が出ます。通常、粗利と呼ばれるものです。

売上高は、売上(収益)の期末残高になるので、特に問題なく数値を拾い出せますが、売上原価の方はちょっと計算しないと数値が出ません。

売上原価に対応する勘定科目は、三分法によると仕入(費用)と繰越商品(資産)となります。

 

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商品を仕入れたときには、仕入(費用)を使っていましたが、これも貯蔵品(資産)と同じ考えで、当期仕入れた商品のうち売ることのできなかった在庫は、繰越商品(資産)として計上し、次期に繰り越します。

この繰越商品は、貯蔵品と違って、期首に再振替仕訳で元に戻すことはしないので、この決算期に繰越商品を仕入れに戻す作業をします。

例えば、期首(4月)に前期の在庫として繰越商品が10,000円あったとします。当然、その商品は、当期に売っているはずなので、仕入に計上します。

仕入)100,000/(繰越商品)100,000

そして、期末(3月)に在庫が50,000円残っていた時には、仕入から繰越商品に振り替えなければなりません。

(繰越商品)50,000/(仕入)50,000

当期の仕入高が500,000円だったとき、売上原価は以下のとおりになります。

500,000(当期仕入)+100,000(期首繰越商品)ー50,000(期末繰越商品)=550,000(売上原価)

この二つの仕訳を一つにまとめた仕訳が、決算整理仕訳となります。

入)100,000/(越商品)100,000

越商品)50,000/(入)50,000

勘定科目の最初の文字を順に呼ぶと「仕・繰・繰・仕」(し・くり・くり・し)となります。この仕訳の覚え方は、簿記業界では最も有名な呪文になっています。

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決算整理仕訳その2

貯蔵品への振り替え

郵便切手や収入印紙については、購入した時点で費用に計上されます。

郵便切手 → 通信費(費用)

収入印紙 → 租税公課(費用):印紙税の納付

そのため、決算日では使う見込みのない分を貯蔵品(資産)として、処理します。そうすることで、年度内の適正な費用配分がなされます。

 

例)決算において、未使用の郵便切手22,000円、収入印紙10,000円があった。

(貯蔵品)32,000/(通信費)22,000

         (租税公課)10,000

 

こちらも、前回と同じように決算が終了したら、期首に再振替仕訳を行います。

(通信費)22,000/(貯蔵品)32,000

         (租税公課)10,000

貸倒引当金の計上

まずは、過去の記事をご覧ください。

 

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 貸倒引当金とは、受取手形売掛金などの売掛債権が次期以降に回収不能となる可能性がある場合に備えて設定します。

設定方法には、貸倒実績率法財務内容評価法キャッシュ=フロー見積法がありますが、3級及び2級では貸倒実績率法を使います。

設定率は、得意先の経営状態によって変わります。俗にヤバい会社ほど設定率を高く設定します。本試験では、設定率が与えられていますのでそれに従って計算します。

貸倒引当金については、受取手形売掛金のマイナス評価分(評価勘定)となるので、貸方に記入します。そして、貸倒引当金の相手勘定は、貸倒引当金繰入(費用)で処理します。

 

例)決算において、売掛金の期末残高100,000円に対し、1%の貸倒引当金を設定する。

貸倒引当金:100,000円×1%=1,000円

(貸倒引当金繰入)1,000/(貸倒引当金)1,000

 

貸倒引当金については、次期の売掛債権が貸倒れとなったときの勘定科目なので、次期にその金額が繰り越されます。よって、再振替処理は不要です。

1年間貸倒れがなかった場合、その金額がそっくりそのまま残ります。そして、次の決算日にも同じように貸倒引当金の設定をします。そうすると、その年の貸倒引当金の設定金額が異なるため、その差額分だけを追加計上することになります。これを差額補充法といいます。

文章で言っても、ちょっとピンとこないと思いますので、例で説明していきます。

 

例)決算において売掛金の期末残高220,000円に対し、1%の貸倒引当金を設定する。なお、貸倒引当金の期末残高は1,000円である。

貸倒引当金:220,000円×1%=2,200円

このまま計上すると貸倒引当金の残高は3,200円になってしまいます。

そこで、2,200円-1,000円=1,200円が仕訳の金額となります。

(貸倒引当金繰入)1,200/(貸倒引当金)1,200

これで、次期に繰り越す貸倒引当金の残高が(期末残高)1,000円+(当期繰入額)1,200円=2,200円になりました。

決算整理仕訳その1

決算整理仕訳とは、正確な決算書を作成するために調整を行う仕訳のことをいいます。

3級で行う決算整理仕訳には以下のものがあります。

①現金過不足の処理

②当座借越への振り替え(当座預金がマイナス残高の場合)

③貯蔵品への振り替え(本試験では次年度に繰り越す郵便切手と収入印紙

④貸倒引当金の設定

減価償却費の計上

⑥売上原価の計算

⑦収益・費用の前払い・前受け、未払い、未収

⑧消費税納付額の計算

法人税等の計上

以上の項目を順に説明していきます。

現金過不足の計算

まずは、こちらの記事をご覧ください。

 

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 現金過不足が決算日になっても判明しなかった場合において、現金過剰のときは、雑益(収益)で処理をします。また、現金不足のときは、雑損(費用)で処理します。

 

例1)決算日において、現金過不足(借方)が1,000円あるが、その原因は不明である。

 

現金過不足が借方残高の場合は、以下のような仕訳をしています。

原因:(現金過不足)1,000/(現金)1,000

現金が貸方にあるので、現金が不足していることになります。よって、借方に雑損(費用)で処理します。

現金過不足は、決算書には出てこない勘定科目なので、貸方に記入します。

答え:(雑損)1,000/(現金過不足)1,000

 

本試験を受ける方は、前後の関係がわからなくなってしまったときには、必ず今回の原因となる仕訳を書いてみてから、問題に挑んでもらうことを徹底しています。

すんなり答えが出る人でも、終わりの時間で解答の確認を行うときは、必ずこの確認に仕訳をすることで、ケアレスミスを防止することができます。

比較的簡単でほとんど考えなくてもよい問題に単純ミスの落とし穴があることに注意してください。今後、忘れていなければ(汗)、3級でも2級でも前後の仕訳を示して説明したいと思っています。

 

例2)決算日において、現金過不足(貸方)が1,000円あるが、その原因は不明である。


現金過不足が貸方残高の場合は、以下のような仕訳をしています。
原因:(現金)1,000/(現金過不足)1,000
現金が借方にあるので、現金が過剰していることになります。よって、貸方は雑益(収益)で処理します。

こちらも現金過不足勘定を借方に記入して、ゼロにします。
答え:(現金過不足)1,000/(雑益)1,000

当座借越への振り替え

こちらの過去の記事をご覧ください。

 

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 こちらの後半の記事で当座借越契約のお話をしています。

例)決算において、当座預金の残高(貸方)は50,000円であった。なお、当社は500,000円の当座借越契約を結んでいるため、適切な勘定に振り替える。

 

原因の仕訳を示すなら以下のとおりです。わからない勘定科目は、???とか横棒一線、空白などで記入します。

原因:(???)50,000/(当座預金)50,000

決算日になっても当座預金が貸方残高ということは、銀行から借金をしていることになります。そのため、当座借越(負債)もしくは借入金(負債)で処理します。

答え:(当座預金)50,000/(当座借越)50,000

これで、当座預金がゼロになり、当座借越が50,000円(貸方残高)となります。

 

これは資産・負債・純資産勘定、共通してですが、決算が終わったときには、期首(会社では4月1日)に決算整理仕訳の逆仕訳再振替)をして、元通りにする作業があります。

再振替:(当座借越)50,000/(当座預金)50,000

再振替の問題は、たまに第1問の仕訳問題で出題されることがあります。

試算表

決算の流れ

いよいよ3級商業簿記も大詰めの決算手続となりました。決算の手続きは、以下の流れに沿って行います。

①試算表の作成

②決算整理仕訳

③精算表の作成

貸借対照表損益計算書の作成

⑤帳簿の締め切り

 

決算とは、会計期間における財政状態や経営成績を明らかにするための手続きとなります。

会計期間について、株式会社は自由に決めることができます。3級の本試験では、4月1日~3月31日とされ、決算日は3月31日になることが多いです。

個人事業主は、以前話ししましたが、1月1日~12月31日(決算日12月31日)の固定です。

試算表の作成

試算表とは、1年(または1か月)の仕訳から総勘定元帳への転記が、果たして間違っていなかったかをチェックする作業として作成される表です。

試算表は3つの種類があります。

①各総勘定元帳ごとの借方と貸方の合計を記入した合計試算表

②各総勘定元帳ごとの残高を記入した残高試算表

③合計試算表と残高試算表を併記した合計残高試算表

記帳が間違っていなければ、当然、試算表の貸借は一致します。ここからの例は、合計残高試算表でお話しします。

 

例)次に示す各勘定に基づいて、4月中の合計残高試算表を作成しなさい。

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①現金の借方合計を、試算表の借方合計へ転記します。

借方合計:80,000+60,000=140,000

 

②現金の貸方合計を、試算表の貸方合計へ転記します。

貸方合計:30,000

 

③現金の借方合計-貸方合計で計算した残高を、試算表の借方残高へ転記します。

(貸方がホームポジションの勘定は、貸方合計ー借方合計=貸方残高となります。)

借方合計140,000-貸方合計30,000=借方残高110,000

 

このようにすべての勘定科目について、残高表に記入します。

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借方合計(残高)と貸方合計(残高)の数字が一致しますので、これで完成となります。したがって、4月中の記帳は間違っていなかったことになります。

仕訳日計表

仕訳日計表とは、伝票に起票した1日の取引を勘定科目ごとに集計した表をいいます。

過去の試験問題を使って説明します。

例)令和×年12月1日に作成された各伝票にもとづいて、仕訳日計表を作成しなさい。

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上の伝票を仕訳にしたのが、次のとおりです。

入金伝票

№101(現金)10,000/(売上)10,000

№102(現金)12,000/(受取手数料)12,000

出金伝票

№201(仕入)5,000/(現金)5,000

№202(仕入)8,000/(現金)8,000

振替伝票

№301(売掛金)90,000/(売上)90,000

№302(仕入)55,000/(買掛金)55,000

 

以上の仕訳ができたら、仕訳日計表に借方と貸方の各勘定科目ごとに合計して記入するだけです。

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本試験対策の解き方があるので、少し説明をします。上の例のように、仕訳を書いていたら時間がかかるため、実際は仕訳しないで解いていく必要があります。①~④の順に解いていきましょう。

 

①入金伝票の借方は、現金で確定しています。そのため、入金伝票の金額をすべて足していくと22,000円となりますので、現金の借方に記入します。

そして、仕訳日計表の記入漏れがないように伝票の左にチェックマークをつけます。

 

②出金伝票の貸方は、現金で確定しています。そのため、出金伝票の金額をすべて足していくと13,000円となりますので、現金の貸方に記入します。

そして、仕訳日計表の記入漏れがないように伝票の左にチェックマークをつけます。

③そして、入金伝票に表示されている勘定科目は貸方、出金伝票に表示されている勘定科目は借方となっています。それを振替伝票の分を足していくとその他の勘定科目が埋まっていきます。

記入したら入金伝票と出金伝票の右にチェックマークをつけます。振替伝票は、借方の勘定科目を記入したら左にチェックマーク貸方の勘定科目を記入したら右にチェックマークをつけます。最終的に各伝票には2つのチェックマークがつくことになり、記入漏れを防ぐことができます。

例えば、仕入に注目すると、出金伝票に2つ、振替伝票に1つありますね。3つ足すと68,000円になります。そして、仕訳日計表に記入したら、出金伝票の右と振替伝票の左にチェックマークをそれぞれつけます。

こうすることで時間の短縮とチェック機能を同時にすることができるのです。

 

(ちょっとPR)字がちょっとどころではないですが…

北海道旭川市行政書士事務所を経営しているかたわら、このような簿記などの社会に役立つ資格の個別指導をしています。日商2級・3級の合格を目指している方はHPをチェックしてみてください。

mars-office.jimdofree.com

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