ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

有形固定資産その10~減価償却~

2級の減価償却の計算方法には、定率法生産高比例法があります。

定率法

定率法とは、期首時点の帳簿価額(未償却残高)に一定の償却率を掛けて減価償却費を計算します。

特徴としては、始めは減価償却費が高く計上されますが、徐々に低くなっていきます。

(取得原価-期首の減価償却累計額)×償却率

例えば取得原価10,000円(期首に購入)の備品について、償却率20%で減価償却を行った場合は、以下のとおりとなります。

【1年目の減価償却費】

∴10,000円×20%=2,000円

【2年目の減価償却費】

∴(10,000円-2,000円)×20%=1,600円

【3年目の減価償却費】

∴(10,000円-3,600円)×20%=1,280円

このように、毎年減価償却率が低減されていきます。

したがって、長持ちする固定資産ではなく、比較的すぐに価値が下がっていく固定資産に適用されます。

200%定率法

通常の定率法に比べて、2倍の勢いで減価償却費を計上する方法です。200%定率法が出題された場合、自分で償却率を計算することが多いです。

200%定率法の償却率:1÷耐用年数×200%

たとえば、耐用年数が10年の場合は、償却率:1÷10年×200%=0.2となります。

大抵は、そこで終わる話ですが、合格率の変動によっては、難しい問題が出る傾向があります。そして、気づいた方もおられると思いますが、定率法を採用するといつまでたっても減価償却費が0円になることはありません。小学校で反比例のグラフを勉強したと思いますが、下のラインにはくっつきません。

この場合、ある程度まで行ったら、別の方法で償却することになります。その方法が以下のとおりとなります。

定率法を続けた結果、償却保証額(取得原価×保証率)を下回った場合、通常の償却率に変わって、改定償却率を使って減価償却します。

保証率とか改定償却率は問題文の中で示されます。

 

例題 決算において、当期首より3年前に取得した備品(取得原価10,000円、減価償却累計額7,840円)について200%定率法(耐用年数5年、残存価額ゼロ、保証率0.10800、改定償却率0.500)によって減価償却を行う。なお、記帳方法は間接法による。

まず、通常の償却率を計算します。

償却率:1÷5年×200%=0.4

これにもとづいて減価償却費を計算すると、(10,000-7,840)×0.4=864円となります。

そして、償却保証額を計算します。

償却保証額:10,000円×0.10800=1,080円

今回の減価償却費864円は償却保証額1,080円を下回りましたので、改定償却率で減価償却し直します。

減価償却:(10,000-7,840)×0.500=1,080円

そして、耐用年数5年目に償却保証額1,080円(残存価額と同額)を減価償却して終了となります。

生産高比例法

生産高比例法は、固定資産の耐用年数にわたって、その利用割合に応じて減価償却する方法です。

主に車両など走行メーターによって、はっきりと使用割合がわかるものに適用されます。以下の計算式によって減価償却費を計算します。

(取得原価-残存価額)×当期利用量/総利用可能量

たとえば、100,000円の業務用車両(期首に取得、総可能走行距離100,000㎞、当期の走行距離12,000㎞、残存価額ゼロ)を生産高比例法により減価償却費を計算すると以下のとおりとなります。

∴100,000円×12,000㎞/100,000㎞=12,000円

 

本社工場会計その2

今回は、そんなにボリュームは多くないですが製品が完成した後の処理です。

その1で説明しましたが、製品勘定が工場か本社に配置されているかで解答は変わってきます。この場合、問題文には以下の表示がされています。

①勘定科目として表示されているパターン

「本社の勘定:製品、買掛金、工場」

「工場の勘定:材料、仕掛品、製造間接費、本社」

②製品倉庫として表示されているパターン

「なお、製品を保管する倉庫は本社にある。」

いずれも、本社のみ製品勘定を使用することになります。そして、大体はこのパターンが多いと思われます。

製品が完成したとき①本社のみに製品勘定(倉庫)がある場合

例)製品30,000円が完成し、ただちに本社に納入した。

【本社側の仕訳】

(製品)30,000/(工場)30,000

【工場側の仕訳】

(本社)30,000/(仕掛品)30,000

製品が完成したとき②本社と工場に製品勘定(倉庫)がある場合

まず、工場では製品が完成して工場の倉庫に納入したときに以下の仕訳が行われています。(問題は上のものと同じ)

(製品)30,000/(仕掛品)30,000

その状態で問題を考えますので、正解は以下のとおりとなります。

【本社側の仕訳】

(製品)30,000/(工場)30,000

【工場側の仕訳】

(本社)30,000/(製品)30,000

簿記の試験は、文章読解の要素も入っています。よく読んでから解くようにしましょう。

製品を売り上げたとき

製品を販売するのは本社の仕事ですから、工場では何もしません。

例)製品20,000円を28,000円で売り上げ、代金は掛けとした。

【本社側の仕訳】

売掛金)28,000(売上)28,000

(売上原価)20,000/(製品)20,000

【工場側の仕訳】

仕訳なし

レアなケースとして、工場から直接、取引先に納品するパターン(製品勘定は本社のみ)も取り上げます。

工場では製品勘定が使えないため、仕掛品をすぐに本社に納入したこととします。そして、本社が代わって売上原価と売上の仕訳を行います。

例)工場は、製品20,000円を28,000円で本社の得意先に売り上げ、代金は掛けとした。

【本社側の仕訳】

売掛金)28,000/(売上)28,000

(売上原価)20,000/(製品)20,000

【工場側の仕訳】

(本社)20,000/(仕掛品)20,000

 

以上で、日商2級の工業簿記の範囲は終了です。商業簿記はまだまだ残っていますので、そちらを引き続きやっていきたいと思います。

工業簿記については、今すぐではないですが、全経1級の範囲に突入予定です。

株式の発行と剰余金の配当その3~剰余金の配当~

3級ではすでに問題文で示された剰余金の配当を未払配当金(負債)とし、会社法で決められた一定額を利益準備金(純資産)に振り替える処理を学習しました。

今回は、「会社法で決められた一定額」にスポットを当てて、実際に計算するところを学習していきます。

準備金の積立額の計算

会社法で規定する一定額の積立金額はどのように計算するのかということは、以下のとおりです。

剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金として計上しなければならない(会社法第445条④)

株式会社が剰余金の配当をする場合には、剰余金の配当後の資本(利益)準備金の額は、当該剰余金の配当の直前の資本(利益)準備金の額に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額を加えて得た額とする(会社計算規則第22条①・②)。

このように続いていくわけですが、相当長いので原文は割愛します。ちなみに、この問題は司法書士試験にも出てくる論点です。

そして、これを要約したものが次のとおりとなります。

①資本金×1/4-(資本準備金利益準備金

②配当金×1/10

①と②を比べて小さい方が利益準備金の積立額となります。

大した語呂合わせではないのですが、①は本金(4本金)の4で4分の1、②は配金(配10金)の10で10分の1と覚えます。

ここでもう一つ押さえておきたい論点が、配当財源のお話です。

繰越利益剰余金(純資産)を財源とした場合、上記の計算式により積立金額を利益準備金(純資産)に振り替えます。

そして、その他資本剰余金(純資産)を財源とした場合、上記の計算式により積立金額を資本準備金(純資産)に振り替えます。

つまり、同じグループ内での振り替えとなることを注意して計算しましょう。

それでは例題として151回第2問の一部を改変してご説明いたします。

 

例題 次の資料にもとづいて①および②の仕訳をしなさい。

【資料】

1.平成29年3月31日の決算にあたって作成した貸借対照表において、純資産の部の各科目の残高は次のとおりであった。なお、この時点における発行済株式総数は50,000株である。(一部抜粋)

資本金¥20,000,000 資本準備金¥1,600,000 利益準備金¥400,000

2.平成29年6月28日、定時株主総会を開催し、剰余金の配当及び処分を次のように決定した。

①株主への配当について、その他資本剰余金を財源として1株につき¥5、繰越利益剰余金を財源として1株につき¥15の配当を行う。

②上記の配当に関連して、会社法が定める金額を資本準備金及び利益準備金として積み立てる。  

 

本題は②ですが、②の計算をするにあたって①の金額が必要となります。

発行済株式総数50,000株にそれぞれの割合を掛ければ配当金が計算できます。

その他資本剰余金に対する配当金:50,000株×@5円=250,000円

繰越利益剰余金に対する配当金:50,000株×@15円=750,000円

仕訳自体は合計額で記入しても構いません。

【①の仕訳】

(その他資本剰余金)250,000/(未払配当金)1,000,000

(繰越利益剰余金)750,000/

 

次に積立金の計算に移ります。まず①の式をあてはめます。

①資本金×1/4-(資本準備金利益準備金

∴20,000,000×1/4-(1,600,000+400,000)=3,000,000円

次に②の式をそれぞれで行います。

②配当金×1/10

∴ その他資本剰余金:250,000×1/10=25,000円

    繰越利益剰余金:750,000×1/10=75,000円

②の方が少ないので、②を採用します。

【2の仕訳】

(その他資本剰余金)25,000/(資本準備金)25,000

(繰越利益剰余金)75,000/(利益準備金)75,000

株主資本の計数の変動

株式の論点で「欠損てん補」にかかわる仕訳が出題されることがありますので、ここで少しだけ説明します。

今のご時世最もいえることですが、会社経営では黒字のときもあれば、残念ながら赤字になってしまうこともあります。赤字のときにその穴埋めをどうすべきかということが欠損てん補の問題となります。

まずはおさらいとして、純資産の各説明をしていきましょう。

純資産には、大きく出資金グループ利益金のグループがあります。

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①資本金

会社の元手となる純資産の王様です。何事にも動じず、金額変更には株主総会の決議が必要となります。

資本準備金

資本金を守るために会社法で定められている準備資金です。資本金を守るためのとなります。こちらも金額の減少手続には株主総会または取締役会の決議が必要となります。

③その他資本剰余金

出資金グループでの余剰金が組み込まれます。ここから配当を行ったり、資本金等を増加したりできます。株主総会等決議はありますが、比較的自由にできるものです。

④その他利益剰余金

会社での利益が出た場合にまずはプールできるものに繰越利益剰余金があります。修繕積立金・任意積立金など何かの用途のために積み立てておく積立金とあわせてその他利益剰余金とされます。株主への配当を行うための資金もこちらになります。

利益準備金

株主への配当金を出すために会社法で定められているダムのようなものです。資本金が足りなくなったり、繰越利益剰余金が足りなくなったら利益準備金から補てんすることができます。

資金流用のケース

株主総会の決議とかの話は簿記に関係ないのですが、それぞれ重要度の比較ができるように示しました。また、考えやすいようにモノで例えています。

簿記で問題となるのは、どのようなときに、どのような範囲で資金流用できるのかということです。

箇条書きで以下にまとめましたので参考にしてください。

①同じグループ同士の資金移動はOK

資本金・資本準備金・その他資本剰余金の3つの間での資金流用はOKです。同様に利益準備金・その他利益剰余金(繰越利益剰余金・任意積立金など)の2つの間での資金流用はOKです。

②利益金グループの中でも資本金への移動はOK

資本金は純資産の王様なので、いろいろなところから吸い上げることができます。

③出資金グループから繰越利益剰余金へは欠損てん補の理由が必要

会社の営業利益からではなく、出資金から繰越利益剰余金とすることは、せっかく出資していただいた方々にお返しすることとなります。繰越利益剰余金の延長線上に配当金があるからです。

当期純損失で会社に赤字が発生し、繰越利益剰余金がマイナスになってしまったときに、その補てんをするためだけに許されます。

④剰余金同士の流用でも欠損てん補の理由が必要

最初に剰余金の使い道は比較的自由と話しましたので、同じ余り物の勘定科目であるその他資本剰余金その他利益剰余金の間の資金流用もいいのではないかと思いますが、③と同じ理由で欠損てん補のときにだけ許されます。

原資が繰越利益剰余金のときは利益準備金への積立てにしなければならないとする準備金の積立額は、このルールに基づいていることがわかると思います。

最後にこの論点の過去問(150回第1問肢5)で締めたいと思います。

 

 繰越利益剰余金が¥2,000,000の借方残高となっていたため、株主総会の決議によって、資本準備金¥3,000,000と利益準備金¥2,500,000を取り崩すこととした。利益準備金の取崩額は、繰越利益剰余金とした。

ここで一番多かった間違いの仕訳は以下のとおりです。

資本準備金)3,000,000/(繰越利益剰余金)5,500,000

利益準備金)2,500,000/

まず、「繰越利益剰余金が借方残高」ということは赤字の状態であるということです。その結果、資本準備金利益準備金を取り崩して欠損てん補したということです。なので、この仕訳となった訳ですが...

これだと最後の「利益準備金の取崩額は…」という部分はなくてもいいはずですよね。あえて書いているということは、利益準備金の部分だけを欠損てん補に使ったということになります。ということで次に多かった間違いが…

利益準備金)2,500,000/(繰越利益剰余金)2,500,000

資本準備金は必要ないので、なかったことになってしまいました。おそらく、

資本準備金)3,000,000/(資本準備金)3,000,000

で戻してしまうことになってしまったのでしょう。左右とも同じ仕訳なのでなかったことにしたようです。

これではせっかく株主総会資本準備金を取り崩す決議をしたことが意味をなさないことになってしまいます。では、資本準備金の行き先はどこになるのでしょうか?

このときの勘定科目一覧には出資金グループであるその他資本剰余金がありました。

資本準備金はその他資本剰余金へ移動したと判断することになります。したがって、正解は以下のとおりとなります。

利益準備金)2,500,000/(繰越利益剰余金)2,500,000

資本準備金)3,000,000/(その他資本剰余金)3,000,000

 

この次は順当にいけば、株主資本等変動計算書(S/S)となりますが、おそらく日商簿記の解答解説でいずれ出てきそうなので、ここでは割愛します。

本社工場会計その1

商業簿記では本支店会計という似たようなシステムが出てきます。工業簿記の方が簡単ですから、ここで感覚をつかんでいきましょう。

本社工場会計とは、本社と工場の会計を独立させるシステムのことをいいます。本試験では、本社と工場に存在する勘定科目を把握し、それぞれの立場で仕訳を行うことになります。主に製造関連のものは工場で仕訳をし、お金の決済や設備管理に関するものは本社で仕訳を行います。

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一般的なパターンです。

本試験において本社工場会計は、ほぼ仕訳問題です。通常は仕訳問題が5問(各4点、計20点)となっています。

これから具体例を順次進めていきますが、1つだけ注意点があります。本社の科目や工場の科目は大体決まっています。しかし、問題によって変わる科目が1つだけあります。それが製品勘定です。

製品を保管する倉庫は、通常、工場にあることになっていますが、場合によっては本社にあったり、どちらにもあったりします。製品勘定がどちらの科目なのかは事前に把握しておく必要があります。

材料を購入したとき

例)本社は材料10,000円を掛けで仕入れ、工場は材料倉庫に受け入れた。

材料を購入したときは、代金の支払いは本社が行い、材料の受入れは工場が行います。

そして、本社が材料を仕入れ、工場に送った場合には、相手科目に工場勘定を使います。感覚的にその部署が得をしたときは借方に、損をしたときは貸方に記入します。

まずは、本社側の仕訳です。本社は10,000円の掛仕入をしているので、買掛金が増加します。

(???)10,000/(買掛金)10,000

そして、工場がタダで材料を取得したので、工場勘定を借方に記入します。

【本社側の仕訳】

(工場)10,000/(買掛金)10,000

つぎは、工場側の仕訳です。工場が材料を受入れ、代金は本社が支払う場合には、相手科目に本社勘定を使います。

工場が、10,000円分の材料を受け取っているので、材料が増加します。

(材料)10,000/(???)10,000

そして、本社が代金を支払っているので、本社勘定を貸方に記入します。

【工場側の仕訳】

(材料)10,000/(本社)10,000

本社側の工場勘定工場側の本社勘定は、貸借逆の形で金額が一致します。工業簿記は仕訳問題だけですからあまり重要視しませんが、商業簿記ではかなり重要なものですから今のうちに覚えておきましょう。

工場で材料を消費したとき

例)工場は材料8,000円(直接材料費6,000円、間接材料費2,000円)を消費した。

工場内での作業は、本社にとっては関係ない話です。したがって、工場だけ仕訳を行いします。本社側を問われたときは、「仕訳なし」と解答用紙に大きく記入しましょう。

【本社側の仕訳】

仕訳なし

【工場側の仕訳】

(仕掛品)6,000/(材料)8,000

(製造間接費)2,000/

工場で賃金を消費したとき

例)工場は賃金10,000円(直接工7,000円、間接工3,000円)を消費した。

工場で賃金が発生したときは、工場側での仕訳をするとともに、未払賃金として、本社側が処理します。

【本社側の仕訳】

(工場)10,000/(未払賃金)10,000

【工場側の仕訳】

(仕掛品)7,000/(本社)10,000

(製造間接費)3,000/

本社で賃金を支払ったとき

例)本社で賃金10,000円を現金で支払った。

工場側では既に処理が終わっていますので、何もしません。本社側が処理をするだけです。

【本社側の仕訳】

(未払賃金)10,000/(現金)10,000

【工場側の仕訳】

仕訳なし

減価償却費を計上したとき

例)工場機械装置の減価償却費について、5,000円(月額)を計上した。

工場においては、減価償却製造間接費となります。本社側では減価償却累計額で処理します。ここではどちらが損得かが考えにくいところでもありますので、形で覚えてください。

【本社側の仕訳】

(工場)5,000/(減価償却累計額)5,000

【工場側の仕訳】

(製造間接費)5,000/(本社)5,000

株式の発行と剰余金の配当その2~株式の発行~

3級でも基本的なことをやりました。今回はもう少し掘り下げて説明していきたいと思います。まずは、株式の発行からです。

株式の設立発行

会社の設立にあたり、株式を発行したときは、原則として、その全額を資本金(純資産)で処理します。

 

例)マーズ株式会社は、会社の設立にあたり、株式50株を1株当たり10,000円で発行し、全株式の払い込みを受け、払込金額は当座預金とした。

当座預金)10,000/(資本金)10,000

ここまでは、3級のときそのままです。2級では払込金額のうち最低2分の1資本金として処理しなければなりません(容認)。では残額はどうしたら?ということですが、残りは資本準備金(純資産)として処理することとなります。

純資産の自己資本には、資本金・資本準備金・その他資本剰余金などがありますが、資本金は、足りなくなったからちょっと減らそうとかいう些細なことで動かすことはできません。会社の決まりである「定款」に資本金の額が定められていて、変更するには定款を変更をするとともに登記事項の変更もしなければならなく、大変面倒です。

あまり細かい話は省きますが、資本金>資本準備金>その他資本剰余金の順に手続きが面倒なんだなというぐらいで押さえておいてください。

本試験では、「なお、払込金額のうち会社法で認められている最低金額を資本金とする。」のように記載されています。このような場合は資本金と資本準備金を半分に分けて仕訳をしましょう。

当座預金)10,000/(資本金)5,000

           /(資本準備金)5,000

株式の増資

①申込証拠金を受け取ったとき

単に増資したときは、先ほどの仕訳と変わらないのですが、2級では証券会社に依頼して、株主(出資者)を募集します。

まずは、申込期間を設定して当社の株式を買ってもいいと思う株主を募集します。会社に株主を選ぶ権利があります。会社にふさわしくない人が株主になってしまうと株主総会が荒れてしまうからです。

このとき申込者から預かるお金を申込証拠金といいます。入金された段階で資本金と区別するために株式申込証拠金(負債または純資産)として処理します。

また、入金された預金も会社のものと一緒にしてしまうと煩雑になってしまうので、別段預金(資産)で処理をします。ただし、本試験では返金することを考えておらず、全額資本金等になります。

 

例)増資のため、株式10株について1株あたり12,000円で株主を募集したところ、申込期日までに全株式が申し込まれ、払込金額の全額を申込証拠金として受け入れ、別段預金とした。

(別段預金)120,000/(株式申込証拠金)120,000

②払込期日が到来したとき

 払込期日になったら、株式申込証拠金資本金(純資産)に、別段預金(資産)を当座預金(資産)に預け替えをします。「会社法で認められている最低金額」と表示があったら、資本金(純資産)と資本準備金(純資産)にはんぶんこです。

 

例)払込期日となり、申込証拠金120,000円を増資の払込金額に充当し、別段預金を当座預金とした。なお、払込金額のうち、会社法で認められている最低金額を資本金とすることとした。

(株式申込証拠金)120,000/(資本金)60,000

             /(資本準備金)60,000

当座預金)120,000/(別段預金)120,000

会社設立や株式発行にかかる費用の支出

会社を設立するときや株式を発行するときには、会社設立のための印紙代・登記手数料や株式発行のために証券会社へ支払う手数料などがかかります。

それらの経費を計上するために3つの勘定科目があります。

創立費(費用または資産):会社設立までにかかった諸経費や株式発行費用

開業費(費用または資産):会社設立から営業を開始するまでにかかった諸経費

株式交付費(費用または資産):会社設立後(増資時)の株式発行費用

なお、これらは繰延資産と呼ばれ、均等割による償却(科目は○○費償却(費用))が認められています。試験対策としては、創立費開業費5年株式交付費3年と覚えておきましょう。

この繰延資産は、実際には5年や3年で償却しなければならない訳ではないのですが、これを説明すると試験のときに混乱すると思いますので、ここでの説明は省きます。

 

例)増資にあたり、株式50株を1株当たり10,000円で発行し、全株式の払い込みを受け、払込金額は当座預金とした。また、株式発行のための費用1,000円を現金で支払った。なお、払込金額のうち、会社法で認められている最低金額を資本金とすることとした。

当座預金)10,000/(資本金)5,000

         /(資本準備金)5,000

(株式交付費)1,000/(現金)1,000

 

直接原価計算その5~原価の固変分解~

直接原価計算の最後です。あまり出題実績がないものと思っていましたら、丁度自分が受け直した150回の本試験で登場してしまいました。

ちなみに日商簿記は資格を取得した後でもまた取り直すことが何回でもできます。私の場合平成14年のものだったので、現在の試験範囲とは半分ぐらい違うといっても言い過ぎでない位変わっていました。当時は未着品や積送品などの特殊商品販売、為替手形三者間の為替取引)、とてもややこしい本支店会計(本店・支店の一致額・内部利益の控除など)がありましたが、この部分が1級となってしまいました。

代わって1級から降りてきたのが、外貨建取引、税効果会計連結会計などです。当然ながら当時は電子記録債権などはありません。一部の勘定科目の名称(貸倒償却⇒貸倒損失・貸倒引当金繰入、受取手形⇒営業外受取手形)すら変わっていました。

実務に使えるようになるためには、知識のアップデートのためにやっておいた方がいいと思いました。直近では平成30年に出題範囲の大改正があったところです。

それでは本題に入っていきましょう。

直接原価計算では、原価を変動費と固定費に分けなければなりません。「これは変動費で、これは固定費だ」とはっきりしているものはいいのですが、中には携帯電話や水道光熱費のような定額従量制のものはどっちにすればいいのか悩みます。定額従量制は何も使わなくても基本料金はかかり、使用料金は別途変動費のようにかかってしまうものです。

この場合、原価を変動費と固定費に分ける方法(固変分解)を使います。試験に出題されるのは、高低点法という方法です。

高低点法とは、過去の一定期間における生産量と原価データに基づいて、一番高い数値から一番低い数値を差し引いて、変動費を割り出すものです。

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これも150回の過去問を使って説明をします。

 

問5 これまで水道光熱費を全て固定費としてきたが、精査してみると変動費部分もあることが分かった。過去6カ月の売上高と水道光熱費の実績データは以下のとおりであった。高低点法により、売上高に対する水道光熱費変動費率(%)を計算しなさい。

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 この問題文を読んでツッコミどころはありますが…まずは公式を完成させるために数字の高い地点と低い地点を探します。

すると、8月が一番高く、6月が一番低いことがわかります。それ以外の月については全く不要なデータとなります。

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このブログ、分数が表示できないので、分子と分母の計算と分けて計算したいと思います。そして、この場合の原価はターゲットになっている水道光熱費を表します。したがって、生産量は売上高となります。分母の方が大きい数字を使わないと100%超えてしまうのでわからなくなったらそういう風に考えてください。

分子(原価=水道光熱費)の計算:527,000円-509,000円=18,000円

分母(生産量=売上高)の計算:4,095,000円-3,345,000円=750,000円

変動費:18,000円/750,000円=0.024(2.4%

問5の答え 2.4%

6月でいえばこのように固変分解できます。

変動費:509,000円×2.4%=12,216円

固定費:509,000円-12216円=496,784円

 

これで個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算が終了しました。

次回は2級最後の「本社工場会計」となります。

税効果会計その4~その他有価証券の評価差額~

税効果会計の最後は、その他有価証券の評価差額に対しての処理となります。

その他有価証券は、業務提携などのために所持しているもので、いつかは手放すことになる有価証券のことをいいます。決算時において時価を再計算し、その他有価証券評価差額金(純資産)として処理をします。

 

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ところが、税法上ではこの評価差額の表示が認められていないため、ここで税効果会計の処理が必要となります。

そして、今までの2つと違うところは、その他有価証券評価差額金は収益でも費用でもないため、法人税等調整額を使うことができません。この場合、直接、その他有価証券評価差額金を増減することとなります。

 

例)決算においてその他有価証券(取得価額1,000円)を時価900円に評価替えをした。なお、当社は全部純資産直入法を採用しており、法人税等の実効税率は40%とする。

まずは、評価替えの仕訳をします。

その他有価証券の評価差額:900円-1,000円=△100円

(その他有価証券評価差額金)100/(その他有価証券)100

次に税効果会計の処理を行います。評価差額の法人税等の分だけ決算整理仕訳の逆仕訳をします。

評価差額金の調整額:100円×40%=40円

(???)40/(その他有価証券評価差額金)40

借方が空白のため、繰延税金資産(資産)で処理します。

繰延税金資産)40/(その他有価証券評価差額金)40

基本は決算が終了したら、翌期首に再振替仕訳をしてリセットします。

(その他有価証券)100/(その他有価証券評価差額金)100

(その他有価証券評価差額金)40/(繰延税金資産)40

実は試験問題になると、この再振替仕訳をしていないパターンがあります。たとえば、第2問の株主資本等変動計算書や第3問の連結財務諸表でみられます。

ということで上の例題で再振替仕訳をせずに再度決算を迎えたパターンをやってみましょう。

 

例2)決算においてその他有価証券(取得価額1,000円)を時価1,200円に評価替えをした。なお、当社は全部純資産直入法を採用しており、法人税等の実効税率は40%とする。

この場合において、最初にすべきは再振替仕訳をしておくということです。したがって、以下の仕訳を事前にしておきます。

(その他有価証券)100/(その他有価証券評価差額金)100

(その他有価証券評価差額金)40/(繰延税金資産)40

その上で評価替えから始めます。

その他有価証券の評価差額:1,200円-1,000円=200円

(その他有価証券)200/(その他有価証券評価差額金)200

次に税効果会計の処理です。先ほどと同じく評価差額の法人税等の分だけ決算整理仕訳の逆仕訳をします。

評価差額金の調整額:200円×40%=80円

(その他有価証券評価差額金)80/(???)80

今度は貸方が空白のため、繰延税金負債(負債)で処理します。

(その他有価証券評価差額金)80/(繰延税金負債)80

ところで、この再振替仕訳をしないまま処理をしてしまうと以下のような誤った仕訳となってしまうことがあるので注意です。

その他有価証券の評価差額:900円(前期の評価額)-1,200円(当期の評価額)=300円

(その他有価証券)300/(その他有価証券評価差額金)300

評価差額金の調整額:300円×40%=120円

(その他有価証券評価差額金)120/(繰延税金負債)120

この場合、その他有価証券とその他有価証券評価差額金は合うのですが、前期の繰延税金資産40円が浮いてしまうため仕訳の問題では要注意です。

ただし、仕訳問題ではなく、貸借対照表の問題だった場合、繰延税金資産40円と繰延税金負債120円を相殺して繰延税金負債80円として計上するテクニックを使う方法もあります。

この方法を使うときは、上記の理屈がわかっていて、その仕訳が答案用紙と一緒にもらっているメモに記入することとなるので、表に現れることはないことが条件です。

こうすることで再振替仕訳を改めてする必要がないという時短テクニックになります。