152回日商簿記2級の解答について~第4問 部門別個別原価計算~
第3問は?とお思いでしょうが、本試験では第3問は一番ボリュームがあるため、解く順番を知っておかなければなりません。
第3問に時間をかけすぎてしまうと、簡単な工業簿記に手が回らなくなって失敗する恐れがあります。簿記の合格点は70点です。大問が5問ありますので、各20点の構成となっています。極端にいうと第3問飛ばしても、他が正解していれば70点以上は取れます。工業簿記の部分については比較的得点源のエリアですから満点の40点を狙うつもりで取り組みましょう。
とすれば、解いていく基本的な順番は①⇒②⇒④⇒⑤⇒③となります。150回のように、たまに第2問も難しくはないけれどボリュームがあって時間がかかる場合があります。その場合は、①⇒④⇒⑤⇒②⇒③でもいいと思います。
私は実際150回を受験したのですが、そのときは第3問が第2問より簡単でしたから①⇒④⇒⑤⇒③⇒②という順番で解きました。当時の職業訓練所の先生がいうには、10年以上前の簿記2級は意味がないようで、資格の取り直しを余儀なくされました。資格を2度取るという発想がなかったのですが、知識を最新にするということでは納得して受験することができました。
さぁ、本題に入りましょう。
問 X社は実際個別原価計算を採用し、製造間接費の計算は部門別計算を行っている。製造部門費の配布基準は直接作業時間である。次の[資料]にもとづいて、下記の問いに答えなさい。
問1 直接配賦法によって、答案用紙の月次予算部門別配賦表を完成しなさい。なお、[資料]から適切なデータのみ選んで使用すること。
まずは、⑴のデータを直接配賦用に修正するところから開始します。直接配賦法は、各補助部門費を製造部門だけで振り分けていく(按分)方法です。
したがって、合計を製造部門のみの数字に書き換えます。そうしたものが下の図になります。
これで下準備はできたので、修繕部門から順に按分していきます。
①修繕部門 基準データ:修繕時間 補助部門費:450,000円
組立部門への配賦額:450,000円×75h/125h=270,000円
切削部門への配賦額:450,000円×50h/125h=180,000円
②工場事務部門 基準データ:従業員数 補助部門費:440,000円
組立部門への配賦額:440,000円×50人/100人=220,000円
切削部門への配賦額:440,000円×50人/100人=220,000円
③材料倉庫部門 基準データ:材料運搬回数 補助部門費:900,000円
組立部門への配賦額:900,000円×120回/180回=600,000円
切削部門への配賦額:900,000円×60回/180回=300,000円
後は合計を記入して完成です。
*正解図*
問2 問1の月次予算別配賦表にもとづいて、組立部門費と切削部門費の予定配賦額と実際配賦額の当月の差額を製造間接費配賦差異に振り替える仕訳をしなさい。なお、計算したところ、当月の組立部門費の実際配賦率は1時間当たり310円、切削部門費の実際配賦率は1時間当たり325円であった。勘定科目は次の中から最も適当と思われるものを選び、正確に記入すること。
組立部門費、切削部門費、製品、仕掛品、製造間接費配賦差異
まずは、問1の配賦表合計÷予定直接作業時間でそれぞれの予定配賦率を計算します。
組立部門費の予定配賦率:2,400,000円÷8,000時間=@300円
切削部門費の予定配賦率:1,920,000円÷6,000時間=@320円
ここで話しておきたいのは、配賦差異は「予定配賦率と実際配賦率の差」であるということです。したがって、(予定配賦率-実際配賦率)×実際直接作業時間でマイナスなら借方差異(不利差異)ですし、プラスなら貸方差異(有利差異)です。
組立部門費の配賦差異:(@300円-@310円)×7,800時間=▲78,000円(借方差異)
切削部門費の配賦差異:(@320円-@325円)×5,900時間=▲29,500円(借方差異)
この借方差異とか貸方差異は、製造間接費配賦差異の記入すべき位置を示しています。もしくは、組立部門費と切削部門費が過剰に経理されている位置を示しています。
ここら辺説明しにくいのですが、図に表すとこの通りです。
いずれも借方差異になっているため、「製造間接費配賦差異」は借方に記入することになります。そして組立部門費と切削部門費は貸方に記入します。
*正解の仕訳*
(製造間接費配賦差異)107,500/(組立部門費)78,000
/(切削部門費)29,500
ここで、注意してほしいことがあります。解答するうえで一番間違えやすいのは、予定配賦率を出さないで、直接、部門別配賦表の合計の数字を使ってしまうことです。
(年間または月次)予算部門別配賦表は、年間(または月次)の予定配賦率を出すための表です。今年(または今月)は、これで予算組んだから、この予定配賦率でやってもらうからね~と工場が年初(または月初)に指示した数字です。
これを間違って使ってしまうとどうなるかというと、
組立部門の表の合計:2,400,000円
実際配賦額:@310円×7,800時間=2,418,000円
誤った配賦差異:▲18,000円(借方差異)
切削部門の表の合計:1,920,000円
実際配賦額:@325円×5,900時間=1,917,500円
誤った配賦差異:+2,500円(貸方差異)
*誤った仕訳*
(製造間接費配賦差異)15,500/(組立部門費)18,000
(切削部門費)2,500
となってしまいます。
前に本試験ではいらないデータがあるといいましたが、⑵の予定直接作業時間は必要なデータです。そして、自分のところで集団勉強会を実施したときも、この解き方を教えていないにもかかわらず、間違える人が大多数でした。
ということで、配賦率って言ってもわかりづらいので、「時給」と呼ぶことにして、工業簿記は、まず時給を出す!それから時間数をかけて計算するようにと教えていました。この考え方は、部門別個別原価計算だけではないので、覚えておきましょう。
ちなみにうちの娘は、まんまとこの答えを書いていました。(;_;)/~~~
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