部門別個別原価計算(直接配賦法)
今回は、個別原価計算の2つ目「部門別個別原価計算」です。「部門別」なので、比較的大きな各部署(部門)がある工場での原価計算になります。
部門には、切削部門・組立部門・塗装部門などの製造部門と動力部門・修繕部門・工場事務部門などの補助部門に分類されます。
部門別個別原価計算では、次の流れによって原価計算が行われます。
①部門個別費と部門共通費の各部門への集計(第一次集計)
②補助部門費の製造部門への配賦(第二次集計)
③製造部門費の各製造指図書への配賦(製品への配賦)
2級の本試験では、①は問題文に示されているため、主に②と③について解いていくことになります。また、稀に原価差異分析が出題されることもあります。
そして、部門別個別原価計算の配賦方法には、直接配賦法・相互配賦法(簡便法・連立方程式法)・階梯式配賦法がありますが、2級では直接配賦法と相互配賦法(簡便法)は出題されます。ただ、直接配賦法が圧倒的に多いですね。
今回は、直接配賦法での処理方法を解説します。
例)下記の【資料】に基づいて、予算部門別配賦表を完成し、切削部門と組立部門の部門別予定配賦率を計算しなさい。なお、当工場では直接作業時間を基準として、製造間接費を部門別に予定配賦しており、補助部門費の配賦は直接配賦法による。
【資料】
1.当工場の部門別製造間接費予算(年間)
第1製造部門 90,000,000円
第2製造部門 60,000,000円
修繕部門 7,200,000円
工場事務部門 4,800,000円
2.当工場の予定直接作業時間
第1製造部門 10,000時間 第2製造部門 7,500時間
3.補助部門費の配賦資料
補助部門費の製造部門への配賦
部門共通費があれば、各部門ごとに配賦基準に基づいて、製造部門も補助部門も普通に配賦しますが、大体はこんな感じで出題されます。
直接配賦法では、修繕部門と工場事務部門の各数字を資料3の補助部門の配賦資料に基づいて配賦します。
そのため、補助資料の補助部門の数字が邪魔なので、それを除いた表に書き換えます。それが次のとおりとなります。
この表に基づいて、修繕部門費と工場事務部門費を第1製造部門及び第2製造部門費に按分していきます。
以前にも話したかもしれませんが、この按分という考え方が原価計算の核となる部分です。
①修繕部門費
第1製造部門:7,200,000円×40回/90回=3,200,000円
第2製造部門:7,200,000円×50回/90回=4,000,000円
②工場事務部門費
第1製造部門:4,800,000円×80人/128人=3,000,000円
第2製造部門:4,800,000円×48人/128人=1,800,000円
これを表に埋めていくと完成となります。
部門別予定配賦率の計算
さて、ここまでできたら、第1製造部門と第2製造部門の予定配賦率を計算します。ここの部分も頻出です。
そして、多くの受験生が間違える注意点がここにあります。
通常、各製造部門の予定配賦率は予算部門別配賦表の製造部門費に2の予定直接作業時間を割って出します。ところが、1.の資料があるために、年間の製造間接費予算額÷予定直接作業時間で予定配賦率を出してしまうのです。
せっかく、表を作成したのに出した数字を使わないという残念な結果で点数を落としてしまうことがあります。部門別個別原価計算は、他と比べて比較的簡単な論点となっています。ここで満点取れるように普段から注意して解いていきましょう。
正解は、以下のとおりとなります。
第1製造部門の予定配賦率:96,200,000円÷10,000時間=@9,620円/h
第2製造部門の予定配賦率:65,800,000円÷8,000時間=@8,225円/h
これを間違えるとこんな感じになります。
第1製造部門の予定配賦率:90,000,000円÷10,000時間=@9,000円/h
第2製造部門の予定配賦率:60,000,000円÷8,000時間=@7,500円/h
あとは、これに実際の直接作業時間をかけると製造間接費の仕掛品への配賦となります。例えば、第1製造部門費の当月の実際直接作業時間が、800時間だとすると、
@9,620円/h×800h=7,696,000円ということになります。
次回は、相互配賦法(簡便法)を解説していきたいと思います。