ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

153回日商簿記2級の解答について~第3問 連結精算表①~

さて、いよいよ時間がかかって内容が重い第3問の解説を始めます。

ここまで大問としては4つ解いてきた訳ですが、特に難しい論点は無かったものと見受けられます。あえての第2問はありますが、順調にいけば大体は第3問は部分点狙いということになります。

なので、わからないものは飛ばす。わかるところから解いて、解答用紙に即座に記入することが大事です。一通り完成させてから…と考えると、時間切れで解答用紙に記入できずに終わってしまう最悪の事態となってしまいますので、ご注意ください。

検定、特に簿記の問題は学校のペーパーテストと違って、70点さえとれば合格となります。つまり、30点は落としても構わないのです。だからこそ、この第3問は解き方にテクニックというものが存在します。

今回は問題だけで長いので、毎回ご説明する部分をピックアップして問を表示しています。

余談ですが、今までなら今日は天皇誕生日でしたが、令和の時代になりましたので変更となっています。したがって、今年の天皇誕生日は無いという珍しい年となっています。

 

問 次の【資料】にもとづいて、連結第4年度(×3年4月1日から×4年3月31日まで)の連結精算表(連結貸借対照表連結損益計算書の部分)を作成しなさい。

【資料】

1.P社は親会社であり、子会社であるS社の概要は次のとおりであった。

⑴P社は、×0年4月1日にS社の発行済株式総数(5,000株)の80%を270,000千円で取得して支配を獲得し、それ以降P社はS社を連結子会社として連結財務諸表を作成している。×0年4月1日のS社の純資産の部は次のとおりであった。

 資本金 150,000千円

 資本剰余金 37,500千円

 利益剰余金 90,000千円

S社は支配獲得後に配当を行っておらず、また、のれんは20年にわたり定額法で償却を行っている。

⑵S社は機器の製造業であるが、独自に調達した材料にP社から仕入れた部品Aを加えて、P社の販売する機器の附属品Bも製造している。P社は部品Aの販売時にその調達部品の10%を加えたものでS社に販売している。S社は、付属部品Bを製造原価に30%の利益を加えた価格でP社に販売し、それ以外に外部の第三者にも付属部品Bとその他の機器を直接に販売している。

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資料の検討

今回は全体の問題の表示をしていませんが、初見での俯瞰を説明したいと思います。

まずは、下の解答用紙に手を加えたものをご覧ください。

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第3問を解くうえでのポイントは2つあります。

まずは、灰色の網掛けの部分ですが、ここは配点に影響しません。つまり、修正・消去欄に記入していなくても、連結財務諸表欄に記入していれば得点になるのです。

逆にいえば、いくら修正・消去欄に細かく計算をして、丁寧に合計欄まで記入しても1点にもなりません。

※ただし、満点狙う人は損益計算書の合計を出して、その下の「親会社株式に帰属する当期純利益」を利益剰余金に転記して、そこの配点を狙うという方法も考えられますが、それを一生懸命やっても、利益剰余金や非支配株主に帰属する当期純利益辺りでせいぜい4点取れるか取れないかだと思います。コスパが非常に悪いですね。

第3問は満点取らないスタンスでやっていますので、12~16点で満足して、その後は今までの見直しをする時間にあてた方がいいと思っています。

このことは、第3問共通です。貸借対照表損益計算書の単独問題が出たとしても、合計欄は配点対象外となっています。

そして、もう1つは、オレンジの部分です。これは、個別財務諸表のP社とS社を単純に足して、ヨコ移動しただけのものです。ざっと資料を見て、現金預金の仕訳はなさそうだなとか判断できれば、その部分は配点対象外です。

逆に、何回も仕訳をさせるために2行や3行になっている部分(利益剰余金)などは配点であることが多いです。

あとは、2.債権債務の相殺のように、売掛金と買掛金と同じ内容のものは、どちらか片方か、もしくはこれも単純計算となりますので、配点なしということが多い部分です。ただし、そのために計算を2回以上施すところは配点あるかも知れません。

以上のように、簿記の試験ではキレイに完成させても+αの点数はありませんから、必要部分だけ押さえて、第3問は効率的に、かつ、スピーディーに解いてしまいましょう。そして、さっさと検算(全体の確かめ)の作業に入っていきましょう。

ここからは、各資料の検討です。

まず、1.⑴については、定番の連結時の仕訳から開始仕訳+その他連結修正処理となっています。

⑵は、今すぐには使用しないので後回しの情報となります。後半の4.5.に繋がっています。

2.については、土地の売却に関する内部利益の控除となります。

3.については、連結会社間の債権債務の相殺消去となります。

4.については、期首商品(第3期)および期末商品(第4期)に含まれる未実現利益の消去です。1.⑴の利益付加率と5.製造原価の構成をもとに計算します。

連結修正仕訳①支配獲得日の仕訳~開始仕訳

ここの問題は連結に関する問題の定番ですが、通常のテキストだけやっている方は、悩める問題となっています。

テキストでは支配獲得1年目の期首で投資と資本の相殺消去の仕訳を行います。そして、2年目の開始仕訳を行ってから、2年目の連結精算書や連結財務諸表を作成させるのがスタンダードとなっています。

ところが本問では、開始仕訳が4年度の開始仕訳となっています。したがって、2年度や3年度の処理はどうすればいいの?という問題が発生します。

これについては、151回で同じ形式の問題が出ています。過去問をやっていた方はここの部分は大丈夫だったと思います。

実際、どう解くのかというと、1年度~3年度を1つの会計年度とみなして計算すればよいということになります。

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投資と資本の相殺消去

まずは、支配を獲得するために子会社株式(資産)の80%を270,000千円で取得しています。

(子会社株式)270,000/(現金預金など)270,000

この部分については、連結精算表の解答用紙(P社の個別財務諸表)に書かれています。ここが親会社の投資の部分です。

そして、S社の純資産状況が資料1⑴に書かれています。貸借対照表の形にすると以下のとおりとなります。

(諸資産)???/(諸負債)???

        /(資本金)150,000

        /(資本剰余金)37,500

        /(利益剰余金)90,000

ここが子会社の資本の部分となります。つまり、S社の会社としての価値は、この部分と足した277,500千円です。

そして、取得した株式数が発行済み株式総数の100%ではなく、80%となっていますので、P社が筆頭株主のほかに少数株主も20%存在します。

簿記では、筆頭株主と少数株主の2人のオーナーがいると考えて計算していきます。そこで、子会社の純資産277,500千円を8:2で振り分ける必要があります。

P社の取得分:277,500×80%=222,000千円

少数株主分:277,500×20%=55,500千円

P社の方ですが、まずは会社をモノと考え、そのモノを買ったという仕訳をすることになります。222,000千円の会社を270,000千円で購入しました。この差額48,000千円は、のれん(資産)といって、S社の技術力や知名度などを資産価値に表したものです。

普通の買い物なら、ずいぶん破格の値段で買ったな~と思いますが、S社の工場を買うことでグループ内で製品をやり取りしたり、開発することもできるようになるので、その値段に見合った数字で買っていることと思います。

これ以上の説明は、受験生ならわかると思いますので省きます。初学者の方は、後日無形固定資産の部分で説明します。

そして少数株主ですが、以前は少数株主持分という勘定科目だったのですが、微妙に変わって現在は非支配株主持分(純資産)となっています。

他人である非支配株主の純資産の動きも把握する必要があるので、55,500千円を計上します。

そして、投資と資本の相殺消去を行いますが、親会社の投資部分子会社の資本部分は本質的には重複した内容となっていますので、逆仕訳をして連結財務諸表から消去します。

これをすべて組み合わせたものが、以下のとおりとなります。

(資本金)150,000/(子会社株式)270,000

(資本剰余金)37,500/(非支配株主持分)55,500

(利益剰余金)90,000/

(のれん)48,000/

のれんの償却

毎期末にのれんの償却を行います。この48,000千円の価値は20年で失われると想定して、定額法で償却していきます。使用する勘定科目は、のれん償却(費用)です。

毎期ののれん償却額:48,000千円÷20年=2,400千円

ちなみに、支配獲得日が期中で設定してあった場合、月割計算しなければなりません。

今回はありませんが、その代わり、さきほどのタイムテーブルのとおり×1年度~×3年度の3年間の償却をまとめてしなければなりません。

3年分ののれん償却額:2,400千円×3年=7,200千円

普通なら仕訳は以下のとおりとなります。

(のれん償却)7,200/(のれん)7,200

ところで、現在やっている仕訳は、×1年度から×3年度の過去の仕訳をしています。つまり、もうすでに会計年度は過ぎてしまって、×3年度まで損益計算書も完成されています。

そもそも、損益計算書は当年度における1年間の経営成績と表したものです。そのため、このまま、のれん償却という勘定科目を使用することはできません。

これは次のS社の当期純利益の振り替えや今回はなかった子会社配当金の修正も同じ話となります。

では、何を使えばいいかというと、毎期の当期純利益は利益剰余金にプールされますので、この部分で増減して調整します。したがって、正しい仕訳は次のとおりとなります。

利益準備金)7,200/(のれん)7,200

S社の当期純利益の振り替え

個別財務諸表では、非支配株主のことは念頭に置いていないので、100%利益剰余金として処理しています。ところが連結財務諸表作成の際には、非支配株主持分に過去分の当期純利益を配分したことにしなければならないので、ここで計算します。

支配獲得日のS社の利益剰余金は90,000千円でした。×3年末には解答用紙のとおり、163,000千円に増えています。更にこれには当期純利益の36,000千円が含まれています。それらの分を差し引いた金額が3年間の利益となります。

その金額が非支配株主持分への取り分となりますので利益剰余金から配分します。

3年分の利益剰余金:163,000千円-90,000千円-36,000千円=37,000千円

非支配株主持分への計上分:37,000千円×20%=7,400千円

(利益剰余金)7,400/(非支配株主持分)7,400

開始仕訳(×3年4月1日)

投資と資本の相殺消去、のれんの償却、S社の当期純利益の振り替えの3つの仕訳を合わせたものが、開始仕訳となります。文字通りここからスタートとなります。

(資本金)150,000/(子会社株式)270,000

(資本剰余金)37,500/(非支配株主持分)62,900

(利益剰余金)104,600/

(のれん)40,800/

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一部抜粋

解答にあたっては、1区切りごとにまず記入して、そして修正仕訳に記入することが今後ないと判断したら、連結財務諸表にすぐ記入です。

ちなみに、資本金と資本剰余金は、親会社の純資産しか記入しないことが確定しています。したがって、開始仕訳しない段階から親会社の分を記入して終わりです。もっといえば、ここの部分での配点はないので、書かなくてもOKです。

のれんにつきましては、これも過去の決算の分+当期分ののれん償却で確定していますので、修正仕訳を書かなくても、今回であれば最初の48,000千円から3回+1回分の9,600千円を差し引いた40,800千円を記入して2点獲得することができます。

そして( )の中身は、だいたい「のれん」が入ります。のれん償却には1回分の2,400円が入ります。これで良い時なら、2×2の4点獲得することができるんですね。

もし、不幸にも先の4問で時間がなくなってしまったときは、ここの部分だけ解いてもいいと思います。

 

弊事務所では、簿記講座をはじめとする社会に使える資格を個別指導方式で教えています。この簿記2級の本試験問題については、「日商簿記2級実戦編」として北海道旭川市近辺の方を対象に行っていますので、よろしくお願いいたします。

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