等級別総合原価計算とは、同じ原材料で違うサイズの製造を行ったり、製造過程で品質が変化する場合に用いられる総合原価計算をいいます。例としてはMサイズやLサイズの衣料品や一級品や二級品などのお酒の製造で使われます。
処理方法については、まずは普通に単純総合原価計算を用いて、完成品総合原価まで計算をしていきます。完成品総合原価がわかった時点で、等価係数により各等級別に按分を行います。
例)X社は、同一工程で等級製品A、B、Cを連続生産している。製品原価の計算方法は、1か月の完成品総合原価を製品1個当たりの重量によって定められた等価計数に完成量を乗じた積数の比で各等級製品に按分する方法を採用している。
次の[資料]に基づいて、当月の月末仕掛品原価、完成品総合原価、等級製品A、B、Cの完成品総合原価を計算しなさい。
なお、原価投入額合計を完成品総合原価と月末仕掛品原価に配分する方法には先入先出法を用い、正常仕損は工程の終点で発生したので、正常仕損費はすべて完成品に負担させる。この仕損品の処分可額はゼロである。
【資料】
1.当月の生産データ
月初仕掛品 400個(25%)
当月投入量 6,400個
正常仕損 600個
月末仕掛品 200個(50%)
当月完成品数量 6,000個
2.原価データ
月初仕掛品原価
直接材料費 560,000円
加工費 180,000円
当月製造費用
直接材料費 5,120,000円
加工費 7,920,000円
注)完成品は、Aが4,000個、Bが1,500個、Cが500個である。材料は工程の始点で投入し、( )内は加工費の進捗度である。
3.製品1個当たりの重量(単位:g)
A:200 B:400 C:800
直接材料費ボックスと加工費ボックスの処理
問題文のとおり、配分の計算方法は先入先出法、仕損費は完成品のみに負担(価値はゼロ)で従来通りに計算していきます。
この計算により、完成品総合原価は直接材料費5,520,000円と加工費7,980,000円を加えた13,500,000円となります。
また、月末仕掛品原価は、直接材料費160,000円と加工費120,000円を加えた280,000円となります。
各等級製品の完成品総合原価の計算
全体の完成品総合原価13,500,000円を各等級製品に按分していきます。そこで等価係数というものを按分する基準値として使います。
等価係数は、資料3の製品1個当たりの重量のことをいいます。その数字は、A:200、B:400、C:800となります。ただ、この数字をそのまま使う訳ではありません。
どのように配分すればよいかというと、製品1個当たりと書かれているので、それぞれの完成品数量を掛け合わせた数字を使います。この数字を積数といいます。
完成品数量は、資料2の注)に記載されています。
具体的な計算は、完成品量×等価係数=積数になります。
A等級製品:4,000個×200g=800,000
B等級製品:1,500個×400g=600,000
C等級製品:500個×800g=400,000
この数字をそのまま使用すると、電卓がびっくりしてしまうので、わかりやすい数字に約分します。そうすると、それぞれ4:3:2(8:6:4でもOK)の配分となります。
ということで、13,500,000円をそれぞれ按分すると以下の解答が出ます。
A等級製品の完成品総合原価:13,500,000円×4/9=6,000,000円
B等級製品の完成品総合原価:13,500,000円×3/9=4,500,000円
C等級製品の完成品総合原価:13,500,000円×2/9=3,000,000円
本試験では、AとBとCを合計してきちんと13,500,000円になるかどうかを必ず検算しましょう。完成品総合原価まで完璧だったのに積数の計算が間違っていて、失点しては元も子もないので…。ここのひと手間ができるかどうかで、合否も左右されてきます。
また、積数という点でいえば、そのまま等価係数の数字で計算してしまったり、完成品量の割合で計算してしまうミスも考えられます。ご注意ください。
以上で、大きな枠の総合原価計算は終了となります。単純計算が多いため、ケアレスミスも多くなりますが、しっかりと計算できていれば、比較的得点しやすい範囲となります。