標準原価計算その1~標準原価計算の概要と標準原価カード~
標準原価計算とは?
標準原価計算とは、標準原価というあらかじめ設定した目標の原価に従って製造を行い、実際の原価と比較・分析する原価計算をいいます。
標準原価計算に対して個別原価計算や総合原価計算のように製造するためにかかった費用に基づいて原価を導き出す原価計算を実際原価計算といいます。
標準原価計算の流れは次のとおりとなります。
①標準原価の設定
製品1個あたりの標準原価を計算します。製品1個あたりの直接材料費・直接労務費・製造間接費をそれぞれ計算し、まとめたものを標準原価カードといいます。
通常のテキストの流れでは、標準原価カードを作成するところから始めますが、実際の試験では問題文として与えられています。
②標準原価の計算
標準原価カードをもとにして原価計算を行っていきます。総合原価計算のようにボックスを使って解いていきますので、この計算自体は難しいものではありません。
計算の方法は、パーシャル・プランとシングル・プランの2通りがあります。
③実際原価との比較と原価差異の把握
実際にかかった原価と標準原価との差異を分析し、どのくらいの無駄があったのかを把握することで、製造の効率化につなげていきます。
費目別計算のところで原価差異分析(固定予算)を解説しましたが、それと似たような手法で分析を行っていきます。
このときに表の作成方法から説明しましたが、さらに複雑なシュラッター図という表を作成する工程があります。この表の作成こそが標準原価計算のキモであり、受験生を悩ませる内容でもあります。
標準原価カードの作成
先ほども話した通り、日商簿記では問題文に示されているので、作成を求められることはまずありませんが、その構成を知ることは必要です。
これが標準原価カードです。問題文では、単に箇条書きされていますが…。
①標準直接材料費
標準単価(ここでは1kgあたりの材料単価)に製品1個あたりに消費する数量(重量や枚数など)を掛けて計算します。
買い付ける材料単価や1個あたりに消費する数量の変動によって差異が生じます。なるべく安い単価で仕入れ、無駄のない材料の消費が求められます。
②標準直接労務費
標準賃率(1時間あたりの賃率)に製品1個あたりにかかる直接作業時間をかけて計算します。
雇用者の時給や作業時間の変動によって差異が生じます。なるべく安い賃金で効率的に作業することが求められます。
③標準製造間接費
標準配賦率に製品1個あたりの操業度(直接作業時間など)を掛けて計算します。
間接材料費・間接労務費・間接経費などの間接費を抑え、効率的に作業することが求められます。
試験では、②製品1個あたりの直接作業時間と、③製品1個あたりの操業度の数字が直接作業時間で統一されているのが一般的です。
①+②+③が製品1個あたりの標準原価となります。この標準原価を目標にして工場では製造していきます。
営業職の営業目標みたいなものですね。