標準原価計算その2~パーシャル・プラン~
ここからは、標準原価計算の本題に触れていきます。
標準原価計算の方法には、パーシャル・プランとシングル・プランがあります。
仕掛品ボックスを作成する段階で、当月投入の部分にどの数字を使うかで変わってきます。標準原価(Standard Cost:SC)カードの数字を使用するのがシングル・プランで、実際原価(Actual Cost:AC)を使用するのがパーシャル・プランとなります。
今回はパーシャル・プランとなっていますので、まずはパーシャル・プランの説明をします。
パーシャル(partial)とは、「部分的」とか「一部の」を意味します。今では当たり前ですが、昭和時代のCMでパーシャルといえば冷蔵庫が有名でした。昔の冷蔵庫は、取っ手を開けると冷蔵庫は冷蔵部分、冷凍庫は冷凍部分の同じ温度設定でしかありませんでした。
そして新しくパーシャル冷蔵庫が発売されたときにはじめて冷蔵部分にチルド室ができたのです。このチルド部分がパーシャルです。あとは、パーシャルデント(部分入れ歯)もよく聞きますね。
簿記でも、この冷蔵庫のような構造となっています。
仕掛品ボックスの当月投入部分だけ違う原価(実際原価)を使用しています。そのため、仕掛品ボックスに原価差異が生じることがパーシャル・プランの特徴となっています。
それでは、実際の問題を解いてみましょう。
問 A社は、食材を仕入れて製品Xに加工し、直営の店舗で販売する」製品小売チェーンを展開している。原価計算方式としては、パーシャル・プランの標準原価計算を採用している。次の【資料】にもとづいて、当月の仕掛品勘定を完成しなさい(第147回第5問一部抜粋)
【資料】
1.製品X1個あたりの標準原価
直接材料費 1,500円/㎏×0.2㎏ 300円
加 工 費 400円/時間 100円
合 計 400円
2.当月の生産実績
月初仕掛品 1,500個(60%)
当月投入 5,900個
合 計 7,400個
月末仕掛品 1,400個(50%)
完 成 品 6,000個
※材料はすべて工程の始点で投入している。
※( )内は加工進捗度を示す。
3.当月の原価実績
直接材料費 1,817,000円
加 工 費 594,000円
仕掛品ボックス(直接材料費)の計算
まずは、パーシャル・プランの説明図を参考にしながら、ボックスを作成していきます。
月初仕掛品・当月完成・月末仕掛品については、1.の標準原価を使用します。
月初仕掛品:1,500個×@300円=450,000円
当月完成:6,000個×@300円=1,800,000円
月末仕掛品:1,400個×@300円=420,000円
そして、当月投入の部分だけ3.の実際原価を使用します。
当月投入:1,817,000円
この情報をもとにボックスを作成します。
標準原価カードによると、当月投入は5,900個×@300円=1,770,000円でなければならないのですが、47,000円オーバーしてしまいました。
仕掛品ボックス(加工費)の計算
加工費も同様に計算していきます。
まず、月初仕掛品と月末仕掛品の個数を加工進捗度の反映した個数に変更します。
月初仕掛品個数:1,500個×60%=900個
月末仕掛品個数:1,400個×50%=700個
当月完成個数は変わりませんので、当月投入個数で調整します。
当月完成個数6,000個+月末仕掛品個数700個ー月初仕掛品個数900個=当月投入個数5,800個
そして、月初仕掛品・当月完成・月末仕掛品を標準原価を使って金額を計算します。
月初仕掛品:900個×@100円=90,000円
当月完成:6,000個×@100円=600,000円
月末仕掛品:700個×@100円=70,000円
当月投入金額は3.実際原価を使用します。
当月投入:594,000円
こちらも標準原価カードによると、当月投入は5,800個×@100個=580,000円でなければならないのですが、14,000円オーバーしています。
直接材料費と加工費ボックスの結果を解答用紙に記入したものが以下のとおりとなります。