簿記の世界でも国内の取引ではなく、国外との輸出入の取引があります。この場合、問題となるのが為替相場(レート)です。
簿記2級では、アメリカの取引(米ドル)のみを念頭に置いて出題されます。アメリカから商品を購入する際には、米ドルで取引がなされます。そのため、商品の到着日と代金の支払日が異なるとき、為替レートが変動すると予定されていた金額にも影響を及ぼします。
たとえば、1ドル=100円のときに1ドルの商品を購入した場合、取引先には1ドルで契約がなされています。ですから、購入時には100円支払えばよいと考えます。
ところが、代金の支払時に1ドル=130円と円安になってしまうと、実際は130円を支払うこととなり、30円分損をしてしまうこととなります。
簿記上では、このときの差額を為替差損益として処理します。
なお、この勘定科目は得をしても損をしても、為替差損益勘定一本で処理します。決算時には、借方残高だと為替差損(費用)、貸方残高だと為替差益(収益)と損益計算書に表示されることとなります。
手付金を支払った(受け取った)とき
商品取引の事前に手付金を支払ったときには、支払時の為替相場(レート)により換算した金額で処理します。
例)×1年4月1日 商品100ドル(1ドル=100円)を輸入する契約をし、手付金として20ドルを小切手で支払った。
手付金の換算額:20ドル×100円=2,000円
(前払金)2,000/(当座預金)2,000
なお、手付金を受け取ったときも同じです。
【上記の例題で手付金を受け取ったときの仕訳】
(現金)10,000/(前受金)10,000
商品が到着(輸入)した(出荷(輸出)した)とき
商品が到着(輸入)したときには、仕入(費用)で処理します。今回は、手付金を支払っているので、その分を差し引きます。
商品仕入については現金取引と掛け取引の2つのケースがあります。掛け取引のときには、掛け取引時のレートで買掛金(負債)として処理します。
現金取引については、次の「代金を決済したとき」に準じて処理します。
例)×1年4月15日 上記の取引について商品が到着し、手付金20ドルを差し引いた80ドルは翌月末日に支払うこととした。なお、4月15日の為替相場は1ドル120円であった。
買掛金の換算額:80ドル×120円=9,600円
(仕入)11,600/(前払金)2,000
/(買掛金)9,600
【上記の例題で商品を出荷(輸出)したときの仕訳】
(前受金)2,000/(売上)11,600
(売掛金)9,600/
代金を決済したとき
掛代金を決済したときは、買掛金(売掛金)を記帳した時点の金額を減らすとともに、支払金額については、決済時のレートで処理します。その貸借差額を為替差損益で処理します。
例)×1年5月31日 上記の一連の取引について、×1年4月20日に発生した買掛金80ドルを小切手で支払った。なお、5月31日の為替相場は1ドル=115円であった。
決済時の換算額:80ドル×115円=9,200円
(買掛金)9,600/(当座預金)9,200
/(為替差損益)400
【上記の例題で売掛金を決済したときの仕訳】
(現金)9,200/(売掛金)9,600
(為替差損益)400/
決算時の処理
有価証券のときに決算時の評価替えの処理がありましたが、外貨建ての資産及び負債についても、決算時のレートに換算する「換算替えの処理」を行います。
ただ、全てが全てではなく、金銭やそれに関する債権や債務によるもの(貨幣項目)に対して、換算替えを行います。
なお、換算替えで生じた差額については、為替差損益で処理します。