今回は製造間接費(加工費)の原価差異分析についてです。以前、費目別計算のところで固定予算による原価差異分析を行いました。
標準原価計算においては、変動費と固定費それぞれの差異が発生するため、公式法変動予算による原価差異分析を使います。
変動費とは、材料費やパートタイマーの賃金のように製造量や時間の経過に比例して増えていく費用のことをいいます。
固定費とは、地代家賃や正社員の賃金のように製造量や時間の経過にかかわらず、毎回一定の金額が発生する費用のことをいいます。
固定予算のときには、予算差異と操業度差異が出てきましたが、今回新たに能率差異というのが増えます。
能率差異とは、作業効率のムダにより発生した差異のことをいいます。能率差異には、変動費から生じた変動費能率差異と固定費から生じた固定費能率差異があります。
実際の問題では能率差異は3パターンありますので注意が必要です。
①変動費能率差異と固定費能率差異を区別せずに、単に能率差異(変動費能率差異+固定費能率差異)として計算する方法。
②変動費能率差異と固定費能率差異を分けて計算する方法。
③能率差異は変動費能率差異のものだけとし、固定費能率差異は操業度差異の数字に加算した上、操業度差異として計算する方法。
シュラッター図の構成
固定予算による原価差異分析の場合、図を書いて解きましたが、公式法変動予算による原価差異分析の場合も図を書いて解いていきます。
ちょうど、固定予算の図を下方向に向かって鏡合わせした感じの図となります。これを特にシュラッター図と呼びます。
152回の日商簿記2級の解説のときにその書き方を説明いたしましたが、再度ここで説明します。
①横に長い長方形を記入します。
②カラスのくちばしを左向きに記入します。
③ちょっと左寄りに縦線2本入れれば完成となります。
続いて各部の名称を記入します。
前回の直接費の差異分析のときは、「ひじ」が出てきましたが、今回は「ひじき」です。能率差異については、上の変動費ラインが変動費能率差異で、下の固定費ラインが固定費能率差異となります。
説明をしていない部分の説明をいたします。
変動費率:変動費は製造量や作業時間の経過に比例して増えていくものです。したがって、配賦基準が直接作業時間(問題は大体これです)の場合は、直接作業時間1時間あたりの変動製造間接費をいいます。
固定費率:固定費は製造量や作業時間の経過に関わらず発生するので、上の図では薄青がかった部分は全て固定費とされます。ただし、操業度差異を計算するために、変動費と同じように直接作業時間1時間あたりの固定製造間接費を計算します。
実際発生額:実際に発生した製造間接費の金額です。
予算許容額:実際操業度における予算額をいいます。(固定製造間接費+変動費×実際操業度)
標準操業度:標準原価カードに記された製品1個あたりの標準直接作業時間に当月投入量を掛けたものです。
実際の例題には、152回の解説で触れていますので、それを参考にしてみてください。