ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

154回日商簿記2級の解答について~第3問 損益計算書の作成②~

それでは基本編の後半を始めます。なお、問題文等は最後に掲載しますので、ご確認ください。

決算整理事項5 満期保有目的債券の評価

 満期保有目的債券は、2017年4月1日に他社が発行した社債(額面総額¥700,000、利率年1.5%、償還日は2022年3月31日)を額面@¥100につき@¥99の価額で取得したものであり、償却原価法(定額法)で評価している。

今回の満期保有目的債券は5年満期の有価証券です。取得原価は以下の計算式で行います。

取得原価:額面金額×100円あたりの購入価額/100

∴700,000×99/100=693,000円

償却原価法とは、決算日に一定金額を取得原価に加算または減算して、満期日(償還日)までに額面金額にする方法をいいます。

額面金額と取得価額との差は7,000円(700,000円-693,000円)です。これに保有年数5年(通常は7,000円×12か月/60か月で計算)で割ると1,400円という数字が出ます。この数字が毎期取得原価に加算していく金額となります。相手科目は有価証券利息(収益)で処理します。

ちなみに前T/Bの満期保有目的債券の残高は694,400円ですから、すでに1回加算されていることがわかります。

【決算整理事項5の仕訳】

(満期保有目的債券)1,400/(有価証券利息)1,400

決算整理事項6 退職給付引当金の計上

 退職給付引当金の当期繰入額は¥81,000である。

貸倒引当金のように仕訳すればOKです。ただし、退職給付引当金の場合は、「退職給付引当金繰入」ではなく退職給付費用(費用)で処理します。

【決算整理事項6の仕訳】

(退職給付費用)81,000/(退職給付引当金)81,000

決算整理事項7 貯蔵品の棚卸

 すでに費用処理した収入印紙の期末未使用高は¥25,000である。

期中に通信費(郵便切手類)や租税公課収入印紙等)で購入時に費用計上したものが期末に未使用だった場合、貯蔵品(資産)に振り替えます。

【決算整理事項7の仕訳】

(貯蔵品)25,000/(租税公課)25,000

決算整理事項8 借入金利息の未払い分の計上

問 長期借入金は、当期の8月1日に借入期間5年、利率年1.2%、利払いは年1回(7月末)の条件で借り入れたものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。

支払日は来年の7月末ですが、8月1日から3月31日までの8か月分の借入金利息はすでに発生しているものと捉え、未払費用(負債)で計上します。

未払分の借入金利:900,000(前T/B)×1.2%(年利率)×8か月/12か月=7,200円

【決算整理事項8の仕訳】

(支払利息)7,200/(未払費用)7,200

決算整理事項9・10 法人税等の計上および税効果会計

 法人税、住民税および事業税について決算整理を行う。仮払法人税等¥18,000は中間納付にかかわるものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。なお、当期の費用計上額のうち¥8,000は、税法上の課税所得の計算にあたって損金算入が認められない。法人税等の法定実効税率は30%である。(決算整理事項9)

 上記9.の損金算入が認められない費用計上額¥8,000(将来減算一時差異)について、税効果会計を適用する。(決算整理事項10)

決算整理事項9の内容を見れば、税効果会計をしなければならないことがわかりますから、正直10の情報は見なくてもわかりますね。

今までの情報を答案用紙に記入したとき、税引前当期純利益139,080円となります。

そして、費用計上と認められなかった8,000円をプラスします。これについて、法定実効税率30%を掛けたものが法人税法人税、住民税及び法人税、以下同じ)となります。

当期の法人税:(139,080(税引前当期純利益)+8,000(損金不算入))×30%(実効税率)=44,124円

そして、損金不算入となった8,000円×30%=2,400円法人税等調整額となります。

【決算整理事項9の仕訳】

法人税、住民税及び事業税)44,124/(仮払法人税等)18,000

                 /(未払法人税等)26,124

【決算整理事項10の仕訳】

繰延税金資産)2,400/(法人税等調整額)2,400

 

前回と今回の未処理事項と決算整理事項の仕訳をもとに答案用紙に記入していくと完成となります。なお、解答用紙への記入作業については基本編では説明しません。

次回の速攻編において基礎を踏まえた上で、どのように考えて答案用紙に記入していくのか説明いたします。

第3問 損益計算書の完成 問題文

 次の[資料Ⅰ][資料Ⅱ]および[資料Ⅲ]にもとづいて、答案用紙の損益計算書を完成しなさい。なお、会計期間は2018年4月1日から2019年3月31日までの1年間とする。
[資料Ⅰ]

f:id:polytech-MK:20200328231637j:plain

[資料Ⅱ] 未処理事項
1.売掛金¥10,000が回収不能であると判明したので、貸倒れとして処理する。なお、このうち¥4,000は前期の商品販売取引から生じたものであり、残りの¥6,000は当期の商品販売から生じたものである。

2.未決算は火災保険金の請求にかかわるものであるが、保険会社より火災保険金¥500,000の支払いが決定した旨の通知があったので、適切な処理を行う。なお、決算整理前残高試算表に示されている減価償却費¥25,000は、期中に火災により焼失した建物の減価償却費を月割で計上したものである。

3.土地の一部(帳簿価額¥500,000)を売却し、売却代金¥550,000は当座預金としていたが、この取引は未記帳である。

[資料Ⅲ]決算整理事項

1.売上債権の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金は差額補充法によって設定する。

2.商品の期末棚卸高は次のとおりである。棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する。

帳簿棚卸高:数量850個、帳簿価額@¥400

実地棚卸高:数量844個、正味売却価額@¥395

3.有形固定資産の減価償却は次の要領で行う。

 建物:建物は当期の8月1日に取得したものであり、耐用年数は40年、残存価額はゼロとして、定額法により月割で減価償却を行う。

 備品:耐備品は数年前に取得したものであり、耐用年数10年、残存価額はゼロとして、200%定率法により減価償却を行っている。なお、保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。

4.のれんは2016年4月1日に他企業を買収した取引から生じたものであり、取得後5年間にわたって効果が見込まれると判断し、定額法で償却している。

5.満期保有目的債券は、2017年4月1日に他社が発行した社債(額面総額¥700,000、利率年1.5%、償還日は2022年3月31日)を額面@¥100につき@¥99の価額で取得したものであり、償却原価法(定額法)で評価している。

6.退職給付引当金の当期繰入額は¥81,000である。

7.すでに費用処理した収入印紙の期末未使用高は¥25,000である。

8.長期借入金は、当期の8月1日に借入期間5年、利率年1.2%、利払いは年1回(7月末)の条件で借り入れたものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。

9.法人税、住民税および事業税について決算整理を行う。仮払法人税等¥18,000は中間納付にかかわるものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。なお、当期の費用計上額のうち¥8,000は、税法上の課税所得の計算にあたって損金算入が認められない。法人税等の法定実効税率は30%である。

10.上記9.の損金算入が認められない費用計上額¥8,000(将来減算一時差異)について、税効果会計を適用する。

f:id:polytech-MK:20200401012307j:plain