ここからは、会社が複数関係している取引を見ていきます。このテーマについては、会社の合併・本支店会計・連結会計の3つがあります。
まずは、会社の合併から見ていきましょう。
合併のイメージ
合併とは、2つ(以上)の会社が合体して、1つの会社となることをいいます。合併には、吸収合併と新設合併があります。
吸収合併:1つの会社が消滅して(消滅会社または被合併会社)、もう一つの会社(存続会社または合併会社)に吸収されることをいいます。
新設合併:2つの会社が消滅して、1つの新たな会社(新設会社または合併会社)が誕生することをいいます。
2級では、吸収合併のみを取り扱います。
存続会社は消滅会社の資産・負債の一切を時価相当額で受け継ぐことになります。つまり、消滅会社丸ごと購入するようなイメージとなります。この方法をパーチェス法といいます。
簿記でいう合併の形態は大きく2つあります。
1つは、吸収する会社のブランド力や顧客・技術力などを自社に取り入れるために行うものです。
ところで、会社の総資産から総負債を除くと純資産(資本金)となりますが、端的にいえば、この資本金が消滅会社の正味価値ということになります。そして、この場合正味価値よりも高値で購入することとなります。
では、どのように消滅会社を購入するかということですが、単純に現預金を出すということも考えられますが、簿記では新しい株式を発行することがほとんどです。
会社の持ち主は経営陣ではなく株主です。消滅会社にも株主はたくさんいます。合併してしまうと消滅会社はなくなりますが、株主の今まで持っていた株式も無くなってしまいます。
このまま合併をすると、株主は当然猛反対することとなりますから、どうにか納得させる材料が必要となるわけです。そこで、消滅会社の株式を存続会社の株式に交換すればよいという形になります。合併をする会社ですから、消滅会社の株価<存続会社の株価と考えられますので、株主は納得して交換に応じる訳です。
なお、新たな株式を発行すると各株主の議決権行使などに支障が出たりします。選挙と違って1人1票ではなく、所有する株式の数に応じて議決権が得られます。つまり、多くの株式を所有している人がより強大な権利を持っているのです。
例えていうなら、一般観客が1票で、審査委員長が10票分持っているようなテレビ番組の審査みたいなものです。某歌合戦の番組でWEB投票が反映されていないと話題になったことはありますが…
したがって、既存の株主は反対するかもしれませんが、簿記ではここまでの話にはならないので、これ以上の説明は省きます。
もう1つは、潰れそうな会社を救うために合併する場合です。会社の土地や建物がタダで手に入るとか、特許や技術があるなどそれなりのメリットがあって合併することとなりますが、こちらの方は会社の正味価値よりも低い価額で取引することとなります。
会社の経営陣は従業員が路頭に迷うこともないし、会社の負債も背負ってくれるメリットがあり、株主も投資金額がゼロ円になるよりも、低くても株式を取得できるならと合併に応じることでしょう。
この2つのケースについて、簿記ではどのような取扱いをしていくのかを具体的に見ていきましょう。
会社の価値よりも高い価額で合併する場合(最初のパターン)
大体、このパターンが出題されます。最初で申し上げた通り、存続会社(以後M社)は消滅会社(以後E社)の総資産と総負債の一切を引き継ぎます(パーチェス法)。
ここからは例題に沿って説明します。
例題 M社はE社を吸収合併し、E社の株主に対して新株100株(発行時の時価@1,000円)で発行し、全額を資本金とした。なお、合併直前のE社の資産・負債の時価は諸資産200,000円、諸負債150,000円であった。
E社の正味価額は200,000円ー150,000円=50,000円です。これを100株×@1,000円=100,000円出して買いました。E社には倍の金額を出しても満足できるブランド力、顧客数などがあったのでしょう。このブランド力などの見えない価値(ここでは差額の50,000円)をのれん(資産)で処理します。
仕訳の順序で説明すると、まずE社の諸資産と諸負債をそのまま記入します。
(諸資産)200,000/(諸負債)150,000
※合併の問題では、諸資産・諸負債という勘定科目で出てくるのでそのまま使いますが、実際には現金や売掛金などの総称です。
次に新たに株式を発行した金額を資本金(純資産)として処理します。
資本金(新株式発行価額):100株×@1,000=100,000円
(諸資産)200,000/(諸負債)150,000
/(資本金)100,000
最後に貸借差額をのれん(資産)として処理します。
【正解の仕訳】
(諸資産)200,000/(諸負債)150,000
(のれん)50,000/(資本金)100,000
会社の価値よりも低い価額で合併する場合(2番目のパターン)
記入の仕方は途中までのれんと同じですが、こちらの方は金額的には得をして合併しているので、貸借差額を負ののれん発生益(収益)で処理します。
例題 M社はE社を吸収合併し、E社の株主に対して新株100株(発行時の時価@300円)で発行し、全額を資本金とした。なお、合併直前のE社の資産・負債の時価は諸資産200,000円、諸負債150,000円であった。
資本金(新株式発行価額):100株×@300=30,000円
【正解の仕訳】
(諸資産)200,000/(諸負債)150,000
/(資本金)30,000
/(負ののれん発生益)20,000
のれんの償却
のれんも無形固定資産と同じように定められた年数(取得後20年以内)で直接法・定額法により償却をします。定められた年数は問題文で示されます。
たとえば、上記ののれん50,000円(期首に取得)を20年で償却するときは、毎期末の決算処理で行う必要があります。
のれんの償却額:50,000円÷20年=2,500円
(のれん償却)2,500/(のれん)2,500
大分遅く気づきましたが、5月8日に155回簿記検定が全国的に中止となったようです。11月の実施はまだわかりませんが、間延びしたからと油断せず自粛体制のこの時期だからこそ、知識の補充をして次回の合格を目指してください。
1ヶ月休んでしまうとほとんど最初にリセットされてしまうケースの方もいますので、本当に気をつけて下さい。