ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

本支店会計その2~本支店合併財務諸表①~

支店をたくさん持っている会社でも、それぞれの業績はさまざまです。それでは実際わが社全体で、どれだけの業績が上がっているのかを示すために、本店および各支店の決算書をひとまとめに作成したものを本支店合併財務諸表といいます。

本支店合併財務諸表の作業工程は以下のとおりです。

①本店と各支店それぞれの決算整理前残高試算表を作成する。

②未達事項・未処理事項・決算整理事項に関する仕訳をする。

③本店勘定と支店勘定を取り除く。(内部取引の相殺)

④各勘定科目を合算して本支店合併財務諸表を完成させる。

⑤総勘定元帳を締め切り、繰越試算表を作成する。

ここは1つ1つやるよりも、過去問形式で実際に説明したいと思います。今回は決算整理事項の(3)までです。問題文もそこまで表示しています。

 

 品川商事株式会社は、東京の本店のほかに埼玉県に支店を有している。次の【資料】にもとづき、第7期(平成29年4月1日~平成30年3月31日)の本店の損益勘定を完成しなさい。ただし、本問では「法人税、住民税及び事業税」と税効果会計を考慮しないこととする(149回第3問)。

【資料】

(A)残高試算表(本店・支店)

 

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わかりやすいように本店勘定と支店勘定を塗りつぶしてます。

(B)未処理事項等

(1)本店の売掛金¥60,000が回収され、本店で開設している当社名義の当座預金口座に入金されていたが、銀行からの連絡が本店に届いていなかった。

(2)平成30年3月1日、本店は営業用の車両¥2,000,000を購入し、代金の支払いを翌月末とする条件にしていたが、取得の会計処理がなされていなかった。

(3)本店が支店へ現金¥67,000を送付していたが、支店は誤って¥76,000と記帳していた。

(4)本店が支店へ商品¥108,000(仕入価額)を移送したにもかかわらず、本店・支店ともその会計処理がなされていなかった。

(C)決算整理事項等

(1)商品の期末棚卸高は次のとおりである。売上原価を仕入勘定で計算する。ただし、棚卸減耗損および商品評価損は、外部報告用の損益計算書では売上原価に含めて表示するものの、総勘定元帳においては、棚卸減耗損および商品評価損を仕入勘定に振り替えず独立の費用として処理する。

①本店(上記B(4)処理後)

原価:@¥756 正味売却価額:@¥736

帳簿棚卸数量:100個 実地棚卸数量:970個

②支店(上記B(4)処理後)

原価:@¥540 正味売却価額:@¥550

帳簿棚卸数量:800個 実地棚卸数量:785個

(2)本店・支店とも売上債権残高の1%にあたる貸倒引当金を差額補充法により設定する。

(3)有形固定資産の減価償却

①備品:本店・支店とも、残存価額ゼロ、耐用年数5年の定額法

②車両運搬具:総利用可能距離150,000㎞ 当期の利用距離3,000㎞、残存価額ゼロ

未処理事項等の処理

本店と支店は距離が離れているため、現金や商品が到着するのに時間がかかります。決算日をまたぐこともあるため、事前に連絡をしておきます。ところが、その連絡がうまく届かなかった場合、その取引があったものとして仕訳をしておかなければなりません。これを未達事項といいます。

今回は相手が銀行ですが、これも未達事項となります。

(2)~(4)は人為的ミスなので未処理事項となります。

そして本題に入る前に、本支店会計の問題を解くためには、1つの原則を守らなければなりません。

本店勘定と支店勘定は貸借逆のカタチで金額が一致する

資料Aの残高試算表(以下前T/B)を見ると、本店勘定(¥1,745,000)と支店勘定(¥1,736,000)が一致していません(不一致金額は¥9,000)。この状態を解消するのが最初の工程となります。

(1)売掛金回収の未達

本店の売掛金60,000円を現金預金で回収しましたが、銀行からの連絡がないため放置しています。(銀行勘定調整表の論点)

したがって、次の仕訳が必要となります。

【本店の仕訳】

(現金預金)60,000/(売掛金)60,000

(2)営業用車両購入の未記帳

これも本店の処理が必要です。単なる未記帳なので仕訳をするだけです。

【本店の仕訳】

(車両運搬具)2,000,000/(未払金)2,000,000

本店勘定および支店勘定には変動はありません。

(3)記帳の誤り

支店の記帳を訂正します。

【支店の仕訳(誤)】

(現金預金)76,000/(本店)76,000

【支店の仕訳(正)】

(現金預金)67,000/(本店)67,000

【訂正すべき仕訳】

(本店)9,000/(現金預金)9,000

(4)本店及び支店の未記帳

本店から支店の商品の発送処理の仕訳をします。

【本店の仕訳】

(支店)108,000/(仕入)108,000

【支店の仕訳】

仕入)108,000/(本店)108,000

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この時点で本店勘定と支店勘定の照合をします。すると、それぞれ1,844,000円で一致しました。

決算整理事項の処理

通常なら同じ科目は合算して行いたいのですが、最後に支店の当期純利益を出さないとならないため、本店と支店それぞれで計算をします。

時間がなかったり、ある程度捨て問とする場合には、合算して計算しても構いません。

(1)売上原価の算定

 ①本店の処理

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※古いノートから画像引っ張ってきたのですが、ところどころ棚卸減耗損が誤って棚卸減耗費となっています。棚卸減耗費は工業簿記で使用する勘定科目です。

期首商品棚卸高:717,000円(前T/B)

期末商品棚卸高:@756円(原価)×1,000個(帳簿棚卸数量)=756,000円

棚卸減耗損:@756円×(1,000個-970個(実地棚卸数量))=22,680円

商品評価損:(@756円-@736円(正味売却価額))-970個=19,400円

【決算整理仕訳⑴本店分】

仕入)717,000/(繰越商品)717,000

(繰越商品)756,000/(仕入)756,000

(棚卸減耗損)22,680/(繰越商品)22,680

(商品評価損)19,400/(繰越商品)19,400

②支店の処理

帳簿価額より正味売却価額が値上がりしているため、商品評価損はありません。

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期首商品棚卸高:483,000円

期末商品棚卸高:@540円×800個=432,000円

棚卸減耗損:@540×(800個-785個)=8,100円

【決算整理仕訳⑴支店分】

仕入)483,000/(繰越商品)483,000

(繰越商品)432,000/(仕入)432,000

(棚卸減耗損)8,100/(繰越商品)8,100

(2)貸倒引当金の設定

①本店の処理

未処理事項等の処理(1)で本店の売掛金に変動があったことに注意です。

本店の売掛金:1,098,000円(前T/B)-60,000円(B⑴)=1,038,000円

貸倒引当金:1,038,000円×1%-10,300円(前T/B)=80円

【決算整理仕訳⑵本店分】

(貸倒引当金繰入)80/(貸倒引当金)80

②支店の処理

貸倒引当金:865,000円(前T/B)×1%-6,200円(前T/B)=2,450円

【決算整理仕訳⑵支店分】

(貸倒引当金繰入)2,450/(貸倒引当金)2,450

(3)減価償却費の計上

①本店の処理

a.備品(定額法)

減価償却:600,000円(前T/B)÷5年=120,000円

b.車両運搬具(生産高比例法)

減価償却:2,000,000円(B⑵)×3,000㎞/150,000㎞=40,000円

【決算整理仕訳⑶本店分】

減価償却費)160,000/(備品減価償却累計額)120,000

           /(車両運搬具減価償却累計額)40,000

②支店の処理

 備品の減価償却:350,000円(前T/B)÷5年=70,000円

【決算整理仕訳⑶支店分】

 (減価償却費)70,000/(備品減価償却累計額)70,000