ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

本支店会計その2~本支店合併財務諸表②~

前回の続きです。問題は続きからの掲載です。

 

問 品川商事株式会社は、東京の本店のほかに埼玉県に支店を有している。次の【資料】にもとづき、第7期(平成29年4月1日~平成30年3月31日)の本店の損益勘定を完成しなさい。ただし、本問では「法人税、住民税及び事業税」と税効果会計を考慮しないこととする(149回第3問)。

【資料】

(A)残高試算表(本店・支店)

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(C)決算整理事項等

(4)満期保有目的債券は、平成28年4月1日に、期間10年の額面¥1,000,000の国債(利払日:毎年3月および9月末日、利率年1.2%)を発行と同時に¥990,000で取得したものである。額面額と取得価額との差額は金利の調整と認められるため、定額法による償却原価法(月割計算)を適用している。

(5)その他有価証券の期末時点の時価は¥784,000である。

(6)経過勘定項目(本店・支店)

①本店:給料の未払分¥70,000 支払家賃の前払分¥60,000

②支店:給料の未払分¥50,000 支払家賃の未払分¥50,000

(7)本店および支店の商品売買取引にかかる消費税(税率8%)に関して、本店が税込方式にて一括して申告・納付している。なお、本問では商品売買以外の取引に係る消費税を考慮しないこととする。

※試験当時の消費税率で表示しています。

(8)のれんは、平成26年4月1日に同業他社を買収した際に生じたものである。発生年度から10年間にわたり、毎期均等額ずつ償却している。

(9)本店が支払った広告宣伝費のうち、支店は¥60,000を負担することとなった。

(10)支店で算出された損益(各自算定)が本店に報告された。

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決算整理事項の処理

 (4)満期保有目的債券の評価

満期保有目的債券は本店のみの処理となります。償却原価法については、過去の記事をご覧ください。

 

polytech-mk.hatenablog.com

 

この債券は4月1日(期首)に取得したものですから、月割計算でなくても構いません。

償却額:(1,000,000円-990,000円)÷10年=1,000円

【本店の仕訳】

(満期保有目的債券)1,000/(有価証券利息)1,000

(5)その他有価証券の評価

こちらも本店のみの処理です。帳簿価額725,000円から時価784,000円に評価替えします。値上がりしているのでその他有価証券(資産)をその分増やします。相手勘定はその他有価証券評価差額金です。

その他有価証券の増加分:784,000円(時価)-725,000円(帳簿価額)=59,000円

【本店の仕訳】

(その他有価証券)59,000/(その他有価証券評価差額金)59,000

なお、今回作成するのは損益の総勘定元帳です。損益計算書とほとんど同じですが、損益に関する勘定のみ注視すればよいことになります。

したがって、この(5)の仕訳は損益勘定に絡んでいないので、仕訳をしなくても先に進めることができます。

(6)費用の前払と未払

各費用について、繰延と見越しを行います。3級では具体的に未払給料(費用)などと記入していましたが、2級では概ね表記の方法が若干変わります。

(前T/Bなどの問題文の勘定科目に従います)

前受収益(負債):前受手数料、前受利息など(3級のときの勘定科目、以下同じ)

前払費用(資産):前払給料、前払家賃、前払保険料など

未収収益(資産):未収利息など

未払費用(負債):未払給料、未払家賃、未払保険料など

なお、前受金・前払金・未収金・未払金はそのまま変わりません。

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【本店の仕訳】

(給料)70,000/(未払費用)70,000

(前払費用)60,000/(支払家賃)60,000

【支店の仕訳】

(給料)50,000/(未払費用)50,000

(支払家賃)50,000/(未払費用)50,000

(7)消費税の精算処理(税込方式)

すべての勘定科目を税込みで計算すると、それだけで試験が終わってしまうため時間の都合上商品売買のみとしています。したがって、売上と仕入に関しての消費税を計算します。

なお、試験当時は消費税8%であったため、そのまま8%で計算しています。税込時の処理については、8%/108%(現在は10%/110%)で計算します。

消費税の仕訳は、問題文にもあるとおり本店で一括処理をします。

売上分の消費税(仮受消費税):(7,560,000+3,240,000)[前T/B]×8%/108%=800,000円

仕入分の消費税(仮払消費税):(3,780,000+108,000+1,414,800-108,000)[前T/Bと未処理事項④]×8%/108%=384,800円

未払消費税:800,000円-384,800円=415,200円

【本店の仕訳】

(未払消費税)415,200/(租税公課)415,200

(8)のれんの償却

のれんは4月1日(期首)に発生したものですから、月割計算は要しません。また、本店のみの仕訳となります。

発生時から3年(26年度から28年度)経過していますので、前T/Bの帳簿価額はすでに3年分差し引かれた金額となっています。

償却額:840,000円(前T/B)÷(10年-3年)=120,000円

【本店の仕訳】

(のれん償却)120,000/(のれん)120,000

(9)広告宣伝費の負担割合の調整

本店の広告宣伝費60,000円を支店にそのまま振り替えます。

【本店の仕訳】

(支店)60,000/(広告宣伝費)60,000

【支店の仕訳】

(広告宣伝費)60,000/(本店)60,000

(10)支店の当期純利益の振り替え

配布されているメモ用紙に簡単な決算整理後残高試算表(後T/B)を作成します。

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 今回の計算の関係するのは損益項目ですから赤枠と青枠のみを記入します。メモ用紙ではなく問題用紙の前T/Bに直接書き込んでもいいと思います。あと、勘定科目も「家賃」「棚減」「商損」とかわかる程度に省略して書いてください。

ここから支店の当期純利益を計算しますと以下のとおりとなります。

支店当期純利益:3,241,800円(収益合計)-3,033,550円(費用合計)=208,250円

【本店の仕訳】

(支店)208,250/(損益)208,250

【支店の仕訳】

(損益)208,250/(本店)208,250

※基本なので表示していますが、支店の当期純利益さえ把握していれば、実際には仕訳は不要です

答案用紙にそれぞれの赤枠の金額合計と支店勘定(支店の当期純利益)を記入して全体の当期純利益を計算します。

当期純利益:7,651,700(収益合計)+208,250(支店当期純利益)-6,305,360円(費用合計)=1,554,590円繰越利益剰余金

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もし、問題文に本支店の一致金額を求められた場合、上の数字も前回までの分を足して記入することになります。

本支店の一致金額:1,844,000円(未処理事項まで)+208,250円(支店純利益)=2,052,250円

 

次回はせっかくなので、支店勘定と繰越利益剰余金勘定の4点捨ててもいいという方のための速攻解答編を解説します。