前2回の内容をもとに今回は実戦向けの解き方を解説します。名誉のために満点目指している方でなければ、第3問が面倒なものであった場合、半分以上取れれば良しとする方法です。
前回の最後に申し上げた通り、第3問の満点20点中、支店勘定(支店当期純利益)と繰越利益剰余金勘定(本支店全体の当期純利益)の4点(各2点)を出すために相当な時間を要します。第1問仕訳問題の各問の点数が4点ですから、この程度のものです。
合格点が70点ですから、4点に10分以上かけるのであれば、他のところに手を回せるわけです。全て埋めたい気持ちはありますが、他の問題を見直す時間に費やした方がいい結果を導きます。何度やっても計算ミスや勘違いなどケアレスミスはついて回ります。
いつも模擬試験をやっても2時間足りないという方は、この方法で練習してみてください。全体的に第3問は、捨て問作ってもいい問題ばかりです。
そして、この問題を解くためのポイントをもう一つ。解答用紙に注目してください。今回は損益勘定の総勘定元帳となります。したがって、貸借対照表のみの仕訳は一部を除いて無視して進みます。そして支店の仕訳は、最終的な支店の当期純利益を計算するためのものですから、これも無視して進みます。
もし、何回もやって時短に成功した方については、本編では示しませんが第2ステップとして支店の方も今回の要領で計算してみてください。そうすれば捨て問はなくなります。
日商問題の解答解説のときは問題すべて掲載しますが、今回は省略してコンパクトにします。
工程1 未処理事項の処理
細かい話は前回までを参考にして頂ければと思います。
まず未処理事項ですが、ここは基本通り仕訳を行います。なぜなら、この未処理事項を適当にやると決算整理事項にも影響を与えるからです。
(1)売掛金回収の未達
売掛金の変動は、決算整理事項②貸倒引当金の算定にかかわる部分です。
売掛金:▲60,000円
※本店のみの数字(以下同じ)を表示しています。
基本的に仕訳は時間がかかるので極力しません。
(2)営業用車両の購入の未記帳
車両の購入は、決算整理事項③減価償却費の計上にかかわる部分です。
車両運搬具:2,000,000円
(3)記帳の誤り
貸借対照表関係のため処理不要です。
(4)本店および支店の未記帳
仕入勘定については、解答用紙への仕入勘定にかかわる部分です。
⑦消費税の精算にも関係しそうですが、本店一括処理のため仕入がプラマイゼロとなりますので、ここの部分は無視して構いません。
仕入:▲108,000円
工程2 決算整理事項の処理
(1)売上原価の算定
本店のみボックス作成して各数値を把握します。
仕入(売上原価):3,780,000円(前T/B)+717,000円(繰越商品前T/B)-756,000円(期末商品棚卸高)-108,000円(未処理事項④)=3,633,000円
これ以上決算整理事項に仕入勘定は登場しません。したがって解答用紙にすぐ記入します。これをすることによって時間が無くなっても部分点を獲得することができます。
全体を把握するために、事前に決算整理事項を把握しておくことが大切です。解答用紙に記入しないといつまでたっても0点のままです。
棚卸減耗損:22,680円(ボックス上図)
商品評価損:19,400円(ボックス上図)
(2)貸倒引当金の設定
貸倒引当金繰入勘定のみ計算します。
貸倒引当金:(1,098,000円(売掛金前T/B)-60,000円(未処理事項⑴))×1%=10,380円
繰入額:10,380円-10,300円(貸倒引当金前T/B)=80円
(3)減価償却費の計上
本店の備品と車両運搬具のみ計算します。
備品(定額法):600,000円(前T/B)÷5年=120,000円
車両運搬具(生産高比例法):2,000,000円(未処理事項⑵)×3,000㎞/150,000㎞=40,000円
減価償却費合計:120,000円+40,000円=160,000円
(4)満期保有目的債券の評価
償却額(償却原価法):1,000,000円(額面)-990,000円(前T/B)÷10年=1,000円
有価証券利息:12,000円(前T/B)+1,000円=13,000円
(5)その他有価証券の評価
損益勘定に関係ないので飛ばします。
(6)費用の前払と未払
前払いはマイナス、未払いはプラスでした。
給料:830,000円(前T/B)+70,000円(未払分)=900,000円
支払家賃:780,000円(前T/B)-60,000円(前払分)=720,000円
(7)消費税の精算処理(税込方法)
ここは本店と支店、両方の数字を見なければなりません。
売上分(仮受消費税):(7,560,000円(本店前T/B)+3,240,000円(支店前T/B))×8%/108%=800,000円
仕入分(仮払消費税):(3,780,000円(本店前T/B)+1,414,800円(支店前T/B))×8%/108%=384,800円
先ほど述べましたが、未処理事項⑷の商品移動は総体での数字が変わるわけではないので無視します。
租税公課(未払消費税):800,000円-384,800円=415,200円
(8)のれんの償却
償却額:840,000円(前T/B)÷(10年-3年)=120,000円
(9)広告宣伝費の負担割合の調整
本店の広告宣伝費60,000円を支店が負担してくれるので、差し引きます。
広告宣伝費:319,000円(前T/B)-60,000円=259,000円
この状態で目標の16点達成となりました。前T/Bからただ書き写す箇所は、当たり前に得点となりません。また、合計欄を書いても得点にはなりません。
もし、これで時間が1時間弱余るようであれば、支店の部分を改めて計算して答案用紙を完成させてもOKです。
ただし、30分切るようであれば、見直しに集中した方が失点を防ぐことができます。1つでも間違いに気づくことができれば十分です。
特に第1問は各4点ですから、間違いに気付けば捨て問の部分はカバーできます。簿記の問題は計算問題ですから、コスパの計算も上手に行いましょう。