この部分は連結会計をする上で大事な考え方となります。
まず1つ目。
連結財務諸表を作成する場合、グループ会社間での売買や貸し借りのような取引は、グループを大きな一会社として考えると、自分から自分への取引ということなので、その部分は消去する仕訳を行います。P社からS社に利益をつけてモノを販売したときも、その利益分は水増しになってしまうため消してしまいます。
この作業を債権債務の相殺控除、内部利益の控除といいます。
何故こんなことをしなければならないかというと、P社が赤字決算になりそうなときにS社に借金や過剰在庫を押し付けて、P社こそが健全な経営をしていると見せかけようとすることを防止するためです。
ところで、目に見える財産の移動は大丈夫ですが、目に見えない損益や権利義務などは消去すると考えます。遠くにある会社にわざわざ返しに行けますか?ということです。
そして、この仕訳をするために必要なものが、タイトルにあるダウンストリームとアップストリームです。
まず前提の話として、P社は支配する会社なので上位にいます。そしてS社は支配を受ける会社なので下位にいます。この位置関係が大事です。
P社からS社にモノが移動するとき、上から下に川のように流れることからダウンストリームと呼びます。
逆にS社からP社にモノが移動するとき、下から上の流れなのでアップストリームと呼びます。
これから、仕訳の仕方の概要を説明しますが、以下の点に着目して考えてみましょう。
どこの会社の意思で物流をするのか?
非支配株主は存在するか?
ダウンストリーム
まずは簡単な方の説明からです。ダウンストリームはP社からS社にモノが移動する流れです。2人の経営者の例で話をすると、P社のモノを自分の判断でS社にモノを渡すのですから、非株くんには関係ありません。P社の経営は自分だけが行っているからです。したがって、仕訳もシンプルに行います。
例題 P社は土地10,000円をS社に対して15,000円で売却した。
(持分割合はP社が60%、非支配株主持分は40%です。以下同じ。)
P社の土地を5,000円の利益をつけて売却しているので、その利益について当初の仕訳の逆仕訳をして取り消すこととなります。なお、土地を売った現金預金などはP社にわたっていますから、そのままにします。つまり、原価のまま引き渡すことになります。
【当初の仕訳(P社)】
(現金預金など)15,000/(土地)10,000
/(土地売却益)5,000
※または固定資産売却益ですが、実際の試験では土地売却益を使うことがほとんどです。
【当初の仕訳(S社)】
(土地)15,000/(現金預金など)15,000
【連結修正仕訳】
(土地売却益)5,000/(土地)5,000
これにより、P社の土地10,000円がS社に原価のまま引き渡されたことになります。
アップストリーム
アップストリームはS社からP社にモノが移動する流れです。先ほどと違ってS社には非株くんがいます。利益を受けるときも、費用負担するときも2人一緒が原則ですね。
例題 S社は土地10,000円をS社に対して15,000円で売却した。
【当初の仕訳(P社)】
(土地)15,000/(現金預金)15,000
【当初の仕訳(S社)】
(現金預金)15,000/(土地)10,000
/(土地売却益)3,000
/(非支配株主持分)2,000
土地を売った利益5,000円は、それぞれ二人のフトコロに入っています。自分が3,000円(持株比率60%)、非株くんには2,000円(持株比率40%)の取り分です。非株くんへの取り分については、非支配株主持分(純資産)で処理します。P社はこれを返さないとならないとともに、非株くんも返還しないとならないのです。
【連結修正仕訳】
(土地売却益)3,000/(土地)5,000
(非支配株主持分)2,000/
アップストリームは、非支配株主持分のことも考えないとならないので、問題文を読むときにどっちなのかを判断することを忘れないでください。