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商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

製造業の財務諸表②~決算整理事項その2~

今度は、商業簿記としてこの決算整理事項を最初から見ていきます。ということで、[資料2]の部分だけ表示いたします。

 [資料2]3月の取引・決算整理等に関する事項

1.3月について、材料仕入高(すべて掛買い)¥90,000、直接材料費¥70,000、直接工直接作業賃金支払高(現金扱い、月初・月末未払なし)¥80,000、製造間接費予定配賦額¥90,000、間接材料費実際発生額¥20,000、間接材料費と以下の事項以外の製造間接費実際発生額(すべて現金支出を伴うものであった)¥32,500、当月完成品総合原価¥230,000、当月売上原価¥220,000、当月売上高(すべて掛売り)¥320,000であった。年度末に生じた原価差異は、以下に示されている事項のみである。なお、原価差異は、いずれも比較的少額であり正常な原因によるものであった。また、×7年4月から×8年2月までの各月の月次決算で生じた原価差異はそれぞれの月で売上原価に付加されているものとする。

2.決算にあたり実地棚卸を行ったところ、材料実際有高は¥48,000、製品実際有高は¥33,000であった。減耗は、材料・製品とも正常な理由による生じたものであり、製品の棚卸減耗については売上原価に賦課する。

3.固定資産の減価償却費については、期首に年間発生額を見積もり、以下の月割額を毎月計上し、決算月も同様の処理を行った。

建物¥4,000(製造活動用¥2,600、販売・一般管理活動用¥1,400)

機械装置(すべて製造用)¥11,200

4.過去の実績をもとに、売上債権の期末残高に対して1%、短期貸付金の期末残高について2%の貸倒れを見積もり、差額補充法により貸倒引当金を設定する。なお、営業外債権に対する貸倒引当金の決算整理前の期末残高は0円である。

5.退職給付引当金については、年度見積額の12分の1を毎月計上しており、決算月も同様の処理を行った。製造活動に携わる従業員に関わるものは、月¥24,000、それ以外の従業員に関わるものは月¥16,000である。年度末に繰入額を確定したところ、年度見積額に比べ、製造活動に携わる従業員に関わるものは¥1,500多かった。それ以外の従業員に関わるものは年度初めの見積もりどおりであった。

6.過去の経験率をもとづき¥5,000の製品保証引当金を設定した。決算整理前残高試算表に計上されている製品保証引当金に関する特約期間は終了した。なお、製品保証引当金戻入については、製品保証引当金繰入と相殺し、それを超えた額については営業外収益の区分に計上する。

7.税引前当期純利益の40%を「法人税、住民税及び事業税」に計上する。なお、法人税、住民税及び事業税の産出額については、税法の規定により100円未満は切り捨てとする。

1.3月の取引について

前回話題にも出しませんでしたが、( )書きでいろいろ書かれているものを抜き出します。その中には、現金預金・売掛金・買掛金の変動に関するものがあります。

材料仕入(すべて掛買い):買掛金+90,000円

賃金支払高(現金払い・未払いなし):現金-80,000円

製造間接費実際発生額(すべて現金支出):現金-32,500円

当月売上高(すべて掛売り):売上+320,000円売掛金+320,000円

売上原価については、前回のボックスで算出済みですが、ここで原価差異の赤字で表示した理由をお話しします。

売上原価を出すには、前T/B残高+当月売上原価+原価差異となります。前T/Bと当月売上原価はすでに問題文に明記されており計算不要です。ところが、原価差異だけは材料費分・製造間接費分・製品分の合計額を出さなければなりません。

また、もし損益計算書の解答用紙は捨て問とするならば、そもそも前回のボックスを作成する必要すらありません。

最初から時間に余裕のある方は、[資料2]1.の時点で売上総利益を計算してしまう方法がありますが、様子を見ながらという方は、順序からいって貸借対照表をある程度完成させてから、損益計算書に移る可能性があります。となると、原価差異をどこかでメモしておかなければ、最初から計算し直すことになり時間のロスを生む事にもなりかねません。ということで忘れないようにする意味で赤字表記にしました。

詳しくは、また次回お話しします。

2.棚卸資産の棚卸

前回のボックスでそれぞれの金額がわかります。なお、材料と製品はボックスを書かなくても、文中に記載されている数字を答案用紙に書き込むだけの作業です。

材料:48,000円

製品:33,000円

仕掛品:50,000円(前T/B)+70,000円(直接材料費)+80,000円(賃金支払額)+90,000円(製造間接費配賦予定額)-230,000円(完成品総合原価)=60,000円

3.固定資産の減価償却費の計上

減価償却費の全額はそれぞれの減価償却累計額となります。

建物減価償却累計額:128,000円(前T/B)+4,000円=132,000円

機械装置減価償却累計額:490,000円(前T/B)+11,200円=501,200円

そして、建物(販売・一般管理活動用)の減価償却費1,400円については、販売費及び一般管理費(以下、「販管費」)へ加算となります。

4.貸倒引当金の設定

貸借対照表に記載する貸倒引当金は、差額補充法のことは無視して、現時点の売掛債権や短期貸付金に対して計上すればいいだけです。

売掛金については、[資料2]の1.で加算されていることに注意しましょう。

現時点の売掛債権:3,345,000円(前T/B受取手形)+2,237,000円(前T/B売掛金)+320,000円(1.)=5,902,000円

売掛債権に係る貸倒引当金:5,902,000円×1%=59,020円

短期貸付金に係る貸倒引当金:90,000円(前T/B)×2%=1,800円

貸倒引当金:59,020円+1,800円=60,820円

区分式損益計算書に表示される利益の計算においては、差額補充法を考慮しなければなりませんので、以下のとおりとなります。

売掛債権に係る貸倒引当金繰入:59,020円-45,000円(前T/B貸倒引当金)=14,020円

本業に係る費用となるため、販管費へ加算となります。

短期貸付金に係る貸倒引当金繰入:1,800円-0円(文中の説明により前T/Bなし)=1,800円

製造業において貸付業務は本業に係る費用とはいえないので、営業外費用へ加算となります。

5.退職給付引当金の計上

貸倒引当金と同様に退職給付引当金については、全額計上します。

退職給付引当金:1,460,000円(前T/B)+24,000円(製造活動用)+16,000円(それ以外用)+1,500円(見積もりに対して多くなった分)=1,501,500円

区分式損益計算書に表示される利益の計算においては、製造活動以外の従業員に対する16,000円退職給付費用として計上します。

なお、退職給付費用は、販管費へ加算となります。そして、この時点で販管費が確定となります。

販管費:478,260円(前T/B)+1,400円(減価償却費)+14,020円(貸倒引当金繰入)+16,000円(退職給付費用)=509,680円

6.製品保証引当金の計上

製品保証引当金を5,000円計上すると書かれていますので、そのまま計上します。

製品保証引当金:5,000円

区分式損益計算書に表示される利益の計算においては、なお~の説明どおりに従います。また、「製品保証引当金・・・営業外収益の区分に計上する」と書かれていますから、戻入分の方が多いことがわかります。

営業外収益(製品保証引当金戻入):6,000円(前T/B)-5,000円(今回の繰入分)=1,000円

7.法人税、住民税及び事業税の計上

今までの内容から配布されているメモ用紙に簡単な損益計算書を作成します。

売上:3,530,000円(前T/B)+320,000円(1.当月売上分)=3,850,000円

売上原価:2,265,000円(前T/B)+220,000円(1.当月売上原価分)+100円(材料:原価差異)+1,800円(製造間接費:原価差異)+2,000円(製品:原価差異)=2,488,900円

売上総利益:3,850,000円(売上)-2,488,900円(売上原価)=1,361,100円

販管費:509,680円

営業利益:1,361,100円(売上総利益)-509,680円(販管費)=851,420円

営業外収益:1,000円(製品保証引当金戻入)

営業外費用:16,000円(前T/B支払利息)+2,000円(前T/B手形売却損)+1,800円(4.短期貸付金に係る貸倒引当金繰入)=19,800円

経常利益:851,420円(販管費)+1,000円(営業外収益)-19,800円(営業外費用)=832,620円

特別利益:25,000円(前T/B固定資産売却益)

特別損失:0円(なし)

税引前当期純利益:832,620円(経常利益)+25,000円(特別利益)-0円(特別損失)=857,620円

税引前当期純利益に40%を掛けて、法人税、住民税及び事業税を計算します。なお、100未満切り捨てです。

法人税、住民税及び事業税:857,620円×40%≒343,000円(100円未満切り捨て)

当期純利益:857,620円(税引前当期純利益)-343,000円(法人税、住民税及び事業税)=514,620円

これで、区分式損益計算書に表示される利益の解答が出揃うことになります。

ただし、メインは貸借対照表なので、まだ終わりません。ここから、未払法人税等を計算します。

未払法人税:343,000円(法人税、住民税及び事業税)-150,000円(仮払法人税等)=193,000円

工業簿記と商業簿記の作業が伴うため、時間は相当かかります。多分、これが出題されると他の問題を軽減してバランスを取るか、区分式損益計算書に表示される利益の問題がカットされるかどちらかだと思います。

次回は実際の解き方編です。極力重ねて説明はしないので、わからなくなったらここに戻ってきて勉強しなおしましょう。