156回日商簿記2級の解答について~第3問 連結貸借対照表の作成①~
156回の最後は連結貸借対照表です。過去の記事をご覧の方は大体把握できていると思いますが、貸借対照表のときは、損益科目は基本関係ありません。損益科目は計算のために最低限必要なことをするときだけにとどめておきましょう。
ということでまずは基本編の解説です。
問 次の[資料1]から[資料3]にもとづいて、連結第2年度(X2年4月1日からX3年3月31日)の連結貸借対照表を作成しなさい。なお、本問では「法人税、住民税及び事業税」、「消費税」および「税効果会計」を考慮しない。
[資料1]X3年3月31日におけるP社(親会社)およびS社(子会社)の試算表
ただし、P社の試算表は決算整理前残高試算表であるのに対し、S社の試算表は決算整理後残高試算表である点に留意すること。
[資料2]P社の決算整理事項
1.売掛金のうち外貨建てのものが12,000千円(取得時レート:1ユーロ=120円)ある。当期末のレートは1ユーロ=130円である。
2.期末時点の売掛金(S社に対する7,000千円を除く)に対し、1%の貸倒引当金を差額補充法で設定する。
3.有形固定資産の減価償却を、次の条件にもとづき行う。
建物 耐用年数:30年 前期末までの経過年数:10年 残存価額:ゼロ 償却方法:定額法
備品 耐用年数:5年 前期末までの経過年数:1年 残存価額:ゼロ 償却方法:200%定率法
4.当期の退職給付費用は6,800千円である。
5.支払リース料は、オペレーティング・リース取引に対して、3年前から継続して向こう1年分のリース料を10月1日に毎年同額ずつ支払ったことによるものである。
[資料3]P社とS社の連結に際し、必要となる事項
1.P社は、X1年4月1日にS社の発行済株式総数の60%を400,000千円で取得し、これ以降S社を連結子会社とし、連結財務諸表を作成している。X1年4月1日時点でのS社の純資産の部は、次のとおりであった。
資本金 150,000千円
資本剰余金(すべて資本準備金) 150,000千円
利益剰余金(すべて繰越利益剰余金) 130,000千円
2.のれんは、発生年度から10年間にわたり定額法で償却を行っている。
3.S社は、前期は配当を実施していないが、当期は繰越利益剰余金を財源に25,000千円の配当を実施した。
4.前期よりP社より商品をS社に販売しており、前期・当期とも原価に30%の利益を加算して単価を決定している。当期におけるP社の売上高のうち、S社向けの売上高は91,000千円である。また、S社の期首商品のうち3,900千円および期末商品のうち6,500千円はP社から仕入れたものである。
5.S社は保有している土地90,000千円を決算日の直前に80,000千円でP社に売却しており、P社に売却しており、P社はそのまま保有している。未実現利益を全額相殺消去すること。
6.連結会社(P社およびS社)間での当期末の債権債務残高は、次のとおりである。なお、P社・S社とも、連結会社間の債券に関して、貸倒引当金を設定していない。
【P社のS社に対する債権債務】
売掛金 7,000千円
未払金 80,000千円
【S社のP社に対する債権債務】
買掛金 7,000千円
未収入金 80,000千円
7.退職給付に関し、連結にあたり追加で計上すべき事項は生じていないため、P社およびS社の個別上の数値をそのまま合算する。
決算整理事項1 外貨建て売掛金の換算替え
問 売掛金のうち外貨建てのものが12,000千円(取得時レート:1ユーロ=120円)ある。当期末のレートは1ユーロ=130円である。
まず、ユーロに換算します。
換算前の売掛金(ユーロ):12,000千円÷@120円=100ユーロ
そして、当期末のレートに換算替えします。
換算後の売掛金(円):100ユーロ×@130円=13,000千円
最後に換算後から換算前の売掛金を差し引くと、為替差損益が出ます。
為替差損益:13,000千円-12,000千円=1,000千円(値上がり)
【決算整理仕訳】
(売掛金)1,000/(為替差損益)1,000
決算整理事項2 貸倒引当金の設定
問 期末時点の売掛金(S社に対する7,000千円を除く)に対し、1%の貸倒引当金を差額補充法で設定する。
決算整理事項1の売掛金の変動を忘れないように計算します。
貸倒引当金繰入額:(342,000千円+1,000千円【決算整理事項1より】-7,000千円【S社分】)×1%-1,900千円=1,460千円
【決算整理仕訳】
※費用は試算表によると「販売費及び一般管理費」となっていますが、冒頭でもお話しした通り、損益項目は全然関係ないので、そのままの科目にしています。
決算整理事項3 固定資産の減価償却
問 有形固定資産の減価償却を、次の条件にもとづき行う。
建物 耐用年数:30年 前期末までの経過年数:10年 残存価額:ゼロ 償却方法:定額法
備品 耐用年数:5年 前期末までの経過年数:1年 残存価額:ゼロ 償却方法:200%定率法
特にひねるような問題はありません。基本通りに進めるだけです。
①建物の減価償却
定額法により処理します。
当期の減価償却費:234,000千円÷30年=7,800千円
減価償却累計額(各自推定):7,800千円×10年=78,000千円
【決算整理仕訳】
(減価償却費)78,000/(建物減価償却累計額)78,000
②備品の減価償却
こちらは200%定率法で処理します。
減価償却累計額(各自推定):100,000千円÷5年×200%=40,000千円
当期の減価償却費:(100,000千円-40,000千円)÷5年×200%=24,000千円
【決算整理仕訳】
(減価償却費)24,000/(備品減価償却累計額)24,000
決算整理事項4 退職給付費用の計上
問 当期の退職給付費用は6,800千円である。
こちらも特に解説はありません。
【決算整理仕訳】
(退職給付費用)6,800/(退職給付引当金)6,800
決算整理事項5 前払費用の計上(費用の繰り延べ)
問 支払リース料は、オペレーティング・リース取引に対して、3年前から継続して向こう1年分のリース料を10月1日に毎年同額ずつ支払ったことによるものである。
リース料は10月1日(決算日3月31日)に1年分を支払う契約となっています。そのため、4月からの6か月分は次年度の経費となります。
6か月分を1期の単位とすると、36,000円÷2期=18,000千円とやってしまうとハマります。
以下の図を見てください。
貸借対照表に計上されているのは、2年度上半期分もあります。したがって3期分の金額が計上されていることとなります。
つまり1期分の金額は、36,000千円÷3期=12,000千円となります。
【2年3月末の仕訳】
(前払費用)12,000/(支払リース料)12,000
【2年4月再振替仕訳】
(支払リース料)12,000/(前払費用)12,000
この時点で、まず支払リース料が12,000千円計上されています。
【2年10月リース料支払時】
(支払リース料)24,000/(現金預金など)24,000
この繰り返しで仕訳が行われています。これで支払リース料の残高が、現状の36,000千円となります。
したがって3年3月末の仕訳と2年3月末の仕訳と同じになります。
【決算整理仕訳】
(前払費用)12,000/(支払リース料)12,000
次回は[資料3]の解説をします。