ポリテク火星出張所!

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民法改正その3~連帯保証②連帯保証契約~

前回の民法改正では、保証制度の概要を説明しました。次はいよいよ現行における連帯保証制度の説明です。

 

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 連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負担するものです。世間では連帯責任という言葉をよく使います。この使われ方からして、いいイメージはありません。そして、連帯とつくだけで、保証契約もヤバい匂いが一層引き立つのです。

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先にも話した通り、世間一般的な保証といえば、商法により連帯保証である旨規定されています。お金だけでなく、アパートを借りたりするのも保証人を設定しますよね。

「保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為であるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する。」(商法511条Ⅱ)

 

さて、それでは保証と連帯保証とは、一体何が違うのか。順を追って説明していきたいと思います。まず、保証人には、前回3つの権利があるという話をしました。

その保証人の武器が、連帯保証人では使えなくなります。

催告の抗弁権

前回の復習ですが、催告の抗弁権とは、債権者が主たる債務者に履行を請求することなく、いきなり保証人に保証債務の履行を求めてきた場合、まず主たる債務者に催告するよう請求できる権利でした。

これが使えないということはどうなるのでしょうか?自分が借りていないのに、あたかも自分が借金したのと同じように扱われてしまうのが、連帯保証人です。

つまり、困太さんよりも民子さんの方がお金持っていそうだなと思ったら、いきなり谷子さんに返済を求めることができるのです。そこには、困太さんが行方不明だとか無資力だとかなどの理由は必要ありません。期限が過ぎたら、全額の返済を請求することができるのです。あとは、困太さんと民子さんとの間でやり取りをしてちょうだいということです。

実際、クリーンな消費者金融でそんなことやってたら、評判ガタ落ちですからやらないと思いますが、法律上できるということは知っておいた方がいいでしょう。

危ないヤミ金融であれば、そのようなこともありうるかもしれません。それでも、法律上何の問題もないのです。

検索の抗弁権

検索の抗弁権とは、債権者が主たる債務者に催告した後でも、なお先に保証人に対して執行してきた場合、まず主たる債務者の財産に対して執行すべきことを主張できる権利でした。

催告の抗弁権が認められないのだから、次の攻撃も認められるわけもありません。困太さんが督促状を見ても知らん顔をしている場合、たとえ、不在がちの困太さんに財産があったとしても、手っ取り早い民子さんに返済を迫っても合法ということです。

分別の利益

分別の利益とは、保証人が複数いる場合に、全額ではなく平等な割合で債務を負担する権利です。

連帯保証では、平等割合もなくなりますから、それぞれに100万円全額を請求しても債権者の自由ということになります。

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誰をターゲットにしようかな?

当たり前ですが、それぞれに黙って300万円を回収することはできません。あくまで、100万円誰かに返してもらうとか50万円ずつ連帯保証人に返してもらうとか、選択権は債権者の手のひらにあるのです。

まとめ

連帯保証人は周りを不幸にします。とはいっても一人暮らしをしてアパートを借りたりするのは、連帯保証人が必ず必要です。本当に近い親兄弟ぐらいしか連帯保証人を引き受けたりするのはやめましょう。

社会に出るお子さんがいる方は、是非この話をしてあげてください。万が一、何も知らずにお子さんが友人の連帯保証人になってしまっては、支払うのは親であるあなたかも知れません。

おまけ

よく似た言葉に身元保証というものがあります。その仕組みは、連帯保証と同じですが、最近では、身元保証人を引き受ける業者が登場しています。

老人ホームなどの介護施設に入るには、だいたい身元保証人が必要となります。ただ、お金はあるけど、身内が自分しかいないという方のためにそういうビジネスができたのです。もちろん、ただではなく、身元保証人になる報酬とそれ相応の担保が必要になります。

おひとりさまの単身世帯が増える中、孤独死孤立死を避けるためには、まずは、お金が必要です。地獄の沙汰も金次第という訳ですね。