ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

連結会計その1~会社のしくみと連結会計~

この連結会計で2級の範囲は終了となります。この後は、サンプル問題を使用したサービス業の貸借対照表と製造業の損益計算書をやる予定です。

まずは本題に入る前に、連結会計を知るためには会社と株式・株主の関係を知っておいた方がよいと思います。

中級者でもう連結会計のしくみを理解されている方については、軽く読み飛ばしていただければと思います。

会社を大きくするには

連結会計とは、グループ会社に対する会計のシステムのことをいいます。

会社を大きくするためには、既存の会社を取り込む合併があります。合併には、ターゲットとなる会社の施設・人材・技術力・顧客などを自社のものにできるメリットがあります。ところが、会社が大きくなりすぎると指揮系統に不利な影響を及ぼすこととなります。大きな銀行同士が合併を行うこと(メガバンク)がありますが、その後企業再編をすることとなります。

そこで次にどうするかというと、分社化(会社分割)ということになります。自社は親会社(管理会社)として、他の部門を子会社にすることで経営陣が増えることになります。管理会社の取締役が、子会社の取締役に指示をすることで指揮系統がまとまるということになります。

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たとえば、食品関係の会社でカフェ部門とファーストフード部門があったが効率化を図るため、それぞれの部門を会社として分社化するということです。

自社が不動産業を新たに行うこととなり、自社で最初からやるには資金・施設・労働力・ノウハウが不足している、または莫大な費用がかかる場合で、合併という選択肢が取れないときの手段として企業買収という方法があります。合意による買収もありますが、力づくで奪う敵対的買収という方法もあります。企業買収には、次の株式のしくみの理解が必要となります。

株式について

株式会社には、株式という単位があります。会社を設立する場合には、自分または仲間で出資をする発起設立と、他人に出資させる募集設立があります。

募集設立では、株券を発行して購入者から資金調達を行い、その対価として株主となってもらう訳です。

株主は配当を受ける権利のほかに、株主総会で会社の決議に参加する権利(議決権)があります。議決権は、選挙や学校の生徒会などの1人1票制ではありません。会社に多く出資した分だけ議決権があります。したがって、50%以上の出資をしている株主は、筆頭株主と呼ばれ過半数の議決を1人で決めることができます。

テレビでもよくやっている代表取締役の解任取締役会で行いますが、その前提資格である取締役の解任株主総会で行います。筆頭株主は経営陣をクビにできる大きな力があるということになります。そのため、会社の経営陣(代表取締役など)が筆頭株主となる場合が前提となります。会社の運営に全く興味のない投資家に会社の運命をゆだねることはできないからです。

親会社としてターゲットの会社を支配するためには、50%以上の株式を持っていないとできないということを理解しておきましょう。

企業買収

もう用語として使っちゃっていますが、親会社は子会社を支配する側、子会社は親会社から支配を受ける側をいいます。例として敵対的買収を説明いたします。

企業買収を成功させるには、親会社として50%の株式の保有が必要となります。そのため市場に出回っている株式を買い占める方法(公開買い付け:TOB)や、多くの株式を所持している重役を取り込むなどの方法があります。

 

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市場で200株を取得することができたP社は、株主の1人を取り込むことに成功し、過半数の300株を保有することができました。これでS社はPグループ会社(最近はホールディングス:HDって呼ばれたりしています。)の参加としてスタートすることとなります。 

 こんなに長い説明でしたが、問題文では「発行済株式総数の60%を○○円で取得し、支配を獲得した。」という文言しか出てきません。

非支配株主持分

今度は、連結会計で必ず出てくる非支配株主について説明します。上記の図によると、P社は500株中300株を取得し、支配を獲得しました。それとは別に200株の株主が2名います。この株主のことを非支配株主といいます。そして、非支配株主が持っている200株を非支配株主持分といいます。

非支配株主が何人も存在すると説明が面倒になるので、以降の例題からP社の株主1人(60%)と非支配株主1人(40%)の2人で共同経営をしていると仮定して話をします。

P社の株主のことは主人公として自分と呼びますが、非支配株主のことは非株くんと呼びます。

共同経営ですから、得をしたときは二人で分け合い、損をしたときは二人で負担をします。これが大原則です。

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連結決算のしくみ

もう一度確認ですが、合併は吸収される会社が消滅します。ところが連結会計では、支配する側もされる側も会社が存続していることに違いがあります。

したがって、決算も個々の会社で行い、個別財務諸表が作成されます。そして、グループ全体の財政状態や経営成績を示すための連結財務諸表を別に作成することとなります。そのため、P社での決算手続、S社の決算手続、グループ全体での決算手続はそれぞれ独立したものだということを念頭においてください。

連結財務諸表を作成するための開始仕訳および連結修正仕訳は、P社の仕訳でもなければS社の仕訳でもありませんから、各社に影響を及ぼす仕訳はないということを覚えておいてください。また翌年度に繰り越さず、毎回同じ工程で始めます。

ここから、その工程ですが…

①開始仕訳

連結が始まった時点から前年度までの仕訳をまとめたものを作成します。

②連結修正仕訳

次に、当年度の連結にかかわる仕訳を作成します。

③連結精算書の作成

個別財務諸表のときと同様に連結精算書を作成します。

④連結財務諸表の作成

連結精算書をもとに連結貸借対照表連結損益計算書を作成します。