税効果会計その4~その他有価証券の評価差額~
税効果会計の最後は、その他有価証券の評価差額に対しての処理となります。
その他有価証券は、業務提携などのために所持しているもので、いつかは手放すことになる有価証券のことをいいます。決算時において時価を再計算し、その他有価証券評価差額金(純資産)として処理をします。
ところが、税法上ではこの評価差額の表示が認められていないため、ここで税効果会計の処理が必要となります。
そして、今までの2つと違うところは、その他有価証券評価差額金は収益でも費用でもないため、法人税等調整額を使うことができません。この場合、直接、その他有価証券評価差額金を増減することとなります。
例)決算においてその他有価証券(取得価額1,000円)を時価900円に評価替えをした。なお、当社は全部純資産直入法を採用しており、法人税等の実効税率は40%とする。
まずは、評価替えの仕訳をします。
その他有価証券の評価差額:900円-1,000円=△100円
(その他有価証券評価差額金)100/(その他有価証券)100
次に税効果会計の処理を行います。評価差額の法人税等の分だけ決算整理仕訳の逆仕訳をします。
評価差額金の調整額:100円×40%=40円
(???)40/(その他有価証券評価差額金)40
借方が空白のため、繰延税金資産(資産)で処理します。
(繰延税金資産)40/(その他有価証券評価差額金)40
基本は決算が終了したら、翌期首に再振替仕訳をしてリセットします。
(その他有価証券)100/(その他有価証券評価差額金)100
(その他有価証券評価差額金)40/(繰延税金資産)40
実は試験問題になると、この再振替仕訳をしていないパターンがあります。たとえば、第2問の株主資本等変動計算書や第3問の連結財務諸表でみられます。
ということで上の例題で再振替仕訳をせずに再度決算を迎えたパターンをやってみましょう。
例2)決算においてその他有価証券(取得価額1,000円)を時価1,200円に評価替えをした。なお、当社は全部純資産直入法を採用しており、法人税等の実効税率は40%とする。
この場合において、最初にすべきは再振替仕訳をしておくということです。したがって、以下の仕訳を事前にしておきます。
(その他有価証券)100/(その他有価証券評価差額金)100
(その他有価証券評価差額金)40/(繰延税金資産)40
その上で評価替えから始めます。
その他有価証券の評価差額:1,200円-1,000円=200円
(その他有価証券)200/(その他有価証券評価差額金)200
次に税効果会計の処理です。先ほどと同じく評価差額の法人税等の分だけ決算整理仕訳の逆仕訳をします。
評価差額金の調整額:200円×40%=80円
(その他有価証券評価差額金)80/(???)80
今度は貸方が空白のため、繰延税金負債(負債)で処理します。
(その他有価証券評価差額金)80/(繰延税金負債)80
ところで、この再振替仕訳をしないまま処理をしてしまうと以下のような誤った仕訳となってしまうことがあるので注意です。
その他有価証券の評価差額:900円(前期の評価額)-1,200円(当期の評価額)=300円
(その他有価証券)300/(その他有価証券評価差額金)300
評価差額金の調整額:300円×40%=120円
(その他有価証券評価差額金)120/(繰延税金負債)120
この場合、その他有価証券とその他有価証券評価差額金は合うのですが、前期の繰延税金資産40円が浮いてしまうため仕訳の問題では要注意です。
ただし、仕訳問題ではなく、貸借対照表の問題だった場合、繰延税金資産40円と繰延税金負債120円を相殺して繰延税金負債80円として計上するテクニックを使う方法もあります。
この方法を使うときは、上記の理屈がわかっていて、その仕訳が答案用紙と一緒にもらっているメモに記入することとなるので、表に現れることはないことが条件です。
こうすることで再振替仕訳を改めてする必要がないという時短テクニックになります。