ポリテク火星出張所!

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154回日商簿記2級の解答について~第3問 損益計算書の作成③~

それでは、154回日商簿記第3問速攻編を始めます。

前々回からの問題を再度検証しながら、必要な情報(今回は損益計算書の勘定科目)だけを抜き出して解答用紙に記入する実際の解き方を解説します。仕訳の詳しい説明は前回をもって終わっていますから、もし、その内容がちょっとわからないという方は基礎編に戻って確認をお願いします。

また、問題については、前回と同様、最後に掲載します。では、さっそく始めていきましょう!

未処理事項の処理

1.貸し倒れの処理

基礎編でお話しした通り、この部分は資料Ⅲの貸倒引当金の設定に影響します。

売掛金10,000円が貸し倒れたので、売掛金残高を減らします。

売掛金:550,000(前T/B)-10,000=540,000円

※脇役なので黒で表示します。

当期分の6,000円貸倒損失(費用)です。前期分の4,000円は貸倒引当金から差し引いておきます。

貸倒損失(借方):6,000円

貸倒引当:6,000(前T/B)-4,000=2,000円

本当は、この時点で損益計算書(以下P/Lとします。)の貸倒損失の借方に記入しますが、本ブログでは未処理事項の処理が終わった時点で一旦P/Lを表示いたします。

2.未決算の清算

600,000円の建物に対し、500,000円しか保険金が支払われなかったため、100,000円火災損失(費用)となります。

火災損失(借方):100,000円

3.土地の売却

500,000円の土地に対し、550,000円で売却することができたため、50,000円固定資産売却益(資産)となります。

固定資産売却益(収益):50,000円

この3つを解いたらすぐに解答用紙へ記入します。冒頭にも話した通り、今回の問題は損益計算書の作成ですから、貸借対照表の勘定科目は無視して進みます。

 

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抜粋表示しています(以降同じ)

固定資産の売却や火災は頻繁に起きることがないため、それぞれ特別利益特別損失となります。ここで、他社の配点予想通りに計算すると4点となります。

 決算整理事項の処理

1.貸倒引当金の設定

この部分については、貸倒引当金繰入を計算するだけのことです。

売掛債権:360,000(前T/B受取手形)+540,000(未処理事項1より)=900,000円

貸倒引当金繰入:900,000×2%-2,000(貸倒引当金:未処理事項1より)=16,000円

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ここでの配点は2点(計6点)です。

2.売上原価の算定

仕訳はする必要がないので、「仕・繰・繰・仕」も不要です。期首棚卸高・当期仕入高・期末棚卸高はそのままの金額を記入すればOKです。

ただし、棚卸減耗損や商品評価損は、計算式やボックスによる計算が必要となります。

商品期首棚卸高:220,000円(前T/B繰越商品)

当期商品仕入:5,880,000円(前T/B仕入

商品期末棚卸高:@¥400×850個=340,000円(帳簿棚卸高)

棚卸減耗損:@¥400×(850個-844個)=2,400円

商品評価損:(@¥400-@¥395)×844個=4,220円

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時間のある方はこの計算を埋めて、売上総利益まで出してもいいのですが、今回は時間が押している設定で行います。ここでの配点は4点(計10点)です。

この時点で第3問全体の半分取れていることとなります。この時点で未処理事項や決算整理事項の仕訳を丁寧にメモ用紙に書いてる状態では0点のままですよ。

3.減価償却費の計上

減価償却費は、基礎編の計算と同じように計算します。

建物の減価償却:3,000,000÷40年×8か月/12か月=50,000円

備品の減価償却:(900,000-324,000)×0.2=115,200円

※改定償却率との選択は基礎編で説明していますので省略しています。

減価償却:25,000(前T/B)+50,000+115,200=190,200円

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ここでの配点は2点(計12点)です

4.のれんの償却

のれんの償却の計算も基礎編と同じです。

のれん償却:240,000(前T/B)÷3年(残りの償却年数)=80,000円

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ここでの配点は2点(計14点)です。

5.満期保有目的債券の評価

損益計算書に関係する科目は有価証券利息営業外収益)です。

満期保有目的債券(社債)の取得金額:700,000×99円/100円=693,000円

償却原価法による有価証券利息:(700,000-693,000)÷5年=1,400円

有価証券利息(P/L):10,500(前T/B)+1,400=11,900円

 

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ここでの配点は2点(計16点)です。

6.退職給付引当金の計上

 ここは、退職給付費用(費用)81,000円をそのまま記入するだけです。

 したがって配点はありません。

7.貯蔵品の棚卸

これは、費用の前払いがわかれば解ける問題です。収入印紙を購入時に租税公課(費用)で180,000円計上したが、25,000円余ったので実際の消費高155,000円に修正して記入します。

こちらも3級レベルの問題ですから配点はありません。

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8.借入金利息の未払い分の計上

こちらは未払いの問題ですが、金額を計算させる問題で7.と比べて手間はかかります。

未払分の借入金利:900,000(前T/B)×1.2%(年利率)×8か月/12か月=7,200円

この金額を支払利息(営業外費用)として記入します。

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ここでの配点は2点(計18点)です。

この時点で残り2点は当期純利益となります。時間に余裕のある方はそのまま完成を目指します。しかし、費用対効果を考えると、ここは捨て問の対象となります。

なぜかというと…

当期純利益は、今までのすべての問題をクリアして初めて正解が出るものです。したがって、決算整理事項の1問でも間違えるとダメなのです。

もし、当期純利益を捨てれば、決算整理事項6、7、9、10は解く必要はありません。途中の( )内も埋める必要はありません。おそらく5分以上は時間が浮くと思われます。

その浮いた時間を他の問題を解く時間に使えますし、検算をする時間に使うこともできます。特に第1問の仕訳問題は各4点となっており、この問題の倍の配点となっています。

簿記検定問題は70点ぎりぎりでも100点満点でも合格は合格です。ですから、この費用対効果という考え方は、基準の合格点が設定されている検定問題では重要となります。

ということで18点で満足して別の問題に切り替えることは、戦術上必要なことです。

 

ここからは、満点目指している方向けとなります。

9・10 法人税等の計上および税効果会計

 まずは、税引前当期純利益を出す必要があります。139,080円までたどり着ければいいので、どこが経常利益で、どこが営業利益だとかいうことは、採点箇所ではないので極端にいえば記入不要です。というか考えるだけ無駄です。

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税引前当期純利益法人税等実効税率30%を掛けたものが、すぐ下の( )となります。

法人税:139,080×30%=41,724円

これが出ればもう当期純利益がわかりますね。

当期純利益:139,080-41,724=97,356円

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この当期純利益2点(計20点)となります。

ということは、9.法人税等の計上で法人税等調整額を計算しなくてもOKということになりますが...

採点箇所が法人税等調整額の場合がありますし、ここまできたら最後まで記入しましょう。

法人税等調整額:8,000×30%=2,400円

法人税、住民税及び事業税は逆算で計算できます。

法人税、住民税及び事業税:41,724+2,400=44,124円

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以上で154回の解答解説は終了となります。

 第5問(参考)

 次の[資料Ⅰ][資料Ⅱ]および[資料Ⅲ]にもとづいて、答案用紙の損益計算書を完成しなさい。なお、会計期間は2018年4月1日から2019年3月31日までの1年間とする。
[資料Ⅰ]

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[資料Ⅱ] 未処理事項

1.売掛金¥10,000が回収不能であると判明したので、貸倒れとして処理する。なお、このうち¥4,000は前期の商品販売取引から生じたものであり、残りの¥6,000は当期の商品販売から生じたものである。

2.未決算は火災保険金の請求にかかわるものであるが、保険会社より火災保険金¥500,000の支払いが決定した旨の通知があったので、適切な処理を行う。なお、決算整理前残高試算表に示されている減価償却費¥25,000は、期中に火災により焼失した建物の減価償却費を月割で計上したものである。

3.土地の一部(帳簿価額¥500,000)を売却し、売却代金¥550,000は当座預金としていたが、この取引は未記帳である。

[資料Ⅲ]決算整理事項

1.売上債権の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金は差額補充法によって設定する。

2.商品の期末棚卸高は次のとおりである。棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する。

帳簿棚卸高:数量850個、帳簿価額@¥400

実地棚卸高:数量844個、正味売却価額@¥395

3.有形固定資産の減価償却は次の要領で行う。

 建物:建物は当期の8月1日に取得したものであり、耐用年数は40年、残存価額はゼロとして、定額法により月割で減価償却を行う。

 備品:耐備品は数年前に取得したものであり、耐用年数10年、残存価額はゼロとして、200%定率法により減価償却を行っている。なお、保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。

4.のれんは2016年4月1日に他企業を買収した取引から生じたものであり、取得後5年間にわたって効果が見込まれると判断し、定額法で償却している。

5.満期保有目的債券は、2017年4月1日に他社が発行した社債(額面総額¥700,000、利率年1.5%、償還日は2022年3月31日)を額面@¥100につき@¥99の価額で取得したものであり、償却原価法(定額法)で評価している。

6.退職給付引当金の当期繰入額は¥81,000である。

7.すでに費用処理した収入印紙の期末未使用高は¥25,000である。

8.長期借入金は、当期の8月1日に借入期間5年、利率年1.2%、利払いは年1回(7月末)の条件で借り入れたものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。

9.法人税、住民税および事業税について決算整理を行う。仮払法人税等¥18,000は中間納付にかかわるものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。なお、当期の費用計上額のうち¥8,000は、税法上の課税所得の計算にあたって損金算入が認められない。法人税等の法定実効税率は30%である。

10.上記9.の損金算入が認められない費用計上額¥8,000(将来減算一時差異)について、税効果会計を適用する。

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