2級の最後、財務諸表の作成問題です。今回は損益計算書が出題されました。予想をしましたが、今回は2勝2敗でした。外貨建ては入りませんでしたが第2問の商品売買、第3問の損益計算書が一応予想の範囲内でした。
この予想問題は各社の予想とあわせることで、ほぼほぼ100%に近い予想が出ます。直前期にはこの各社の予想問題を一通りやれば合格するのではないでしょうか。
それでは第3問の中身に入っていきます。今回、損益計算書の問題ということで、貸借対照表の勘定科目は一切必要ありません。
市販のテキスト類や問題集には必ず仕訳をして解くような感じになっています。これは、初心者向けに仕訳から解説した方がわかりやすいようにできているからです。
私のブログでは3回にわたって説明をしていきますが、最初の2回は市販と同じように細かい説明をしながら進めていきます。それを踏まえた上で最後の1回は極力仕訳をせずに短時間で攻略する方法を説明いたします。わからなかった場所については最初の2回に戻って確認をしてください。
冒頭に話した通り、損益計算書を作成するにあたっては、損益計算書に関する科目だけ押さえればよいので、貸借対照表の科目は無視することになります。
3級第5問でお話しした財務諸表の解き方に2級のものを加えたものが以下のとおりとなっています。
一、完璧な財務諸表を作成する必要はなく、予想される配点箇所さえ正しく答えることができていれば、スカスカでも得点は望める。
二、決算整理前残高試算表(前T/B)の数字を単に移すだけの箇所は配点にはなっていない。
三、合計は配点箇所ではなく、ひと通り終えた後の検算のためにする作業でしかない。
四、解く前にひと通り問題文を読んで、各小問の関連付けを確認する。その上で、解ける部分から解いていって構わない。
五、作成する財務諸表の勘定科目だけに集中して、仕訳は極力しない。
六、決算整理事項を一つ解いたら、解答用紙にすぐ書き込むこと。
以上のことを考えながら3回目の説明を読んでいってください。それでは、基本編を2回に分けて説明していきます。
問 次の[資料Ⅰ][資料Ⅱ]および[資料Ⅲ]にもとづいて、答案用紙の損益計算書を完成しなさい。なお、会計期間は2018年4月1日から2019年3月31日までの1年間とする。
[資料Ⅰ]
[資料Ⅱ] 未処理事項
1.売掛金¥10,000が回収不能であると判明したので、貸倒れとして処理する。なお、このうち¥4,000は前期の商品販売取引から生じたものであり、残りの¥6,000は当期の商品販売から生じたものである。
2.未決算は火災保険金の請求にかかわるものであるが、保険会社より火災保険金¥500,000の支払いが決定した旨の通知があったので、適切な処理を行う。なお、決算整理前残高試算表に示されている減価償却費¥25,000は、期中に火災により焼失した建物の減価償却費を月割で計上したものである。
3.土地の一部(帳簿価額¥500,000)を売却し、売却代金¥550,000は当座預金としていたが、この取引は未記帳である。
[資料Ⅲ]決算整理事項
1.売上債権の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金は差額補充法によって設定する。
2.商品の期末棚卸高は次のとおりである。棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する。
帳簿棚卸高:数量850個、帳簿価額@¥400
実地棚卸高:数量844個、正味売却価額@¥395
3.有形固定資産の減価償却は次の要領で行う。
建物:建物は当期の8月1日に取得したものであり、耐用年数は40年、残存価額はゼロとして、定額法により月割で減価償却を行う。
備品:耐備品は数年前に取得したものであり、耐用年数10年、残存価額はゼロとして、200%定率法により減価償却を行っている。なお、保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。
4.のれんは2016年4月1日に他企業を買収した取引から生じたものであり、取得後5年間にわたって効果が見込まれると判断し、定額法で償却している。
5.満期保有目的債券は、2017年4月1日に他社が発行した社債(額面総額¥700,000、利率年1.5%、償還日は2022年3月31日)を額面@¥100につき@¥99の価額で取得したものであり、償却原価法(定額法)で評価している。
6.退職給付引当金の当期繰入額は¥81,000である。
7.すでに費用処理した収入印紙の期末未使用高は¥25,000である。
8.長期借入金は、当期の8月1日に借入期間5年、利率年1.2%、利払いは年1回(7月末)の条件で借り入れたものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。
9.法人税、住民税および事業税について決算整理を行う。仮払法人税等¥18,000は中間納付にかかわるものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。なお、当期の費用計上額のうち¥8,000は、税法上の課税所得の計算にあたって損金算入が認められない。法人税等の法定実効税率は30%である。
10.上記9.の損金算入が認められない費用計上額¥8,000(将来減算一時差異)について、税効果会計を適用する。
未処理事項1 貸倒れの処理
問 売掛金¥10,000が回収不能であると判明したので、貸倒れとして処理する。なお、このうち¥4,000は前期の商品販売取引から生じたものであり、残りの¥6,000は当期の商品販売から生じたものである。
前期の商品売買における貸倒れ4,000円については、前期末に積み立てた貸倒引当金6,000円を使うことができます。
ところが、当期の商品売買における貸倒れ6,000円については、引当金を積み立てていないので貸倒引当金がまだ2,000円余っていたとしても、使うことができず、貸倒損失(費用)で全額処理します。
【未処理事項の仕訳】
(貸倒損失)6,000/
売掛金と貸倒引当金については、決算整理事項の1.の処理に影響を及ぼします。残高をしっかり控えておきましょう。
売掛金:550,000(前T/B)-10,000(未処理事項1)=540,000円
貸倒引当金:6,000(前T/B)-4,000(未処理事項1)=2,000円
未処理事項2 未決算の清算
問 未決算は火災保険金の請求にかかわるものであるが、保険会社より火災保険金¥500,000の支払いが決定した旨の通知があったので、適切な処理を行う。なお、決算整理前残高試算表に示されている減価償却費¥25,000は、期中に火災により焼失した建物の減価償却費を月割で計上したものである。
建物が火災により焼失したため、保険会社に火災保険金を請求しました。そのときの仕訳が以下のとおりとなります。
【保険金請求時の処理】(前T/B処理済み)
(未決算)600,000/(建物)600,000
※減価償却累計額は不明ですが、特に問題に支障がないためこの仕訳としています。
そして今回、保険金が500,000円下りてくることが確定しました。そのため、見積もっていたものよりも100,000円少なかったので、火災損失(費用)または災害損失(費用)で処理します。
第3問については、問題文中に勘定科目の指定がないのと、前T/B・解答用紙の損益計算書に該当する勘定科目が記載されていないため、どちらでも正解となります。
【未処理事項の仕訳】
(未収入金)500,000/(未決算)600,000
(火災損失)100,000/
※今回は、火災損失で処理しています。
「なお、前T/Bに示されている減価償却費~」の件は、月割で減価償却済みなので、今回の仕訳で減価償却が不要であることを意味しています。
未処理事項3 土地の売却
問 土地の一部(帳簿価額¥500,000)を売却し、売却代金¥550,000は当座預金としていたが、この取引は未記帳である。
土地500,000円が550,000円で売れたので、50,000円利益が出ました。この場合、利益分については固定資産売却益(収益)または土地売却益(収益)で処理します。
【未処理事項の仕訳】
(当座預金)550,000/(土地)500,000
/(固定資産売却益)50,000
※今回は、固定資産売却益で処理しています。
決算整理事項1 貸倒引当金の設定
問 売上債権の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金は差額補充法によって設定する。
未処理事項の仕訳に気をつけながら売掛債権に対して、新たな貸倒引当金の設定を行います。今回の売掛債権は受取手形(資産)と売掛金(資産)となります。売掛金のみで計算しないように気をつけましょう。
おさらいしますが、売掛金540,000円、貸倒引当金2,000円に残高が変更されています。設定方法は差額補充法によります。
貸倒引当金:(360,000(前T/B受取手形)+540,000(未処理事項1の売掛金))×2%=18,000円
貸倒引当金繰入:18,000円(上の行より)-2,000円(未処理事項1より)=16,000円
【決算整理事項1の仕訳】
決算整理事項2 売上原価の算定
問 商品の期末棚卸高は次のとおりである。棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する。
帳簿棚卸高:数量850個、帳簿価額@¥400
実地棚卸高:数量844個、正味売却価額@¥395
まずは、3級と同じように「仕・繰・繰・仕」の仕訳を行います。
(繰越)商品期首棚卸高:220,000(前T/B繰越商品)
(繰越)商品期末棚卸高:@¥400×850個=340,000(資料Ⅲ.2帳簿棚卸高)
棚卸減耗損と商品評価損については、以下の式もしくは図を使って計算します。
棚卸減耗損:@¥400×(850個-844個)=2,400円
商品評価損:(@¥400-@¥395)×844個=4,220円
【決算整理事項2の仕訳】
(仕入)220,000/(繰越商品)220,000
(繰越商品)340,000/(仕入)340,000
(棚卸減耗損)2,400/(繰越商品)2,400
(商品評価損)4,220/(繰越商品)4,220
決算整理事項3 有形固定資産の減価償却
問 有形固定資産の減価償却は次の要領で行う。
建物:建物は当期の8月1日に取得したものであり、耐用年数は40年、残存価額はゼロとして、定額法により月割で減価償却を行う。
備品:耐備品は数年前に取得したものであり、耐用年数10年、残存価額はゼロとして、200%定率法により減価償却を行っている。なお、保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。
建物の減価償却費
取得日(8月1日)から決算日(3月31日)まで8か月分の減価償却を定額法にて行います。
建物の減価償却費:3,000,000(前T/B建物)÷40年×8か月分/12か月分=50,000円
備品の減価償却費
200%定率法は、その名の通り通常の定率法の2倍の償却率を使うものです。
償却率の計算式:1÷耐用年数×200%
本問では耐用年数が10年ですから償却率は以下の通りとなります。
∴1÷10年×200%=0.2
これに基づいて減価償却費を計算すると以下の通りです。
定率法の計算方法:(取得原価-減価償却累計額)×償却率
備品の減価償却費:(900,000-324,000)×0.2=115,200円
ところで、問題文には気になる数字が付け加えられています。
「保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。」
これがある場合には、もう一つ確認作業が増えます。
①「200%定率法での償却」と②「取得原価×保証率」を比較して、
①<②だった場合、改定償却率を用いて計算しなければならなくなります。
「(取得原価-減価償却累計額)×改定償却率」
それでは、②の計算式を計算してみます。
∴900,000×0.06552=58,968円
その結果、①115,200円>②58,968円のため、①の数字が備品減価償却累計額となります。
【決算整理事項3の仕訳】
(減価償却費)165,200/(建物減価償却累計額)50,000
/(備品減価償却累計額)115,200
決算整理事項4 のれんの償却
のれんの問題文により償却年数は5年となっています。そして、2016年4月1日から2018年3月末まで2回の決算期を経ていますから、3年分の償却が残っています。
2018年度の減価償却はこれからですから、残りの償却年数を間違えないようにしましょう。なお、のれんの償却は直接法で行います。
のれん償却:240,000(前T/B)÷3年=80,000円
【決算整理事項4の仕訳】
(のれん償却)80,000/(のれん)80,000
決算整理事項5からは次回とします。