ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

サービス業の損益計算書①~決算整理事項その1~

2級簿記おまけ第1回はサービス業の損益計算書(第3問対策)です。資料は、サンプル問題を使用します。

本編と同様に、始めは通常どおりの説明を行ってから、実際の解き方をやっていきます。また、決算整理事項を1~4、5~9の2回に分けます。問題も長くなるのでその分だけ小出しにしていきます。

それでは、問題から…

 【資料Ⅰ】決算整理前残高試算表と、次の事業の内容の説明および【資料Ⅱ】決算整理事項にもとづいて、損益計算書を作成しなさい。

【資料Ⅰ】決算整理前残高試算表

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[事業の内容]

XYZサービスは、事業作業、コンピュータ・オペレーション等を中心とした人材派遣業を営んでいる。顧客への請求と役務収益への計上は①1時間当たりの請求額が契約上定められており勤務報告書に記入された時間にもとづき請求・計上するものと、②一定の作業が完了後に一括して契約額総額を請求・計上するものと2つの形態がある。派遣されたスタッフの給与は、いずれの形態であっても勤務報告書で報告された時間に1時間当たりの給与額を乗じたもので支払われ、役務原価(報酬)に計上される。①の形態の場合には、1時間当たりの給与額は顧客への請求額の75%で設定されているが、②の形態にはそのような関係はなく別々に決められる。

【資料Ⅱ】 決算整理事項

1.売掛金の中に前期発生と当期発生で回収が遅延していたものが、それぞれ600千円と1,000千円含まれており、回収の可能性がないものと判断して貸倒れ処理することとした。

2.仕掛品は2月末に「事業の内容」に記述された②の形態の給与を先行して支払ったものであるが、3月に請求(売上計上)されたため、役務原価に振り替える。また、この②の形態で、4月以降に請求(売上計上)されるものに対する3月給与の支払額で役務原価に計上されたものが1,600千円ある。

3.[事業の内容]に記述された①の形態で、勤務報告書の提出漏れ(勤務総時間100時間、1時間当たり給与750円)が発見され、これを適切に処理することとした。

4.貸倒引当金を差額補充法により売掛金残高の0.5%計上する。 

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[事業の内容]という前置きがすごく長いので読むのが嫌になりそうな問題です。日商簿記は国語の問題ということで、解答に必要のない文章をもっともらしく付け加えてあえて長文にするのが好きなようです。

まずは、この部分を整理していきましょう。

①は、時給に基づいて毎月給与が出るタイプです。重要な点は、以下の通りです。

⑴役務収益(売上計上)の75%が役務原価(給与)になっている。

⑵勤務報告書が仕上がったと同時に役務収益に計上される

②は、仕事の完了後にまとめて支払われるタイプです。

サービス業の経理では、仕事を完了するまでは役務原価(費用)にすることはできず、いったん仕掛品(資産)として計上することとなります。仕事完了後に改めて仕掛品役務原価に振り替えます。②はこれを押さえておけば十分です。

決算整理事項3 ①の形態の処理

順不同となりますが、給与形態①から始めます。

問題では勤務報告書が漏れていたということです。こんなことあったら、給与不払いで訴えられますけど、簿記の世界なのでこういう単純ミスが普通におきます。

見つかった勤務報告書では時給750円×100時間=75,000円の経理漏れがあったので、⑵により、それを仕訳します。千円単位となっていますので以下の通りとなります。

(役務原価)75/(未払金)75

通常は未払給料(負債)ですが、勘定科目にないので未払金(負債)で処理します。

次に、⑴から役務収益も同時に計上しなければなりません。役務原価75%に対して役務収益100%ですから、役務収益は100千円となります。サンプル問題なので、わかりやすい数字を使ってくれています。

【正解の仕訳】

(役務原価)75/(未払金)75

売掛金)100/(役務収益)100

決算整理事項2 ②の形態の処理

これも実際にはありえませんが、仕訳が1か月分ズレています。(2月分発生)3月給与の役務原価への振り替えがしてなくて、まだ処理しなくてもいい(3月分発生)4月分給与を役務原価にしてしまっているということです。

3月給与1,400千円(前T/B)を仕掛品から役務原価へ振り替え、4月分給与1,600千円を

役務原価から仕掛品に振り替えます。

【正解の仕訳】

(役務原価)1,400/(仕掛品)1,400

(仕掛品)1,600/(役務原価)1,600

サービス業の損益計算書といっても、この2問だけで、後は通常通りの損益計算書の作成となります。

決算整理事項1 貸倒れの処理

貸倒引当金の処理を問う問題です。貸倒引当金を使っていいのは前期分だけです。当期の貸倒れについては、一発で貸倒損失(費用)となります。

貸倒引当金の残高は1,100千円なので、前期分600千円はすべて貸倒引当金で処理できます。

【正解の仕訳】

(貸倒引当金)600/(売掛金)1,600

(貸倒損失)1,000/

決算整理事項4 貸倒引当金の設定

前提として、決算整理事項1で貸倒引当金残高は、

1,100千円(前T/B)-600千円=500千円となっています。

また、売掛金残高も決算整理事項1と3で、

740,500(前T/B)-1,600(整理事項1)+100(整理事項3)=739,000千円となっています。

したがって、貸倒引当金は以下の計算となります。

∴739,000千円×0.5%-500千円=3,195千円

【正解の仕訳】

(貸倒引当金繰入)3,195/(貸倒引当金)3,195

 

このブログでは、部分点を重視しているためわかるところから先に解くのが定石となっています。しかしながら、このように決算整理事項の前後関係によっては、正解が異なってしまうので注意が必要です。

次回は決算整理事項5から9まで説明していきます。