今までのブログを見て頂いている方は、もうお馴染みとなっていますが、以下の原則に従って問題を解いていきます。
①損益計算書の作成のときは、損益科目(収益及び費用)のみに注視する。
②わかるものから解いていく。
③時間がないときは、全ての答えがあってなければ解けない当期純利益に関する問題は捨てる。
問題を載せると本題に入るまでひたすらスクロールしなければならないので、前回以前のを参照してください。
決算整理事項2・3 役務収益と役務原価の計上
この2問はセットなので、いっぺんに解きます。
まず、決算整理事項2の給与形態②からです。問題文では、「前T/Bの金額を役務原価に振り替える」となっていますから、その分を足します。そして、後半部分で「(誤って)計上されたものが1,600千円ある。」となっていますのでその分を差し引きます。また、いずれの形態であっても役務原価(報酬)で処理すると書かれています。
役務原価(報酬):2,711,000千円(前T/B)+1,400千円(仕掛品前T/B)-1,600千円=2,710,800千円
ここまでで半分です。引き続き決算整理事項3の給与形態①を解きます。役務原価の追加として①の給与支払分を計算します。
①の給与支払分:@750円×100時間=75千円
役務原価(報酬):2,710,800千円+75千円=2,710,875千円
続いて、役務収益(収益)の計算です。サービス業の損益計算書①で述べた通り、役務収益の75%を役務原価としています。今回は暗算でもできますが、逆算すれば役務収益が出ます。
追加分の役務収益:75千円×100(%)/75(%)=100千円
役務収益:3,725,000千円(前T/B)+100千円=3,725,100千円
ちなみに役務原価(その他)は、特に関係する仕訳がないので前T/Bの金額そのままです。
役務原価(その他):42,000千円
それでは、その部分を解答用紙にすぐ記入します。
時間のない方で法人税部分を捨て問とする場合は赤字の部分だけで結構です。最近の問題で合計欄(黒字の部分)が採点箇所となったことは見たことがありません。
また、残高試算表の数字をそのまま記述する箇所も間違いなく採点にはならないので、役務原価(その他)の数字も記入を飛ばして結構です。
決算整理事項1・3 貸倒れと貸倒引当金の計上
まず、前問で役務収益の仕訳は以下の通りでした。
(売掛金)100/(役務収益)100
ここで売掛金残高が100千円増えていることを押さえておきましょう。これを忘れるとここのセクションは不正解となってしまいます。
まずは、前T/B貸倒引当金残高を確認します。1,100千円あるので、前期発生分をすべて取り崩すことができることを確認できます。
そして、当期分1,000千円についてはすべて貸倒損失(費用)となります。
貸倒損失:1,000千円
あとは、貸倒引当金繰入(費用)の計算です。
貸倒引当金残高:1,100千円(前T/B)-600千円=500千円
売掛金残高:740,500千円(前T/B)-600千円(前期分貸倒れ)-1,000千円(当期分貸倒れ)+100千円(決算整理事項1より)=739,000千円
貸倒引当金繰入:739,000千円×0.5%-500千円=3,195千円
決算整理事項5 前払費用と未払費用の処理
問題文により元になっている勘定科目を見ます。前払費用は支払家賃(前払家賃)、未払費用は水道光熱費(未払水道光熱費)となっています。
まずは下の図を参考にします。
前期分(再振替仕訳)の場合には、そのまた逆となります。これにしたがって計算します。
支払家賃:180,000千円(前T/B)+13,000千円(前払費用前T/B)-17,000千円(当期分)=176,000千円
水道光熱費:3,200千円(前T/B)-400千円(未払費用前T/B)+450千円(当期分)=3,250千円
決算整理事項6・7 減価償却費とソフトウェア償却
2つとも似たような内容なので、一緒に説明します。
(備品の)減価償却費:184,000千円(前T/B)÷8年=23,000千円
ちなみに期首に購入していないときは、月割計算が必要となります。
次にソフトウェアです。
旧ソフトウェアの償却額:18,000千円÷2年×10か月/12か月=7,500千円
ソフトウェア除却損:18,000千円-7,500千円=10,500千円
新ソフトウェアの償却額:120,000千円÷10年×2か月/12か月=2,000千円
計算は120,000千円×2か月/120か月としてもOKです。
ソフトウェア償却:7,500千円(旧)+2,000千円(新)=9,500千円
除却というものはめったに起きることではないので、特別損失に該当します。
決算整理事項8 引当金の処理
⑴の退職給付引当金の相手勘定は退職給付費用でしたね。ただし、この問題については、そのまま書き写す性格のものなので採点にはならないでしょう。
退職給付費用:7,000千円
⑵の賞与引当金繰入については、支給見込み額が128,000千円ということなので、このままの金額となります。前回のような仕訳も不要です。
賞与引当金繰入:128,000千円
上でも述べた通り、急ぎの方は退職給付費用の記入は不要です。
ここまでで最低でも16点は取れています。もしかしたら売上総利益の部分だけでも採点箇所になってるかもしれません。あとは法人税、住民税及び事業税の部分か当期純利益の部分で2点が予想されます。
ここで時間を十分に余している方は、次に進みましょう。残った空欄を前T/Bより抜き出して、税引前当期純利益を計算します。
すると税引前当期純利益は、300,400千円になります。それに40%掛けたものが法人税、住民税及び事業税となります。
法人税、住民税及び事業税:300,400千円×40%=120,160千円
当期純利益:300,400千円-120,160千円=180,240千円
すべてまとめたものが以下のものとなります。
最後に
この損益計算書の作成は第3問簿記検定の山場です。ところが1問2点全20点(採点10箇所)となっています。当期純利益は、今までのすべての答えが正解しなければたどり着けないボーナス点のようなものです。この2点を追うのか、それとも捨てて別の問題の検算に回るのかが、簿記の戦術といえるものです。
ちなみに第1問の仕訳問題は1問4点となっています。この部分は、記憶違いや計算違いなどのケアレスミスが起きやすく、間違えると大変手痛い減点となってしまいます。もし、20分程度しか残されていないときは、第3問の完成を捨てて、第1問の確認をすることをお勧めいたします。簿記検定は70点合格のため、30点は間違えることができます。
その点も考えながら検定試験に臨んでほしいと思います。