ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

156回日商簿記2級の解答について~第3問 連結貸借対照表の作成②~

今回は[資料3]の連結修正仕訳を中心に解説いたします。

 

[資料3]P社とS社の連結に際し、必要となる事項

1.P社は、X1年4月1日にS社の発行済株式総数の60%を400,000千円で取得し、これ以降S社を連結子会社とし、連結財務諸表を作成している。X1年4月1日時点でのS社の純資産の部は、次のとおりであった。

資本金 150,000千円

資本剰余金(すべて資本準備金) 150,000千円

利益剰余金(すべて繰越利益剰余金) 130,000千円

2.のれんは、発生年度から10年間にわたり定額法で償却を行っている。

3.S社は、前期は配当を実施していないが、当期は繰越利益剰余金を財源に25,000千円の配当を実施した。

4.前期よりP社より商品をS社に販売しており、前期・当期とも原価に30%の利益を加算して単価を決定している。当期におけるP社の売上高のうち、S社向けの売上高は91,000千円である。また、S社の期首商品のうち3,900千円および期末商品のうち6,500千円はP社から仕入れたものである。

5.S社は保有している土地90,000千円を決算日の直前に80,000千円でP社に売却しており、P社に売却しており、P社はそのまま保有している。未実現利益を全額相殺消去すること。

6.連結会社(P社およびS社)間での当期末の債権債務残高は、次のとおりである。なお、P社・S社とも、連結会社間の債券に関して、貸倒引当金を設定していない。

【P社のS社に対する債権債務】

売掛金 7,000千円

未払金 80,000千円

【S社のP社に対する債権債務】

買掛金 7,000千円

未収入金 80,000千円

7.退職給付に関し、連結にあたり追加で計上すべき事項は生じていないため、P社およびS社の個別上の数値をそのまま合算する。

X3年度の開始仕訳

 ①投資と資本の相殺仕訳

資本金+資本剰余金+利益剰余金=430,000千円がS社の純資産合計です。この60%分258,000千円を子会社株式(資産)として400,000千円で購入しました。残りの40%172,000千円非支配株主持分(純資産)となります。

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のれん(資産)は、400,000千円(購入)-258,000千円(元値)=142,000千円となります。

【仕訳】

(資本金)150,000/(子会社株式)400,000

(資本剰余金)150,000/(非支配株主持分)172,000

(利益剰余金)130,000/

(のれん)142,000/

②のれんの償却

次にのれんを10年で償却(定額法)します。

のれん償却:142,000千円÷10年=14,200千円

現在作業しているものは過去の取引についてです。過去の決算は終えてますので、その結果は利益剰余金に組み込まれています。したがって損益科目に関するものはすべて利益剰余金(純資産)として処理します。

なお、貸借対照表科目については、そのままの勘定科目を使用します。

【仕訳】

(利益剰余金(のれん償却))14,200/(のれん)14,200

③子会社の当期純損益の振り替え

X2年末の子会社の損益について、P社と非支配株主持分に振り替える作業です。

まずは以下の表をご覧ください。資料等でわかるものだけ表示しています。

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ここからX2年末の利益剰余金を出します。当期は配当金25,000千円を支出していますので、まずはその配当金を元に戻します。

X2年末の利益剰余金:211,200千円+25,000千円=236,200千円

次に元々あったX1年度の利益剰余金を差し引くと、X2年度の当期純損益がわかります。

X2年度の純損益:236,200千円-130,000千円=106,200千円(純利益)

このうち40%は非支配株主持分(純資産)のものとなりますので、その分を差し引くこととなります。相手勘定は、非支配株主に帰属する当期純利益ではなく、利益剰余金(純資産)です。

非支配株主持分の計上分:106,200千円×40%=42,480千円

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【仕訳】

(利益剰余金)42,480/(非支配株主持分)42,480

④開始仕訳

①~③の仕訳を合算したものが開始仕訳となります。

【連結修正仕訳】

(資本金)150,000/(子会社株式)400,000

(資本剰余金)150,000/(非支配株主持分)214,480

(利益剰余金)127,800/

(のれん)127,800/

※正確には「資本金当期首残高」とか入れないとならないのですが、書くと長いし、解答に意味がないので省いています。連結精算書には出てくる場合があるのでそのときは書きます。(マル首とか書いてわかるようにします。)その後の「非支配株主持分当期変動額」とかも記入するには長すぎます。実際の記入では、非支配株主持分を「非株」、非支配株主に帰属する当期純利益を「非帰」と略称で書くと時間短縮ですね。仕訳のメモ書きで正式名称で書く人いないと思いますが…

のれんの償却

時を戻して当期の仕訳をします。まずはのれん償却からです。開始仕訳で行ったものと同じ金額です。

なお、のれん償却(費用)は試算表にはありますが解答用紙にはなく、販売費及び一般管理費(費用)となっています。

したがって計算では試算表の勘定科目を使い、解答用紙にある勘定科目で記入することとなります。

【連結修正仕訳】

(販売費及び一般管理費)14,200/(のれん)14,200

子会社の配当金の修正

S社は当期25,000千円の配当金を以下の仕訳で支出しています。

(繰越利益剰余金)25,000/(現金預金)25,000

P社はそのうち15,000千円を受け取っています。

(現金預金)15,000/(受取配当金)15,000

残り10,000千円は非支配株主持分に流れています。そして、この一連の流れを一つの仕訳(連結)にまとめてみると以下のとおりとなります。

なお、P社とS社間の現金預金の行き来は相殺されます。

(繰越利益剰余金)25,000/(受取配当金)15,000

            /(非支配株主持分)10,000

この取引は一種の内部取引となりますので、逆仕訳をして無かったことにします。

こちらも解答用紙は繰越利益剰余金(純資産)ではなく、利益剰余金(純資産)となっています。

【連結修正仕訳】

(受取配当金)15,000/(利益剰余金)25,000

(非支配株主持分)10,000/

内部取引高の相殺消去(ダウンストリーム)

P社からS社への商品移動ですので、ダウンストリームとなります。ダウンストリームでは、P社の財産がS社に流れるため、S社の非支配株主にとやかく言われる筋合いはありません。ということで普通の仕訳となります。

①売上高と売上原価の相殺消去

[資料3]4.より91,000千円の売上はS社に対してのものなので、内部取引として逆仕訳で相殺消去します。

【連結修正仕訳】

(売上高)91,000/(売上原価)91,000

②内部利益の相殺消去

商品在庫には、30%の利益加算が行われています。したがって、その内部利益は期首商品・期末商品ともに原価に戻します。

期首商品の内部利益:3,900千円×0.3/1.3=900

前期の利益なので利益剰余金から減額します。相手勘定は売上原価(費用)となります。「仕繰繰仕」の期首商品は最初の「仕」で今年度の売上原価に加算されていますからその分減額します。

期末商品の内部利益:6,500千円×0.3/1.3=1,500

当期の在庫は「商品」として加算されています。また、「仕繰繰仕」の最後の「仕」で今年度の売上原価に減算されていますので、その分増額します。

【連結修正仕訳】

(利益剰余金)900/(売上原価)900

(売上原価)1,500/(商品)1,500

内部取引高の相殺消去(アップストリーム)

S社からP社への土地の移動です。これは、S社の(非持分)株主も「ちょっと待て!」となります。

S社の90,000千円の土地を10,000千円安くしてP社に売り渡しました。S社がその分損をする(土地売却損)こととなります。この穴埋めは、P社と非支配株主とで被ることとなります。

非支配株主は10,000千円×40%=4,000千円を非支配株主持分から差し引くこととなります。

【S社の売却時の仕訳】

(現金預金)80,000/(土地)90,000

(土地売却損)10,000/

(非支配株主持分)4,000/(非支配株主に帰属する当期純利益)4,000

ここまでよろしいでしょうか。

今回連結決算で、この売買は内部取引なので、無かったことにする仕訳が必要となります。

現金預金は相殺しても、連結決算には影響はありませんので無視です。土地は90,000千円から80,000千円に値下げしたので、その分を土地売却損と相殺します。

【連結修正仕訳】

(土地)10,000/(土地売却損)10,000

(非支配株主に帰属する当期純利益)4,000/(非支配株主持分)4,000

債権債務の相殺消去

[資料3]6.の項目はP⇒S、S⇒P、いずれも同額ですのでそのまま逆仕訳をして相殺消去します。

【連結修正仕訳】

(買掛金)7,000/(売掛金)7,000

(未収入金)80,000/(未払金)80,000

退職給付の件

P社とS社の退職給付引当金を合算するだけです。解答用紙は、退職給付に係る負債(負債)という勘定科目になっています。

子会社の当期純損益の振り替え

どこの段階でやってもOKですが、一番大掛かりな利益剰余金非支配株主持分については、時間がないときは捨て問となりますので、最後に持ってきています。

[資料3]のどこにも書かれていないので、忘れがちになりそうですが、今年度の利益の山分けは非常に重要です。

ブログ内ではわかりやすく親会社社長と非支配株主(非株くん)は共同経営者として考えます。損をしたときは共同で負担し、得をしたときは二人で分け合います。

ということで子会社の当期純損益をP社と非支配株主で分け合います。

[資料1]の文中にS社は決算整理後残高試算表と書かれています。つまり決算が終わっているので、ここからS社の損益計算書を作成します。

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収益合計546,900千円(売上)

費用合計:275,500千円(売上原価)+192,700千円(販管費)+10,000千円(土地売却損)=478,200千円 

当期純利益:546,900千円-478,200千円=68,700千円

この当期純利益の40%を非支配株主持分(純資産)に振り替えます。

非支配株主への振替額:68,700千円×40%=27,480千円

【連結修正仕訳】

(非支配株主に帰属する当期純利益)27,480/(非支配株主持分)27,480

 

以上ですべての修正仕訳が完了しました。これを踏まえて次回解答用紙への記入の解説をします。