ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

契約負債と契約資産

今回は、前回説明した「収益の認識基準」が実際の仕訳問題にどのように出てくるかということを中心に説明していきます。

契約負債

契約負債(負債)とは、お客さまに商品やサービスの提供をする前に現金等で対価を受け取った際に処理する勘定科目です。いわゆる前受金ですね。

 

なお、お客さんとの契約から生じた債権(売掛金)は、ここに含めることはできません。

 

ここでは、前回の【事例】をもとに説明します。

 

【事例】

以下の契約内容に基づき、①×1年4月1日(契約時・商品の引き渡し時・代金受領時)、②×2年3月31日(決算日)、③×3年3月31日(決算日・保守サービス終了時)の仕訳をしなさい。

  1. (株)マーズ設備(会計年度4月1日~翌3月31日)は、×1年4月1日に冷蔵庫の販売と2年間の保守サービスを提供する1つの契約を締結した。
  2. 当社は、契約同日(×1年4月1日)に冷蔵庫を引き渡し、2年間の保守サービスを行う。
  3. 契約書に記載された対価の額は、250,000円(商品の対価は220,000円、保守サービスの対価は30,000円)である。
  4. 商品の引き渡し時に対価250,000円を現金で受け取る。
①契約時の仕訳

まずは、冷蔵庫220,000円の商品を引き渡して、現金250,000円を受け取っています。

差額については、保守サービスの前受金になりますので、これは契約負債(負債)で処理します。

 

(現金)250,000 /(売上)220,000

         /(契約負債)30,000

②1年目の決算日(×2年3月31日)の仕訳

契約負債がなくなれば、保守サービスの義務を免れることとなります。2年で30,000円ですから、まずは1年分の15,000円売上(収益)に計上します。

 

(契約負債)15,000/(売上)15,000

③2年目の決算日・保守サービス終了日(×3年3月31日)の仕訳

②で残った15,000円売上(収益)に計上すれば、この一連の取引は終了となります。

 

(契約負債)15,000/(売上)15,000

 

ちなみに実際の問題では使える勘定科目が制限される可能性はありますが、前受金(負債)で処理しても構わないこととされています。

実務上では、あまり多くの勘定科目を使うことは事務作業の煩雑化(わかりにくくなる)になってしまうのと、確定申告書の記入できる行数に制限があるので、たぶん前受金で処理する事業者さんが多いでしょうね。正直この勘定科目いるか?と思ってしまいます。

自分でも、よく勘定科目を細かく使い分けてると、「この取引の時は何使ってたっけ?」と度忘れしてしまうこともしばしばあります。一例上げれば、事務用品費消耗品費の別です。スタンプ印やボールペン、クリップなど事務で使うものは事務用品費で、それ以外の工具・蛍光灯・電池代などは消耗品費とするのですが、まとめて消耗品費一本の方がいいので、私はそちらで経理しています。

また、どうしても会社で分けて経理したいときは、電子会計では補助科目という便利な機能が付いていますので、消耗品費(事務用品費)・消耗品費(その他)とかにすれば、多少間違えても確定申告書の記載はどちらも同じ消耗品費となりますので、問題なしとなります。

契約資産

契約資産(資産)とは、お客さんに商品やサービスの提供をしたにもかかわらず、まだ対価を受け取っていない場合に、後から受け取れる権利として処理する勘定科目をいいます。

これは、売掛金(資産)や未収入金(資産)といいたいところですが、その科目は使うことができません。ここは、【事例】を使って説明したいと思います。

 

【事例】

以下の契約内容に基づき、①4月15日(パソコンラックの引き渡し時)、②4月30日(パソコンの引き渡し時)、③5月31日(代金受領時)の仕訳をしなさい。

  1. パソコンラックの対価は50,000円、パソコンの対価は150,000円とする。
  2. パソコンラックは4月15日に引き渡し、パソコンは4月30日に引き渡す。
  3. パソコンラックの支払いは、パソコンの引き渡しが完了するまで、権利が留保される。(パソコンラックとパソコンの両方の引き渡しが完了するまで、対価に関する無条件の権利はない。)
  4. 5月31日に上記契約の代金を現金で受け取った。

 

この2つはセット販売なので、両方が手元に届かないと契約成立にはなりません。パソコンラックだけもらっても意味がないからです。もし、パソコンラックだけ先に到着して、パソコンが届かなかったときは、初めからさかのぼって契約解除となりますので、お客さんはパソコンラックを返却して取引終了となります。(損害賠償は別の問題として…)

そのため、売掛金(資産)や未収入金(資産)などの確定した権利としての勘定科目を使用することはできないのです。

①パソコンラックの引き渡し時の仕訳

商品50,000円のものが店頭からなくなりますので、売上(収益)で処理します。相手勘定は、契約資産(資産)で処理します。

 

(契約資産)50,000/(売上)50,000

②パソコンの引き渡し時

この時点で、セット販売の義務は果たせましたので、パソコンの売上代金と①で計上したパソコンラックの売上代金を合計した金額を売掛金(資産)(←確定した権利)として処理します。

 

売掛金)200,000/(売上)150,000(←パソコンの代金)

          (契約資産)50,000(←パソコンラックの代金)

③代金受領時

あとは、売掛金(資産)の決済だけです。

 

(現金)200,000/(売掛金)200,000