第1問の4 外貨建取引
問 ×年8月1日、1か月前の7月1日の輸入取引によって生じた外貨建ての買掛金40,000ドル(決済日は×年9月30日)について、1ドル¥110で40,000ドルを購入する為替予約を取引銀行と契約し、振当処理を行うこととし、為替予約による円換算額との差額はすべて当期の損益として処理する。なお、輸入取引が行われた×年7月1日の為替相場(直物為替相場)は1ドル¥108であり、また本日(×年8月1日)の為替相場(直物為替相場)は1ドル¥109である。
以前、経済学で「裁定」の話をしました。一応参考までに…。
買掛金は負債なので、決済日に値上がりしてしまうと、よけいに多く支払わなければならないことになります。そのため、本問では為替予約を使ってリスク回避(リスクヘッジ)を行っています。
まずは取引時(7月1日)の仕訳を考えます。
買掛金:40,000ドル×108円=4,320,000
*取引時の仕訳*
(仕入)4,320,000/(買掛金)4,320,000
そして、8月1日には、決済のときに1ドル110円で取引を行うよう為替予約をしているので、買掛金を計算しなおす必要があります。
新たな為替相場は110円なので、決済時にはこんな仕訳になるはずです。
新しい買掛金の金額:40,000ドル×110円=4,400,000
*決済時の仕訳*
(買掛金)4,400,000/(現金など)4,400,000
これでは買掛金が合わないので、為替予約時に1ドルにつき2円増やす仕訳をしなければなりません。そして、相手勘定には為替差損益で処理します。為替差損益は借方に残高がある場合は費用となり、貸方に残高がある場合は収益となります。たまにこのような収益か費用かの判断は残高によるものも登場するので注意が必要です。
買掛金の値上がり分:(108円-110円)×40,000ドル=▲80,000(赤字=費用)
*正解の仕訳*
(為替差損益)80,000/(買掛金)80,000
これで、決済時に相場が110円以上に上がっても、気にする必要がなくなりました。なお、これが108円に下がったとしても、予想が外れただけなので、買掛金を元に戻すことはできません。
第1問の5 株式の発行(新規)
問(1)会社の設立にあたり、発行可能株式総数10,000株のうち2,500株を1株当たり¥40,000で発行し、その全額について引受けと払込みを受け、払込金は当座預金とした。なお、会社法が認める最低限度額を資本金として計上する。
まずは、払込金総額を計算します。
当座預金への払込金:2,500株×40,000円=100,000,000円(1億円)
この1億円について会社法が認める最低限度額を資本金にする必要があります。払込金については、全額~50%までを資本金にしなければなりません。
この最低限度額という文言が出た場合は、原則、資本金(純資産)と資本準備金(純資産)の半々で処理することになります。まれに、勘定科目一覧に資本準備金がないときや問題文で別段与えられている条件があるときには、その他資本剰余金(純資産)で処理することがあります。
*正解の仕訳*
(当座預金)100,000,000/(資本金)50,000,000
(資本準備金)50,000,000
問(2)上記(1)の会社の設立準備のため発起人が立て替えていた諸費用¥300,000を現金で支払った。
会社が実際に動き出すまでの準備にかかった諸費用は、2種類あります。
まずは、設立準備から創立総会までの間の諸費用は創立費(資産)、創立総会後、開業までの間の諸費用は開業費(資産)で処理します。
その他似たようなものに株式交付費(資産)がありますが、こちらの方は、開業後に増資などで株式を発行した場合の諸費用となります。
こちらの3種類は、費用(○○費)でありながら資産の形をとる繰延資産として使われます。減価償却費のように、5年(創立費・開業費)または3年(株式交付費)に分けて費用にすることができます。
なぜ、そんな繰延資産のような形をとるのかというと、設立当初は会社の運営が安定せず、収益が少なくなりことが予想されるため、多額の費用が最初にまとめて計上されると、決算のときに赤字になりかねないからです。これを防ぐために、数年にわたって費用計上することによって、減税効果が見込まれ、開業したての企業を支援する形になるからです。
今回は、設立準備となっているので、創立費(資産)で処理します。
*正解の仕訳*
(創立費)300,000/(現金)300,000
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