いよいよ、最後の問題です。150回以来の普通の貸借対照表です。なかなか、サービス業や製造業が出題されないので、また次回以降に持ち越しです。
貸借対照表のスタンダードな解き方は、決算整理仕訳をしっかり行ってから、貸借対照表に必要なものを抜き取って完成させます。しかし、この方法では、時短にならないし、他社とあまり変わらないので、自分の方法で解説します。
貸借対照表の作成に必要なのは、基本的に資産・負債・純資産の3項目だけです。また、本問を除く第1問から第5問までで十分貯金をしている方には、12~16点取れればいいので、満点目指す方法もしていません。
特に初めて試験を受ける方は、ペース配分の調整が難しいので、時短の方法を教えてから、時間が余るようであれば、損益項目を解く方法に徹しています。そこら辺を踏まえて、お読みください。なお、参考程度に仕訳を表示します。
*マーズオフィスでの財務諸表の解答方法*
①貸借対照表なら資産・負債・純資産のみピックアップして解く。
②損益計算書なら収益・費用のみピックアップして解く。
③仕訳をするのは、基本、修正仕訳のみ。
④第3問の合計欄については、採点箇所ではないため、時間のない人は書かない。また、時間のある人でも2周目の確認作業のときまで記入を避ける。
⑤終盤の税金や当期純利益は大体捨て問。
⑥貸借対照表メインで出題され、損益計算書の項目がおまけでついているものについては、損益項目は簡単なもの以外捨て問。(その逆も同様)
⑦もうこの勘定科目は動かないと確定した時点で即座に解答用紙に記入する。
⇒ 全部の仕訳終わってから解答用紙に書いてたら、時間切れになったときはメモ用紙にしか書いていないので当然0点です。
以上のことを踏まえて、早速、解説していきます。
問 次に示した商品売買業を営む株式会社鹿児島商会の[資料1]から[資料3]にもとづいて、答案用紙の貸借対照表を完成させなさい。会計期間は20X8年4月1日より20X9年3月31日までの1年間とする。本問では貸倒引当金、減価償却およびその他有価証券の3項目に関してのみ税効果会計を適用する。法定実効税率は前期・当期とも25%であり、将来においても税率は変わらないと見込まれている。なお、繰延税金資産は全額回収可能性があるものとする。
[資料1]決算整理前残高試算表
[資料2]決算にあたっての修正事項
1.期中に火災に遭ったが保険を付していたため、焼失した資産の帳簿価額(減価償却費計上済)を火災未決算勘定に振り替える処理を行っていた。決算の直前に保険会社から20X9年4月末日に保険金¥1,540,000が当社の普通預金口座に入金されることが決定したとの連絡が入った。
2.売掛金¥740,000が決算日に回収され当社の当座預金口座に入金されていたが、その連絡が届いていなかったので未処理である。
[資料3]決算整理事項等
1.期末商品帳簿棚卸高は¥8,900,000である。甲商品には商品評価損¥170,000、乙商品には棚卸減耗損¥230,000が生じている。いずれも売上原価に算入する。
2.売上債権の期末残高につき、「1,000分の10」を差額補充法により貸倒引当金として設定する。なお、当該引当金にかかる税効果は生じていない。
3.建物、備品とも残存価額ゼロ、定額法に手減価償却を行う。建物の耐用年数は30年、備品の耐用年数は6年である。ただし、備品は投機種に購入したものであり、税務上の法定耐用年数が8年であることから、減価償却費損金算入限度超過額に係る税効果会計を適用する。
4.消費税の処理(税抜方式)を行う。
5.長期貸付金は、20X8年10月1日に期間5年、年利率4%、利払日は毎年3月31日と9月30日の年2回の条件で他社に貸し付けたものである。貸付額につき15%の貸倒引当金を設定する。ただし、これに対する貸倒引当金繰入について損金算入が全額とも認められなかったため、税効果会計を適用する。
6.その他有価証券の金額は、丙社株式の前期末の時価である。前期末に当該株式を全部純資産直入法にもとづき時価評価した差額について、期首に戻し入れる洗替処理を行っていなかった。そのため、決算整理前残高試算表の繰延税金資産は前期末に当該株式に対して税効果会計を適用した際に生じたものであり、これ以外に期首時点における税効果会計の適用対象はなかった。当期末の丙社株式の時価は¥7,700,000である。
7.法人税、住民税及び事業税に¥2,054,000を計上する。なお、仮払法人税等は中間納付によるものである。
8.繰延税金資産と繰延税金負債を相殺し、その純額を固定資産又は固定負債として貸借対照表に表示する。
前置きの時点で既に2,000字近いです。だから、決算の修正事項だけやっつけて、決算整理事項は次回にします。
決算修正事項は、後の決算整理事項に影響を与える内容となるので、ここはしっかりと仕訳を行います。
1.火災未決算の処理
まず、焼失した時点で次の処理が行われています。
*火災発生時の処理*
(火災未決算)3,600,000/(何らかの資産)×××
(減価償却費累計額)×××
そして、今回保険金が下りるという報告を受けたので、火災未決算の処理が必要となります。まず、貸方に火災未決算3,600,000円を置いて、プラマイゼロになります。そして、保険金額が1,540,000円下りる予定になったので、その分は未収入金(資産)で処理します。あとは、損したことになるので、火災損失(費用)で処理します。
*修正仕訳*
(未収入金)1,540,000/(火災未決算)3,600,000
(火災損失)2,060,000
なお、火災損失は費用なので、今回はいらないデータとなります。
2.売掛金の回収
売掛金が当座預金に入金になったということで、両方とも必要なデータとなります。また、決算整理前残高試算表(以降「前T/B」)には当座預金という勘定科目はなく、現金預金として処理する必要があります。
*修正仕訳*
(現金預金)740,000/(売掛金)740,000
売掛金の変動は、貸倒引当金の計算に大きく影響しますので、修正仕訳が問題にあるときは定番の仕訳となります。
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