問 株式会社ガトーニッショウでは、2種類の洋菓子(製品Xと製品Y)を製造している。原価計算方式としては標準原価計算を採用している。加工費の配賦基準は直接作業時間であり、予算直接作業時間を基準操業度としている。現在、2019年5月の予算と実績に関するデータを入手し、実績検討会議に向けた報告書を作成している。次の[資料]にもとづいて、下記の問に答えなさい。
[資料]
1.原価標準(製品1個当たりの標準原価)
⑴製品X
原料費 6円/g×100g 600円
加工費 1,500円/時間×0.4時間 600円
合 計 1,200円
⑵製品Y
原料費 8円/g×150g 1,200円
加工費 1,500円/時間×0.6時間 900円
合 計 2,100円
2.2019年5月予算
※加工費予算は変動予算を用いている。
3.2019年5月実績
※月初・月末に仕掛品は存在しない。
問1 予算生産量にもとづく製品Xの標準原価(予算原価)を計算しなさい。
問2 実際生産量にもとづく製品Xの標準原価を計算しなさい。
二つともとりあえず簡単なので、さっさと計算してしまいます。資料1の製品Xの標準原価に2と3の生産量を掛けるだけです。
問1の式)1,200円(Xの標準原価)×2,000個(2.の生産量)
問2の式)1,200円(Xの標準原価)×2,200個(3.の生産量)
*正解*
問1 2,400,000円
問2 2,640,000円
問3 製品Yの標準原価差異を分析し、
⑴原料費差異を価格差異と数量差異に分けなさい。
⑵加工費差異を予算差異、能率差異、操業度差異に分けなさい。なお、能率差異は変動費と固定費の両方からなる。
⑴ですが、まずはスタンダードにボックスを使って解いていきます。
ところで工業簿記の標準原価計算の再分析に使うボックスと、商業簿記に使う棚卸減耗損や商品評価損に使うボックスの2種類がありますが、覚え方があります。
工業簿記に使うボックスが左側です。きちんと「工」の字が浮かび上がっています。そして、商業簿記に使うボックスは右側です。ちょっと苦しいですが、日商簿記の「日」の字がついてます。
ということで左のボックスに必要な項目を埋めていきます。
現在分かっているのは、原料費の標準価格が1,200円×1500個=1,800,000円(内側の黄色の枠)であることと、実際価格(外枠)が1,759,400円であることです。
縦の価格欄には原料費のg単価を記入します。資料1⑵により、原料費の単価は8円/gとなっています。次に横の数量欄の標準消費量を計算します。1,800,000円(標準価格)÷8円/g(g単価)=225,000g(標準消費量)となります。
後は実際の原料消費量(総数量)231,500gを右下に、そして1,759,400円÷231,500g=7.6円を左上に配置すると数字の配置が完成します。
あとは、それぞれ価格差異と数量差異を計算すれば、ボックス完成となります。
引くときは、内側から外側に向かうように計算します。答えがマイナスのときは借方差異(不利差異)、プラスのときは貸方差異(有利差異)となります。第4問のときと同じですね。
*問3⑴の正解*
価格差異:(8円-7.6円)×231,500g=92,600円(有利差異)
数量差異:(225,000円-231,500円)×7.6円=49,400円(不利差異)
(参考)
総差異:1,800,000円(標準価格)ー1,759,400円(実際価格)=40,600円(有利差異)
⑵はシュラッター図を使った解き方となります。また、能率差異は変動費と固定費の合算となっています。
標準原価計算の差異分析を初めてするときは、シュラッター図の書き方を覚えてもらうようにしています。
①横に長い四角形を記入します。
②カラスのくちばしを左向きに記入します。
③ちょっと左寄りに縦線2本入れれば完成となります。
続いて各部の名称を記入します。
ここでは、解答の検討をしているので、各部の用語説明については、とっても長くなるので割愛します。ということで、数字を入れ終わったのが次の図です。
各数字の算出方法は以下のとおり
変動費率:資料2の変動加工費 400円/h
固定費率:資料1⑵の(総)加工費1,500円/hから変動費率を差し引いた1,100円/h
標準操業度:資料1⑵の加工費1,500円/h×0.6hより、1個作るのに0.6hかかるのがわかる。5月中に製造した個数は1,500個なので、1,500個×0.6h=900hとなる。
実際操業度:資料3の直接作業時間920h
基準操業度:資料2固定加工費990,000円÷固定費率1,100円/h=900h
(標準操業度と基準操業度が同じになっています。)
実際発生額:資料3加工費1,372,000円
予算許容額:変動費率400円/h×実際操業度920h+固定加工費990,000円=1,358,000円
あとはそれぞれの差異を計算すれば、表が完成します。差異の計算のルールは、
①縦の列は下から上に差し引く
②横の行は左から右に差し引く(内側から外側に)
*問3⑵の正解*
予算差異:1,358,000円-1,372,000円=▲14,000円
予算許容額-実際発生額
∴ 14,000円(不利差異)
能率差異:(900h-920h)×(400円/h+1,100円/h)=▲30,000円
(標準操業度-実際操業度)×(加工費の合計)
∴ 30,000円(不利差異)
操業度差異:(920h-900h)×1,100円/h=22,000円
(実際操業度-基準操業度)×固定費率
∴ 22,000円(有利差異)
(参考)
標準原価:900h×1500円/h=1,350,000円
製造間接費総差異:1,350,000円-1,372,000円=▲22,000円(不利差異)
この問題に限らず、工業簿記のエリアは2つ合わせて30分で解きたいところです。各4点のミスを許容範囲とした32~40点を目標にして、得点源にできればいいと思っています。
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