第1問の3 圧縮記帳
問(1)最新式のレジスター25台(@¥144,000)の導入にあたり、去る5月7日に国から¥1,800,000の補助金を得て、補助金の受領については適切に会計処理済みである。本日(6月1日)、上記のレジスターを予定通り購入し、小切手を振り出して支払った。そのうえで、補助金に関する圧縮記帳を直接控除方式にて行った。なお、備品勘定は圧縮記帳した事実を示すように記入すること。
まず、会計処理済みの仕訳も参考にしなければならないので、頭に浮かべてもいいのですが、ここは凡ミスをしないように仕訳をしておきます。
問題文には、現金で受け取ったのか、預金で受け取ったのか受領の方法まで記載していませんが、そこは重要ではないので、適当に現金とでもしておきます。
*5月7日の仕訳*
(現金)1,800,000/(国庫補助金受贈益)1,800,000
次に、普通に備品を購入した仕訳を行います。
備品の購入価額:@144,000円×25台=3,600,000円
(備品)3,600,000/(当座預金)3,600,000
圧縮記帳とは、固定資産の購入について国からの補助金を受けたときに、自己出費がその分軽減されることと、補助金の分だけ固定資産の取得価額を減らすことにより、資産価値が減るので節税効果が得られます。
したがって、備品の価額を補助金の分だけ直接減らします(直接控除方式)。このときに使う勘定科目は、固定資産圧縮損(費用)で処理します。
これで国庫補助金受贈益の収益部分と固定資産圧縮損の費用部分が相殺され、補助金の分だけ利益がゼロになります。利益がゼロになるということは、これにかかる納税額もゼロです。
(固定資産圧縮損)1,800,000/(備品)1,800,000
これで、備品の財産価値は3,600,000円でも、帳簿価額は1,800,000円で評価されます。
*正解の仕訳*
(備品)3,600,000/(当座預金)3,600,000
(固定資産圧縮損)1,800,000/(備品)1,800,000
最後の気になる文章ですが、「なお、備品勘定は圧縮記帳した事実を示すように記入すること」というのは、相殺して仕訳をしてはダメですよということです。
*誤った仕訳*
(備品)1,800,000/(当座預金)3,600,000
(固定資産圧縮損)1,800,000/
これだと初めっから備品の取得価額は1,800,000円となってしまいます。例えば、国の補助金が取得原価の50%を支給するという決まりのはずが、帳簿上は100%補助金で賄っているかのようなカタチになってしまう訳です。
実際は領収書があるので、そんなことにはなりませんが、税務調査官が仕訳帳を見たときに、「ん?」となり、領収書を見たときに「こいつ、経理のこと知らないな。もっとおかしなものがあるのでは?」と心証が悪くなってしまいます。
自営業の方においては、自己で経理を行うときは簿記2級、それができないなら税理士などの専門家に依頼するべきでしょう。
問(2)本日決算日(12月31日)につき、上記の備品について減価償却(200%定率法)を月割計算にて行う。耐用年数は5年、記帳方法は直接法によること。
(1)が間違えていると連鎖で間違える問題です。(1)で備品の取得原価が1,800,000円となっています。これについて、減価償却を行います。
200%定率法なので、耐用年数で割って、2倍します。
1年間の減価償却費:1,800,000円(備品の取得価額)÷5年×200%=720,000円
これを月割計算なので、6月~12月までの7カ月間で計算します。
当期分の減価償却費:720,000円÷12カ月×7ヶ月分=420,000円
さらに直接法なので、勘定科目一覧表に備品減価償却累計額があったとしても、直接備品から差し引くことになります。いわゆる、ひっかけですね。
*正解の仕訳*
(減価償却費)420,000/(備品)420,000
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