今日から154回日商簿記の解答解説を行っていきたいと思います。なお、今回は3級も解説していきますので、2級待ちの方はもう少々お待ちください。
第1問
下記の各取引について仕訳しなさい。ただし、勘定科目は、次の中から最も適当と思われるものを選び、正確に記入すること。
現金 普通預金 受取手形 売掛金 前払金 仮払消費税 仮払金 受取商品券 備品 支払手形 買掛金 前受金 仮受消費税 借入金 備品減価償却累計額 資本金 売上 受取手数料 受取利息 固定資産売却益 仕入 旅費交通費 消耗品費 支払利息 固定資産売却損
仕訳問題ですから、いきなり問題に直接行きたいところですが、ここに書かれていない勘定科目で記入した場合、いくら普通は正解であっても誤答となります。
私の経験からいうと、本問の4問目・5問目の後半になると忘れがちになってしまい、書かれていない勘定科目を使ってしまったことがあります。見直しのときに気付けばいいのですが、試験に慣れていなかったときはこのミスが痛かったです。
ということで、1問ごとに必ず勘定科目一覧を参照する癖をつけてください。また、見直しのときにも正しいものを使っているかのチェックも必要です。3級はできれば一発で合格するのが望ましいので、試験直前の模擬試験段階でケアレスミスに気付くことができれば儲けものです。
第1問の1 買掛金の決済
問 秋田株式会社に対する買掛金¥270,000の決済として、同社あての約束手形を振り出した。
買掛金の決済(支払い)ということなので、まず借方に買掛金(負債)を記入します。
(買掛金) 270,000/(???) 270,000
たとえば、2カ月の期限で売掛金を支払うことを約束したけれど資金繰りがうまくいかず、さらに3カ月先の約束手形(ある意味借用証書です)に切り替えました。こういうことは実際の取引でよくある話です。つまり、これは支払方法の変更を意味しています。3か月後に支払う約束手形ですから、貸方には支払手形(負債)が入ります。
【正解の仕訳】
(買掛金) 270,000/(支払手形) 270,000
第1問の2 商品の売上
問 商品¥16,000を売り上げ、消費税¥1,600を含めた合計額のうち¥7,600は現金で受け取り、残額は共通商品券を受け取った。なお、消費税は税抜方式で記帳する。
「商品¥16,000を売り上げ、消費税¥1,600を含めた合計額」は、「消費税¥1,600を含めた商品¥16,000を売り上げた合計額」ではないことを読み取りましょう。語順だけで意味合いが全然違うのが日本語の難しいところです。
これを正確に読み取れたら、単純に16,000円の商品+1,600円の消費税=合計額17,600円を仕訳で表現するだけです。まずは、貸方を整理します。
(???)×××/(売上)16,000
(???)×××/(仮受消費税)1,600
次に借方ですが、7,600円が現金(資産)で、残りが商品券です。一覧表の中で商品券と書かれているのは、受取商品券(資産)だけですから、これを選択して完成です。
【正解の仕訳】
(現金)7,600/(売上)16,000
(受取商品券)10,000/(仮受消費税)1,600
ちなみに平成30年4月以前は、受取商品券(資産)ではなく、商品券(資産)を使っていました。勘定科目一覧には当然記載はありませんが、古いテキストを所持している方や、以前断念して再チャレンジされている方は要注意です。
第1問の3 ⅠⅭカードの取扱い
問 従業員が事業用のICカードから旅費交通費¥2,600および消耗品費¥700を支払った。なお、ICカードのチャージ(入金)については、チャージ時に仮払金勘定で処理している。
ⅠⅭカードとは、ⅠⅭチップの入ったカード全般をいいます。でも、簿記の場合は電子マネーのカードを指します。最近はやりのスマホ決済もこれにあたります。
Suicaをはじめとする交通系のカードで交通にしか使わないのであれば、チャージ時に旅費交通費(費用)で一括処理してしまいますが、最近では交通費に関わらず飲食代にも使うことができるので仮払金(資産)で処理することが多くなりました。
本文でもチャージ時に仮払金で処理しています。たとえば、現金で10,000円チャージした仕訳は以下のとおりとなります。
(仮払金)10,000/(現金)10,000
これを使用するということは、仮払金が貸方にくることとなります。また、旅費交通費も消耗品費も、どちらも費用ですから借方に記入します。
【正解の仕訳】
(旅費交通費)2,600/(仮払金)3,300
(消耗品費)700/
第1問の4 備品の売却
問 不用になった備品(取得原価¥660,000、減価償却累計額¥561,000、間接法で記入)を¥3,000円で売却し、売却代金を現金で受け取った。
備品は資産ですから借方計上です。また、減価償却累計額は評価勘定ですから貸方計上となります。
(備品)¥660,000-(減価償却累計額)¥561,000=(正味価値)¥99,000
これを売却するということは、ゼロにするということなのでそれぞれ逆仕訳となります。勘定科目一覧では備品減価償却累計額となっているので正しく使用しましょう。
(備品減価償却累計額)561,000/(備品)660,000
続いて、この備品を売ったら3,000円で売れたので、現金(資産)を借方に記入します。
(備品減価償却累計額)561,000/(備品)660,000
(現金)3,000/
差額の96,000円は赤字ということとなりますから、固定資産売却損(費用)で処理します。
【正解の仕訳】
(備品減価償却累計額)561,000/(備品)660,000
(現金)3,000/
(固定資産売却損)96,000/
第1問の5 預金利息の入金
今回の問題で一番簡単なのがこの問題ですね。利息を受け取るということは受取利息(収益)で処理します。そして、借方は普通預金(資産)です。
ただし、ここって仕訳の一番最後なので多少油断してケアレスミスが多くなるところでもあります。私も過去に間違えました。
通常のテキストでは、預金といえば、ほぼ当座預金(資産)が出てきます。普通預金と文中に書かれていても、無意識に当座預金と書いてしまったことがあります。
当然、勘定科目には当座預金はないので、二重にミスをしているのですが、ここで勘定科目一覧の確認は大事だということに気付きました。1問4点は大きいですから、私のようなミスはしないよう心がけましょう。
【正解の仕訳】
(普通預金)300/(受取利息)300
余談
この最後の問題は、個人事業主だと仕訳が変わります。実際、簿記3級を持っていて自営業をされた方はこの知識で経理をしているので、間違われる方が多発しています。
個人事業主だと以下の仕訳となります。
(普通預金)300/(事業主借)300
事業主借勘定(負債)は、個人事業主が事業所に出資したときに使うものです。事業主から事業所がお金を借りたことになっているので事業主借となります。
では、なぜ受取利息を使わないで事業主借を使うのでしょうか。それは、二重の課税となってしまうからです。
そもそも、この預金利息というのは、20.315%の源泉徴収課税(利子所得:所得税)がなされて、残額を受け取っている形になります。つまり納税は銀行を経由して終わっていることになります。この状態で収益にしてしまうと、また確定申告の際に課税対象となってしまいます。これを防止するために事業主借という勘定科目を使っているのです。
なお、法人はどうしているのかというと、100円の受取利息と20円の源泉徴収がなされたとき(実際には80円の受け取り)には、基本は以下のように仕訳を行って法人税等で調整することとなります。
(普通預金)80/(受取利息)100
(法人税、住民税及び事業税)20/
このような処理をすることで、事前に税金を納めたことと同じになるのです。個人事業主だとこうですね。
(普通預金)80/(事業主借)80
法人でも
(普通預金)80/(受取利息)80
とすることもできますが、後々税理士さんが計算して正しい納税をしてくれることとなります。
何よりここで言いたいことは、簿記の知識があっても実際の経理は違うので、そのまま使うことはできないということを知ってもらいたいです。ここで紹介した個人事業主と法人との経理の違いはほんの氷山の一角です。
弊事務所では、簿記講座をはじめとする社会に使える資格を個別指導方式で教えています。この簿記3級の本試験問題については、「日商簿記3級実戦編」として北海道旭川市近辺の方を対象に行っていますので、よろしくお願いいたします。