ポリテク火星出張所!

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153回日商簿記2級の解答について~第3問 連結精算表③~

今回で153回日商簿記2級最後の解説としたかったのですが、とっても長いので2つに分けたいと思います。

問 次の資料にもとづいて、連結第4年度(×3年4月1日から×4年3月31日まで)の連結精算表(連結貸借対照表連結損益計算書)を作成しなさい。

4.連結第3年度末と連結第4年度末にP社の個別財務諸表に計上されている「製品及び商品」のうちS社から仕入れた製品(付属機器B)は、それぞれ65,000千円と78,000千円であった。また、連結第3年度末と連結第4年度末にS社の個別財務諸表に計上されている原材料には、P社から仕入れた部品Aが、それぞれ16,500千円と13,200千円含まれていた。なお、連結第3年度末と連結第4年度末において、S社の「製品及び商品」に付属機器Bの在庫はなく、仕掛品には部品Aは含まれていない。

5.S社の付属機器Bの製造原価の構成は次のとおりであった。

連結第3年度

部品A:33% その他の材料費:35% 加工費:32%

連結第4年度

部品A:33% その他の材料費:34% 加工費:33%

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さらに、今回必要となる資料1.⑵も再度載せておきます。

⑵S社は機器の製造業であるが、独自に調達した材料にP社から仕入れた部品Aを加えて、P社の販売する機器の附属品Bも製造している。P社は部品Aの販売時にその調達部品の10%を加えたものでS社に販売している。S社は、付属部品Bを製造原価に30%の利益を加えた価格でP社に販売し、それ以外に外部の第三者にも付属部品Bとその他の機器を直接に販売している。

本問の整理 

文章量が多いので、読むこと自体嫌気がさしそうですが、それを図式化して理解できるようになることが大事です。

 まずは1.⑵です。

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4.の説明は、P社とS社相互取引間の「原材料及び製品」と「原材料」の期首在庫(第3年度末)・期末在庫(第4年度末)を表してます。

5.の説明は、S社の付属機器B(原材料)の製造原価の構成比です。見るべきところは、部品Aしかありません。まとめると、以下のとおりとなります。

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 そして、やるべきことは2つです。

①未実現利益の控除

会社相互間の利益を控除します。

期首商品においては、決算が終わっていますので、開始処理と同じように、利益剰余金と売上原価で調整します。

期末商品においては、製品及び商品や原材料と売上原価で調整します。

②非支配株主持分への振り替え

アップストリームについては、S社の純利益を左右しますので、共同経営者である非支配株主にも、利益の減少や費用の増加が発生した場合にはその分を負担してもらいます。

最初にお話しすると、これで10分近くかかるなら、この部分は間違いなく捨て問の対象となります。そのうえで説明をしていきます。

期首商品(3年度末)に含まれる未実現利益の控除

期首商品棚卸高の金額が減少すると、売上原価も減少することとなります。

下のボックスをご確認ください。まず、当月の仕入金額が変動することはありません。そして、期末商品棚卸高も一応は固定です。したがって、枠内で調整できる場所は、売上原価となります。

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①P社の付属機器B(製品及び商品)

まずは、この問題について、今までの図をまとめたものがこちらとなります。

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現在P社にある付属機器Bの期首棚卸高は65,000千円ですが、この中に30%の利益が含まれているので、その分を期首棚卸高から控除しなければなりません。

付属機器Bに含まれる未実現利益:65,000千円×30%/130%=15,000千円

そうすると、期首棚卸高は50,000千円となります。そこで、今回の一番の難題です。

この附属機器Bには、部品Aが使われていて、その部品にも利益が加算されています。そのため、この分も控除しなければ、完全な金額にならないのです。

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以上のとおり、付属製品Bに含まれる16,500千円の仕入に関する図がこちらです。

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この部品Aにかかる未実現利益分をさらに控除します。

部品Aに含まれる未実現利益:16,500千円×10%/110%=1,500千円

付属製品Bと部品Aを合わせた仕訳は以下のとおりです。

【連結修正仕訳】

(利益剰余金)16,500/(売上原価)16,500

3年度末の決算は終えていますから、利益剰余金で調整します。相手勘定は、期首製品(商品)棚卸高ですが、そのような勘定科目はありません。(電子会計になると存在するのですが…)

その分については、3級でおなじみの「仕繰繰仕」で第4年度末の売上原価に期首棚卸高が含まれているので、売上原価を減らすのです。上のボックスでの説明と同じ理由です。

そして、まだ終わりません。次に非支配株主持分への振り替えを行います。

S社からP社に売った付属製品の利益が15,000千円減少しました。したがって、非支配株主にもその20%を負担してもらわないとなりません。

非支配株主の負担分:15,000千円×20%=3,000千円

この金額は非支配株主持分から減らしますが、これも決算が終了しているため、以下の仕訳となります。

【連結修正仕訳】

(非支配株主に帰属する当期純利益)3,000/(利益剰余金)3,000

②S社の部品A(原材料)

まずは、まとめた図をご覧ください。

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よく見ると、先ほどの図と同じです。最初が相当難しかった分の調整でしょうか。これは、先ほどの仕訳をそのまま流用するだけです。また、P社からS社のダウンストリームなので、非支配株主も出てきません。

【連結修正仕訳】

(利益剰余金)1,500/(売上原価)1,500

 

どうでしょうか。ここまでで前半部分です。この問題は、計算になれないと短時間で解くことは難しいので、たぶん私でも簡単に捨てちゃう問題かもしれません。

次回こそ、今年最後の解説にしたいと思います。

 

弊事務所では、簿記講座をはじめとする社会に使える資格を個別指導方式で教えています。この簿記2級の本試験問題については、「日商簿記2級実戦編」として北海道旭川市近辺の方を対象に行っていますので、よろしくお願いいたします。

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