154回日商簿記2級の解答について~第5問 単純総合原価計算~
第5問は単純総合原価計算です。本編では省略しましたが、今回は「材料の追加投入」のあるケースです。
問1 当社は製品Ⅹを生産・販売し、実際総合原価計算を採用している。次の[資料]にもとづいて、答案用紙の総合原価計算表の( )内に適切な金額を記入しなさい。
なお、原価投入額合計を完成品総合原価と月街仕掛品原価に配分する方法として先入先出法を用いること。
[資料]
[生産データ]
月初仕掛品量 4,000㎏(50%)
当月投入量 59,000㎏
合計 63,000㎏
差引:正常仕損量 1,000㎏
月末仕掛品量 2,000(50%)
完成品量 60,000㎏
[原価データ]
月初仕掛品原価
A原料費 480,000円
加工費 220,000円
小計 700,000円
当月製造費用
A原料費 7,080,000円
B原料費 660,000円
加工費 9,600,000円
小計 17,340,000円
合計 18,040,000円
(注)( )内は加工費の進捗度である。A原料は工程の始点で投入している。B原料は工程の60%の点で投入しており、B原料費はすべて完成品に負担させる。正常仕損は工程の終点で発生し、それらはすべて当月作業分から生じた。正常仕損費はすべて完成品に負担させ、仕損品に処分価値はない。
問2 上記[資料]について、同じデータで仕損品の売却による処分価値を1㎏当たり120円としたときの完成品総合原価を計算しなさい。
各ボックスの作成(下準備)
生産データや原価データが出てきた場合、すぐにA原料費・B原料費・加工費の仕掛品ボックスを作成します。
A原料費の仕掛品ボックス
A原料費は、工程の始点で投入していますので、通常通りに計算します。
先入先出法の場合、当月完成高は月初仕掛品在高の単価と当月投入の単価が混在しています。一方、月末仕掛品在高は当月投入の単価のみとなっているため、まずは月末仕掛品在高の金額を計算します。
当月投入の単価:7,080,000÷59,000=120円/㎏
月末仕掛品在高の金額:2,000㎏×120円/㎏=240,000円
仕損品は「完成品に負担させる」ため、完成品の個数に含めて計算します。
A原料費の完成品原価:480,000(月初仕掛品在高)+7,080,000(当月投入)-240,000(月末仕掛品在高)=7,320,000円
B原料費の仕掛品ボックス
B原料費は、工程の60%の時点で追加投入するものです。この追加投入する方法は、このブログでは新論点となりますので、少し説明をいたします。
解き方のポイントは、月初仕掛品在高及び月末仕掛品在高の進捗度に注目することです。本問では月初仕掛品在高・月末仕掛品在高ともに50%の進捗度で止まっています。
B原料費は60%以上でないと投入できないため、月初・月末ともにB原料費は使用されていません。ですから、当月投入分がそのまま当月完成品の金額となります。
なお、仕損費が完成品に含まれて61,000㎏になっていますので、借方の個数調整は当月投入で行うこととなります。
B原料費の完成品原価:660,000円(当月投入の金額と一致)
加工費の仕掛品ボックス
加工費の月初仕掛品在高と月街仕掛品在高の数量に進捗度(%)を掛けて数量を変更します。あとは、先ほどと同じようにボックスを作成します。
当月投入の単価:9,600,000÷60,000=160円/㎏
月末仕掛品在高の金額:1,000㎏×160円/㎏=160,000円
加工費の完成品原価:220,000(月初仕掛品在高)+9,600,000(当月投入)-160,000(月末仕掛品在高)=9,660,000円
仕損品評価額を考慮した完成品総合原価
仕損品もスクラップパーツとして売ることができる場合があります。今回は完成品に負担させるため、完成品総合原価から仕損品評価額を差し引きます。
仕損品評価額:@120円(1個あたりの処分価額)×1,000㎏(正常仕損量)=120,000円
完成品総合原価:17,640,000(問1の完成品総合原価)-120,000(仕損品評価額)=17,520,000円