今回は工業簿記です。なお、問題順ではなく解く順番で解説しています。
余談ですが、ファイナンシャルプランニング技能士試験にも簿記の知識が多く入っています。保険関係では、前払保険料の仕訳、税金関係では、事業所得のところで減価償却費の計算なんかが出てきます。意外にも月割計算をさせてくるので、驚きです。
このように社会に使えそうな資格(簿記・FP・宅建・行政書士・司法書士試験など)はいろいろなところで繋がっていることが多く、複数の資格取得を狙うチャンスもありますので、是非チャレンジしてみてください。
問 次の[資料]にもとづいて、A工業の当月の仕掛品勘定と月次損益計算書を作成しなさい。
[資料]
1.棚卸資産有高(単位:円)
(月初有高)
素材 1,500,000
部品 1,400,000
燃料 250,000
仕掛品 3,520,000
製品 1,400,000
(月末在高)
素材 1,600,000
部品 1,350,000
燃料 310,000
仕掛品 3,650,000
製品 1,200,000
2.直接工の作業時間及び賃率
直接工の作業時間の内訳は、直接作業時間2,600時間、間接作業時間250時間であった。なお、賃金計算では、平均賃率である1時間当たり1,300円を適用している。
3.当月中の支払高(単位:円)
素材仕入高 5,800,000
部品仕入高 4,720,000
燃料仕入高 750,000
工場消耗品消費高 35,000
間接工賃金当月支払高 740,000
間接工賃金前月未払高 120,000
間接工賃金当月未払高 130,000
電力料金(測定値) 240,000
保険料(月割額) 390,000
減価償却費(月割高) 1,200,000
水道料金(測定値) 80,000
4.製造間接費は直接作業時間を配賦基準として予定配賦し、配賦差異は売上原価に賦課している。なお、A工業の年間の製造間接費予算は44,800,000円、年間の予定総直接作業時間は32,000時間である。
材料費の計算
まずは材料費の計算です。材料費に関係する勘定科目は、素材・部品・燃料・工場消耗品の4つです。
この4つを直接材料費と間接材料費に選別する必要があります。
直接材料費:主要材料費(主に素材、材料)、買入部品費
間接材料費:補助材料費(塗料、燃料など)、工場消耗品費、消耗工具器具備品費
マニュアル通りでは以上のような区分となります。
ど忘れしたりして、どうしてもわからない場合には、大きい金額は直接材料費で、小さい金額は間接材料費となります。部品勘定もそこそこ多いよと言えばそうなのですが…あくまで苦肉の策です。
この問題はボックスで解いていきます。
素材・部品・燃料は、月初有高+当月仕入高-月末在高で当月消費高を計算します。
工場消耗品は、消費高が最初から示されていますので、そのままの金額となります。
労務費の計算
労務費は直接工賃金と間接工賃金に分けて解くのがスタンダードですが、直接費(仕掛品へいくもの)と間接費(製造間接費にいくもの)に分けて計算した方が早いです。
仕訳問題の場合は別ですが、今回の解答は仕掛品ボックスと月次損益計算書の作成となりますので、途中経過はなるべく省略した方が良いです。
まず、直接労務費ですが、直接工の直接作業時間のみです。したがって、次のとおりとなります。
直接工の直接労務費:@1,300円(平均賃率)×2,600時間=3,380,000円(当月消費高)
この金額はそのまま仕掛品ボックスへ移動となります。
引き続き間接労務費の計算です。材料費と同じくボックスで解きますが、直接工の間接作業時間を当月消費高に加算します。
直接工の間接労務費:@1,300円(平均賃率)×250時間=325,000円(当月消費高)
間接工の間接労務費は、当月支払高+当月未払高-前月未払高で当月消費高となります。ボックスが他と比べて特殊なので注意が必要です。
製造間接費合計:325,000円(直接工)+750,000円(間接工)=1,075,000円
間接経費の計算
外注費などの直接経費は今回ありません。電気代、保険料、減価償却費、水道代のすべてを加算したものとなります。
間接経費:240,000円(電力料金)+390,000円(保険料)+1,200,000円(減価償却費)+80,000円(水道料金)=1,910,000円
次回は製造間接費から解説をします。