今回の直接原価計算の特徴は、全部原価計算との比較と会話形式の解答用紙となっています。直接原価計算の損益計算書を作成した後に、全部原価計算の損益計算書との違いを検討することとなります。
問 米菓を製造・販売するニッショウ製菓では、これまで全部原価計算による損益計算書のみを作成してきたが、製品Aの月間利益計画を作成するため、直接原価計算による損益計算書を作成することとした。製品Aの販売価格は1㎏当たり1,000円を予定している。次の[資料]にもとづいて、その下の[会話文]の(ア)(イ)に入るもっとも適切な語を選んで○で囲みなさい。また、(①)~(⑥)に入る金額を計算しなさい。
[資料]
⑴ 製品A1㎏当たり全部製造原価
直接材料費 400円/㎏
変動加工費 140円/㎏
固定加工費 月額 840,000円
(全部原価計算では月間生産量をもとに配賦率を算定する)
⑵ 販売費及び一般管理費
変動販売費 80円/㎏
固定販売費及び一般管理費 月額 452,000円
⑶ 月間生産・販売計画(仕掛品は存在しない)
月初在庫量 0㎏
月間販売量 4,000㎏
月間生産量 4,000㎏
月末在庫量 0㎏
[会話文]
社長:全部原価計算と違って、直接原価計算では、売上高から変動費を差し引いて(ア)利益が出てくるわけですね。
経理部長:そうです。月間生産・販売量を4,000㎏とする現在の計画では、月間(ア)利益は(①)円になります。仮に、月間生産・販売量を5,000㎏とすると、月間(ア)利益は(②)円になります。
社長:なるほど。(ア)利益は売上利益に(イ)変化するわけですね。
経理部長:そうです。次に(ア)利益から固定費を差し引いて営業利益を出します。月間生産・販売量を4,000㎏とする現在の計画では、月間営業利益は(③)円になります。
社長:月間営業利益がマイナスにならないようにするためには、月間売上高はいくら必要になりますか。
経理部長:損益分岐点ですね。損益分岐点の月間売上高は(④)円です。
社長:わかりました。この月間売上高は上回らないといけませんね。ところで、直接原価計算の営業利益は全部原価計算の営業利益と同じ金額になるのですか。
経理部長:現在の計画ではそうですが、生産量と販売量が一致しないときは同じ金額になりません。仮に、月間生産量だけを5,000㎏に増やし、月間販売量は4,000㎏のまま変わらないとします。直接原価計算では、月間営業利益は(⑤)ですが、全部原価計算では、月間営業利益は(⑥)円になります。
社長:販売量が変わらないのに、生産量を増やして利益が増えるのはおかしいですね。
経理部長:そのとおりです。直接原価計算の方が利益計画に適しているといえるでしょう。
[解答用紙]
アの選択肢:売上総・貢献・経常
イの選択肢:比例して・反比例して・関係なく
直接原価計算の各データの計算
まずは、直接原価計算の損益計算書を作成するためのデータを作成します。
売上高については、月間販売量は4,000㎏となっています。販売単価は問題文本文により@1,000円ですから、これを掛けて売上高を計算します。
売上高:@1,000円×4,000㎏=4,000,000円
次に売上原価の方ですが、⑶のデータより月間生産量は4,000㎏となっています。変動費については、この4,000㎏を掛けて金額を出します。
固定費は賃借料・減価償却費など製造量に関係なく発生するものです。何も作業しなかったからと言って家賃がゼロになることはありません。したがって、そのままの数字を使用します。
直接材料費:@400円×4,000㎏=1,600,000円
変動加工費:@140円×4,000㎏=560,000円
固定加工費:840,000円
変動販売費:@80円×4,000㎏=320,000円
変動費の計算ですが、(@400円+@140円+@80円)×4,000㎏というように電卓で打てば、多少のスピードアップにつながります。
固定販売費及び一般管理費:452,000円
これを変動費と固定費にまとめると以下の通りとなります。
変動費:1,600,000円+560,000円+320,000円=2,480,000円
固定費:840,000円+452,000円=1,292,000円
直接原価計算による損益計算書の作成①
直接原価計算では売上高から変動費を差し引いたものを貢献利益、そこから固定費を差し引いたものが営業利益となります。
したがって、アの選択肢は、「貢献」となります。
売上高-変動費=貢献利益
貢献利益-固定費=営業利益
これを表にまとめると以下の通りとなります。
表から①の答えは1,520,000円となり、③の答えは228,000円となります。
直接原価計算による損益計算書の作成②
次は月間生産費及び販売量を5,000個に変更したらどうなるかという問題です。
変動費は販売量によって変動しますが、固定費の変動はありません。
売上高:@1,000円×5,000個=5,000,000円
変動費:(@400円+@140円+@80円)×5,000個=3,100,000円
固定費:1,292,000円
したがって、②の答えは1,900,000円となります。
売上高も変動費も同じ量を掛けていますので、生産量・販売量の数に応じて増減します。つまり、イの選択肢は、「比例して」が正解となります。
次回は、損益分岐点売上高から解説をします。