商業簿記に戻って、第2問の有価証券の問題です。
設問が問1~問3までありますが、問3だけは連結会計の開始仕訳の問題となっており、他とは別個に解くことができます。そんなに難しくはないので、先に解いてしまっても構わないと思います。
工夫すれば、3→2→1という風に一番面倒な設問1を後回しにすることも可能ですから、終了時間が迫っているときは、これらを選別して解くこともテクニックのひとつとなります。
問 有価証券取引に関する[資料1]から[資料4]までにもとづいて、下記の設問に答えなさい。本問では、有価証券の売却原価の算定は移動平均法により、税効果会計は考慮しない。
[資料1]20×1年3月31日現在の投資有価証券の明細
(注1)D債券は20×0年3月31日に取得したものであり、償還日は20×8年3月31日、利率は年0.4%、利払いは3月末と9月末の年2回均等額の支払いである。
(注2)E債券は20×1年3月31日に取得したものであり、償還日は20×6年3月31日、利率は年0.3%、利払いは3月末と9月末の年2回均等額の支払いである。
[資料2]20×1年4月1日から20×2年3月31日までの投資有価証券の取引
4月1日 その他有価証券について、期首における洗替処理を行う。
5月10日 A株式500株を1株¥2,500で購入し、普通預金から支払う。
7月15日 B株式1,000株を1株¥3,200で購入し、普通預金から支払う。
9月30日 債券の利払いが普通預金に入金された。
10月1日 F債券¥4,000,000(非上場、償還日20×7年9月30日、利率は年0.4%、利払いは3月末と9月末の年2回均等額の支払い)を¥4,060,000(経過利息は発生しないものとする)で購入し、普通預金から支払い、満期保有目的とした。
11月20日 B株式500株を1株¥3,400で売却し、代金は当座預金に入金された。
12月31日 D債券の50%を¥2,600,000(経過利息¥2,500を含む)で売却し、代金は当座預金に入金された。
3月31日 G株式9,000株を¥31,500,000で、普通預金から支払って取得した。株式の所有比率が60%で、子会社に該当するため、いったんその他有価証券に計上後に子会社株式に振替える。
3月31日 債券の利払いが普通預金に入金された。
3月31日 その他有価証券を時価評価するとともに、満期保有目的債券についてそれぞれ償却原価法(定額法による)の会計処理を行う。
[資料3]20×2年3月31日の有価証券の時価は、次の通りであった。
[資料4]G社の20×2年3月31日現在の純資産は、資本金¥24,000,000、利益準備金¥6,000,000、繰越利益剰余金¥21,000,000であった。
[解答用紙]
満期保有目的債券勘定及びその他有価証券勘定の記入
問1 満期保有目的債券勘定とその他有価証券勘定の記入を完成しなさい。総勘定元帳は英米式によって締め切るものとする。
基本的に[資料2]をベースとして解いていきますが、日付の順番通り記入していっても構いませんが、今回は勘定科目ごとに解いていきたいと思います。
①満期保有目的債券勘定の記入
4月1日 洗替法による再振替処理
まずは[資料1]に注目してください。現在の帳簿価額は取得原価となっています。満期保有目的債券はE債券のみとなります。再振替処理はありませんので、そのままの金額を解答用紙に転記します。
10月1日 F債券の購入
新しい債券を4,060,000円で購入し、普通預金から支払っています。
【仕訳】
(満期保有目的債券)4,060,000/(普通預金)4,060,000
3月31日3行目 満期保有目的債券の期末処理
E債券とF債券について、償却原価法(定額法)による金利調整差額の処理をします。
①E債券
金利調整差額:5,000,000円(額面金額)-4,900,000円(取得原価)=100,000円
当期償却額:100,000円÷5年(20×1年~20×6年)=20,000円
【仕訳】
(満期保有目的債券)20,000/(有価証券利息)20,000
②F債券
金利調整差額:4,000,000円(額面金額)-4,060,000円(取得原価)=▲60,000円
当期償却額:▲60,000円÷6年(20×1年~20×7年)×6ヵ月/12カ月=▲5,000円
取得時期が10月1日のため、償却額を半年分にするのを忘れずに…
【仕訳】
(有価証券利息)5,000/(満期保有目的債券)5,000
あとは、貸借差額を次期繰越に記入すれば完成です。
②その他有価証券勘定の記入
4月1日 前期繰越
その他有価証券の帳簿価額はすべて時価となっています。C株式のみ非上場株式のため取得原価のままです。
A株式:4,800,000円
B株式:9,000,000円
C株式:2,500,000円
D債券:5,030,000円
合 計:21,330,000円
4月1日 洗替法による再振替処理
上記のその他有価証券を取得原価に戻します。なお、C株式は処理不要です。
わかりやすいようにそれぞれ表記していますが、実際には合算して転記します。
【仕訳】
(その他有価証券評価差額金)800,000/(その他有価証券)800,000
(その他有価証券評価差額金)1,500,000/(その他有価証券)1,500,000
(その他有価証券評価差額金)30,000/(その他有価証券)30,000
転記合計:2,330,000円
【各株式の内訳】
5月10日 A株式の追加購入
購入価額:@2,500円×500株=1,250,000円
【仕訳】
(その他有価証券)1,250,000/(普通預金)1,250,000
【A株式の内訳】
7月15日 B株式の追加購入
購入価額:@3,200円×1,000株=3,200,000円
【仕訳】
(その他有価証券)3,200,000/(普通預金)3,200,000
【B株式の内訳】
11月20日 B株式の一部売却
問題文冒頭に載っていますが、有価証券の売却原価の算定は移動平均法により行うこととします。
B株式売却時の単価:(7,500,000円+3,200,000円)÷(3,000株+1,000株)=2,675円
売却価額:@3,400円×500株=1,700,000円
売却原価:@2,675円×500株=1,337,500円
【仕訳】
( 当座預金)1,700,000/(その他有価証券)1,337,500
/(有価証券売却益)362,500
【B株式の内訳】
12月31日 D債券の一部売却
D債券の50%を売却しています。もともとの在庫なので移動平均法は関係ありません。
経過利息2,500円は、今まで保有していた利子になるので、有価証券利息(収益)で計上します。
売却原価:5,000,000円(帳簿価額)×50%=2,500,000円
【仕訳】
(当座預金)2,600,000/(その他有価証券)2,500,000
/(有価証券利息)2,500
/(有価証券売却益)97,500
【D債券の内訳】
3月31日1行目 子会社株式の購入
まずは購入したG株式31,500,000円をその他有価証券(資産)として計上します。
【仕訳】
(その他有価証券)31,500,000/(普通預金)31,500,000
そして、そのまま子会社株式(資産)へ振り替えます。
【仕訳】
(子会社株式)31,500,000/(その他有価証券)31,500,000
G株式は問3で出てきますが、今回はこれで終わりなので内訳は作りません。
3月31日3行目 その他有価証券の評価替え
ここまでの残高は以下の通りとなっています。
A株式、B株式、D株式について時価による評価替えを行います。C株式は非上場株式のため評価替えは不要です。
(A株式)
時価評価額:@2,600円×2,500株=6,500,000円
評価差額:6,500,000円(時価)-5,250,000円(簿価)=1,250,000円
(B株式)
時価評価額:@3,500円×3,500株=12,250,000円
評価差額:12,250,000円(時価)-9,362,500円(簿価)=2,887,500円
(D債券)
債券については、額面1,000円当たりの口数という形で取引されています。
購入口数:2,500,000円(簿価)÷@1,000円=2,500口
時価評価額:@1,050円×2,500口=2,625,000円
評価差額:2,625,000円(時価)-2,500,000(簿価)=125,000円
合計:4,262,500円
【仕訳】
(その他有価証券)4,262,500/(その他有価証券評価差額金)4,262,500
あとは、貸借差額を次期繰越に記入すれば完成です。
次回は第2問[設問]問2から解説します。