ポリテク火星出張所!

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156回日商簿記2級の解答について~第3問 連結貸借対照表の作成①~

156回の最後は連結貸借対照表です。過去の記事をご覧の方は大体把握できていると思いますが、貸借対照表のときは、損益科目は基本関係ありません。損益科目は計算のために最低限必要なことをするときだけにとどめておきましょう。

ということでまずは基本編の解説です。

 

 次の[資料1]から[資料3]にもとづいて、連結第2年度(X2年4月1日からX3年3月31日)の連結貸借対照表を作成しなさい。なお、本問では「法人税、住民税及び事業税」、「消費税」および「税効果会計」を考慮しない。

[資料1]X3年3月31日におけるP社(親会社)およびS社(子会社)の試算表

ただし、P社の試算表は決算整理前残高試算表であるのに対し、S社の試算表は決算整理後残高試算表である点に留意すること。

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[資料2]P社の決算整理事項

1.売掛金のうち外貨建てのものが12,000千円(取得時レート:1ユーロ=120円)ある。当期末のレートは1ユーロ=130円である。

2.期末時点の売掛金(S社に対する7,000千円を除く)に対し、1%の貸倒引当金を差額補充法で設定する。

3.有形固定資産の減価償却を、次の条件にもとづき行う。

建物 耐用年数:30年 前期末までの経過年数:10年 残存価額:ゼロ 償却方法:定額法

備品 耐用年数:5年 前期末までの経過年数:1年 残存価額:ゼロ 償却方法:200%定率法

4.当期の退職給付費用は6,800千円である。

5.支払リース料は、オペレーティング・リース取引に対して、3年前から継続して向こう1年分のリース料を10月1日に毎年同額ずつ支払ったことによるものである。

[資料3]P社とS社の連結に際し、必要となる事項

1.P社は、X1年4月1日にS社の発行済株式総数の60%を400,000千円で取得し、これ以降S社を連結子会社とし、連結財務諸表を作成している。X1年4月1日時点でのS社の純資産の部は、次のとおりであった。

資本金 150,000千円

資本剰余金(すべて資本準備金) 150,000千円

利益剰余金(すべて繰越利益剰余金) 130,000千円

2.のれんは、発生年度から10年間にわたり定額法で償却を行っている。

3.S社は、前期は配当を実施していないが、当期は繰越利益剰余金を財源に25,000千円の配当を実施した。

4.前期よりP社より商品をS社に販売しており、前期・当期とも原価に30%の利益を加算して単価を決定している。当期におけるP社の売上高のうち、S社向けの売上高は91,000千円である。また、S社の期首商品のうち3,900千円および期末商品のうち6,500千円はP社から仕入れたものである。

5.S社は保有している土地90,000千円を決算日の直前に80,000千円でP社に売却しており、P社に売却しており、P社はそのまま保有している。未実現利益を全額相殺消去すること。

6.連結会社(P社およびS社)間での当期末の債権債務残高は、次のとおりである。なお、P社・S社とも、連結会社間の債券に関して、貸倒引当金を設定していない。

【P社のS社に対する債権債務】

売掛金 7,000千円

未払金 80,000千円

【S社のP社に対する債権債務】

買掛金 7,000千円

未収入金 80,000千円

7.退職給付に関し、連結にあたり追加で計上すべき事項は生じていないため、P社およびS社の個別上の数値をそのまま合算する。

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決算整理事項1 外貨建て売掛金の換算替え

 売掛金のうち外貨建てのものが12,000千円(取得時レート:1ユーロ=120円)ある。当期末のレートは1ユーロ=130円である。

まず、ユーロに換算します。

換算前の売掛金(ユーロ):12,000千円÷@120円=100ユーロ

そして、当期末のレートに換算替えします。

換算後の売掛金(円):100ユーロ×@130円=13,000千円

最後に換算後から換算前の売掛金を差し引くと、為替差損益が出ます。

為替差損益:13,000千円-12,000千円=1,000千円(値上がり)

【決算整理仕訳】

売掛金)1,000/(為替差損益)1,000

決算整理事項2 貸倒引当金の設定

 期末時点の売掛金(S社に対する7,000千円を除く)に対し、1%の貸倒引当金を差額補充法で設定する。

決算整理事項1の売掛金の変動を忘れないように計算します。

貸倒引当金繰入額:(342,000千円+1,000千円【決算整理事項1より】-7,000千円【S社分】)×1%-1,900千円=1,460千円

【決算整理仕訳】

(貸倒引当金繰入)1,460/(貸倒引当金)1,460

※費用は試算表によると「販売費及び一般管理費」となっていますが、冒頭でもお話しした通り、損益項目は全然関係ないので、そのままの科目にしています。

決算整理事項3 固定資産の減価償却

 有形固定資産の減価償却を、次の条件にもとづき行う。

建物 耐用年数:30年 前期末までの経過年数:10年 残存価額:ゼロ 償却方法:定額法

備品 耐用年数:5年 前期末までの経過年数:1年 残存価額:ゼロ 償却方法:200%定率法

特にひねるような問題はありません。基本通りに進めるだけです。

①建物の減価償却

定額法により処理します。

当期の減価償却:234,000千円÷30年=7,800千円

減価償却累計額(各自推定):7,800千円×10年=78,000千円

【決算整理仕訳】

減価償却費)78,000/(建物減価償却累計額)78,000

②備品の減価償却

こちらは200%定率法で処理します。

減価償却累計額(各自推定):100,000千円÷5年×200%=40,000千円

当期の減価償却:(100,000千円-40,000千円)÷5年×200%=24,000千円

【決算整理仕訳】

減価償却費)24,000/(備品減価償却累計額)24,000

決算整理事項4 退職給付費用の計上

 当期の退職給付費用は6,800千円である。

こちらも特に解説はありません。

【決算整理仕訳】

(退職給付費用)6,800/(退職給付引当金)6,800

決算整理事項5 前払費用の計上(費用の繰り延べ)

 支払リース料は、オペレーティング・リース取引に対して、3年前から継続して向こう1年分のリース料を10月1日に毎年同額ずつ支払ったことによるものである。

リース料は10月1日(決算日3月31日)に1年分を支払う契約となっています。そのため、4月からの6か月分は次年度の経費となります。

6か月分を1期の単位とすると、36,000円÷2期=18,000千円とやってしまうとハマります。

以下の図を見てください。

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「円」となっていますが、「千円」の誤りです。

貸借対照表に計上されているのは、2年度上半期分もあります。したがって3期分の金額が計上されていることとなります。

つまり1期分の金額は、36,000千円÷3期=12,000千円となります。

【2年3月末の仕訳】

(前払費用)12,000/(支払リース料)12,000

【2年4月再振替仕訳】

(支払リース料)12,000/(前払費用)12,000

この時点で、まず支払リース料が12,000千円計上されています。

【2年10月リース料支払時】

(支払リース料)24,000/(現金預金など)24,000

この繰り返しで仕訳が行われています。これで支払リース料の残高が、現状の36,000千円となります。

したがって3年3月末の仕訳と2年3月末の仕訳と同じになります。

【決算整理仕訳】

(前払費用)12,000/(支払リース料)12,000

 

次回は[資料3]の解説をします。

156回日商簿記2級の解答について~第2問 有価証券②~

前回に引き続き[設問]問2からです。

有価証券利息及び投資有価証券売却損益の計算

①有価証券利息の計算

9月30日 債券の利払い(前期)

利払い対象の債券はD債券とE債券です。利子の計算は以下の式にて行います。

額面金額×年利率×月数/12カ月

(債券利子)

D債券:5,000,000円×0.4%×6ヵ月/12カ月=10,000円

E債券:5,000,000円×0.3%×6ヵ月/12カ月=7,500円

 

12月31日 D債券の一部売却

前回、この仕訳で経過利息として有価証券利息が出てきています。

D債券2,500円(経過利息)

 

3月31日2行目 債券の利払い(後期)

D債券の帳簿残高(元本)が50%に減り、F債券が追加となっています。

(債券利子)

D債券:2,500,000円×0.4%×6ヵ月/12カ月=5,000円

E債券:5,000,000円×0.3%×6ヵ月/12カ月=7,500円

F債券:4,000,000円×0.4%×6ヵ月/12カ月=8,000円

ちなみに、E債券は月中変動がないため、最初から1年分で計算してしまった方が早いです。

 

3月31日3行目 満期保有目的債券の期末処理

これも前回説明済みです。

(E債券)

金利調整差額:5,000,000円-4,900,000円=100,000円

当期償却額:100,000円÷5年=20,000円

(F債券)

金利調整差額:4,000,000円-4,060,000円=▲60,000円

当期償却額:▲60,000円÷6年×6ヵ月/12カ月=▲5,000円

 

以上すべての合計を足すと答えになります。

【正解】

有価証券利息の合計55,500円

②有価証券売却損益の計算

有価証券の売却は11月20日B株式と12月31日D債券の2件です。問1の解答過程で既に計算済みとなります。仕訳だけ再掲します。

11月20日 B株式の一部売却

【仕訳】

当座預金)1,700,000/(その他有価証券)1,337,500

          /(有価証券売却益)362,500

12月31日 D債券の一部売却

【仕訳】

当座預金)2,600,000/(その他有価証券)2,500,000

           /(有価証券利息)2,500

          /(有価証券売却益)97,500

【正解】

有価証券売却(:362,500円+97,500円=460,000円

G社連結合併による開始仕訳

 第2問の最後は開始仕訳の投資と資本の相殺です。問題文で「最長年数で償却する予定」と書かれていますが、解答に全く関係ない情報です。

[資料4]により、G社の純資産の情報が記載されています。

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純資産の持分比率は、自社が60%で、非支配株主持分が40%となっています。そうすると、子会社株式の元値が30,600,000円であることがわかります。それを[資料2]3月31日1行目により31,500,000円で購入しています。したがってその差額900,000円がのれん(資産)となります。

 

 【正解の仕訳】

(資本金)24,000,000/(子会社株式)31,500,000

利益準備金)6,000,000/(非支配株主持分)20,400,000

(繰越利益剰余金)21,000,000/

(のれん)900,000/

 

なお、仕訳の説明を省いていますので、以前の記事を参考にしてください。

polytech-mk.hatenablog.com

 

156回日商簿記2級の解答について~第2問 有価証券①~

商業簿記に戻って、第2問の有価証券の問題です。

設問が問1~問3までありますが、問3だけは連結会計の開始仕訳の問題となっており、他とは別個に解くことができます。そんなに難しくはないので、先に解いてしまっても構わないと思います。

工夫すれば、3→2→1という風に一番面倒な設問1を後回しにすることも可能ですから、終了時間が迫っているときは、これらを選別して解くこともテクニックのひとつとなります。

 

 有価証券取引に関する[資料1]から[資料4]までにもとづいて、下記の設問に答えなさい。本問では、有価証券の売却原価の算定は移動平均法により、税効果会計は考慮しない。

[資料1]20×1年3月31日現在の投資有価証券の明細

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(注1)D債券は20×0年3月31日に取得したものであり、償還日は20×8年3月31日、利率は年0.4%、利払いは3月末と9月末の年2回均等額の支払いである。

(注2)E債券は20×1年3月31日に取得したものであり、償還日は20×6年3月31日、利率は年0.3%、利払いは3月末と9月末の年2回均等額の支払いである。

 [資料2]20×1年4月1日から20×2年3月31日までの投資有価証券の取引

4月1日 その他有価証券について、期首における洗替処理を行う。

5月10日 A株式500株を1株¥2,500で購入し、普通預金から支払う。

7月15日 B株式1,000株を1株¥3,200で購入し、普通預金から支払う。

9月30日 債券の利払いが普通預金に入金された。

10月1日 F債券¥4,000,000(非上場、償還日20×7年9月30日、利率は年0.4%、利払いは3月末と9月末の年2回均等額の支払い)を¥4,060,000(経過利息は発生しないものとする)で購入し、普通預金から支払い、満期保有目的とした。

11月20日 B株式500株を1株¥3,400で売却し、代金は当座預金に入金された。

12月31日 D債券の50%を¥2,600,000(経過利息¥2,500を含む)で売却し、代金は当座預金に入金された。

3月31日 G株式9,000株を¥31,500,000で、普通預金から支払って取得した。株式の所有比率が60%で、子会社に該当するため、いったんその他有価証券に計上後に子会社株式に振替える。

3月31日 債券の利払いが普通預金に入金された。

3月31日 その他有価証券を時価評価するとともに、満期保有目的債券についてそれぞれ償却原価法(定額法による)の会計処理を行う。

[資料3]20×2年3月31日の有価証券の時価は、次の通りであった。

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[資料4]G社の20×2年3月31日現在の純資産は、資本金¥24,000,000、利益準備金¥6,000,000、繰越利益剰余金¥21,000,000であった。

[解答用紙]

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満期保有目的債券勘定及びその他有価証券勘定の記入

問1 満期保有目的債券勘定とその他有価証券勘定の記入を完成しなさい。総勘定元帳は英米式によって締め切るものとする。

基本的に[資料2]をベースとして解いていきますが、日付の順番通り記入していっても構いませんが、今回は勘定科目ごとに解いていきたいと思います。

①満期保有目的債券勘定の記入

4月1日 洗替法による再振替処理

まずは[資料1]に注目してください。現在の帳簿価額は取得原価となっています。満期保有目的債券はE債券のみとなります。再振替処理はありませんので、そのままの金額を解答用紙に転記します。

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10月1日 F債券の購入

 新しい債券を4,060,000円で購入し、普通預金から支払っています。

【仕訳】

(満期保有目的債券)4,060,000/(普通預金)4,060,000

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3月31日3行目 満期保有目的債券の期末処理

E債券とF債券について、償却原価法(定額法)による金利調整差額の処理をします。

①E債券

金利調整差額:5,000,000円(額面金額)-4,900,000円(取得原価)=100,000円

当期償却額:100,000円÷5年(20×1年~20×6年)=20,000円

 【仕訳】

(満期保有目的債券)20,000/(有価証券利息)20,000

②F債券

金利調整差額:4,000,000円(額面金額)-4,060,000円(取得原価)=▲60,000円

当期償却額:▲60,000円÷6年(20×1年~20×7年)×6ヵ月/12カ月=▲5,000円

取得時期が10月1日のため、償却額を半年分にするのを忘れずに…

【仕訳】

(有価証券利息)5,000/(満期保有目的債券)5,000

あとは、貸借差額を次期繰越に記入すれば完成です。

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②その他有価証券勘定の記入

4月1日 前期繰越

その他有価証券の帳簿価額はすべて時価となっています。C株式のみ非上場株式のため取得原価のままです。

A株式:4,800,000円

B株式:9,000,000円

C株式:2,500,000円

D債券:5,030,000円

合 計21,330,000円

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 4月1日 洗替法による再振替処理

上記のその他有価証券を取得原価に戻します。なお、C株式は処理不要です。

わかりやすいようにそれぞれ表記していますが、実際には合算して転記します。

【仕訳】

(その他有価証券評価差額金)800,000/(その他有価証券)800,000

(その他有価証券評価差額金)1,500,000/(その他有価証券)1,500,000

(その他有価証券評価差額金)30,000/(その他有価証券)30,000

転記合計2,330,000円

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【各株式の内訳】

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5月10日 A株式の追加購入

購入価額:@2,500円×500株=1,250,000円

【仕訳】

(その他有価証券)1,250,000/(普通預金)1,250,000

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【A株式の内訳】

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7月15日 B株式の追加購入

購入価額:@3,200円×1,000株=3,200,000円

【仕訳】

(その他有価証券)3,200,000/(普通預金)3,200,000

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【B株式の内訳】

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 11月20日 B株式の一部売却

問題文冒頭に載っていますが、有価証券の売却原価の算定は移動平均法により行うこととします。

B株式売却時の単価:(7,500,000円+3,200,000円)÷(3,000株+1,000株)=2,675円

売却価額:@3,400円×500株=1,700,000円

売却原価:@2,675円×500株=1,337,500円

【仕訳】

当座預金)1,700,000/(その他有価証券)1,337,500

           /(有価証券売却益)362,500

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【B株式の内訳】

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12月31日 D債券の一部売却

D債券の50%を売却しています。もともとの在庫なので移動平均法は関係ありません。

経過利息2,500円は、今まで保有していた利子になるので、有価証券利息(収益)で計上します。

売却原価:5,000,000円(帳簿価額)×50%=2,500,000円

【仕訳】

当座預金)2,600,000/(その他有価証券)2,500,000

          /(有価証券利息)2,500

          /(有価証券売却益)97,500

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【D債券の内訳】

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3月31日1行目 子会社株式の購入

まずは購入したG株式31,500,000円をその他有価証券(資産)として計上します。

【仕訳】

(その他有価証券)31,500,000/(普通預金)31,500,000

そして、そのまま子会社株式(資産)へ振り替えます。

【仕訳】

(子会社株式)31,500,000/(その他有価証券)31,500,000

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G株式は問3で出てきますが、今回はこれで終わりなので内訳は作りません。

3月31日3行目 その他有価証券の評価替え

ここまでの残高は以下の通りとなっています。

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A株式、B株式、D株式について時価による評価替えを行います。C株式は非上場株式のため評価替えは不要です。

(A株式)

時価評価額:@2,600円×2,500株=6,500,000円

評価差額:6,500,000円(時価)-5,250,000円(簿価)=1,250,000円

(B株式)

時価評価額:@3,500円×3,500株=12,250,000円

評価差額:12,250,000円(時価)-9,362,500円(簿価)=2,887,500円

(D債券)

債券については、額面1,000円当たりの口数という形で取引されています。

購入口数:2,500,000円(簿価)÷@1,000円=2,500口

時価評価額:@1,050円×2,500口=2,625,000円

評価差額:2,625,000円(時価)-2,500,000(簿価)=125,000円

合計4,262,500円

【仕訳】

(その他有価証券)4,262,500/(その他有価証券評価差額金)4,262,500

あとは、貸借差額を次期繰越に記入すれば完成です。

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次回は第2問[設問]問2から解説します。

 

156回日商簿記2級の解答について~第5問 直接原価計算(CVP分析)②~

前回に引き続き、損益分岐点売上高からです。

損益分岐点売上高の計算

損益分岐点売上高とは、営業利益がちょうどゼロとなる売上高をいいます。これより売上高が落ち込むと赤字になる指針となります。

計算のしかたは、生産量・販売量をχとして、損益計算書を作成します。

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変動費の単価:@400円+@140円+@80円=620円

損益分岐点売上高は基本的に方程式で計算します。表中から④の答えは、3,400,000円となります。

直接原価計算と全部原価計算の違い

今までは生産量=販売量でしたが、月末在庫が余ってしまった場合(生産量>販売量)どうなるのかということが焦点となっています。

資料⑴固定加工費の( )書きにヒントが書かれています。全部原価計算では、固定加工費は販売量/生産量で計算します。

問題では生産量5,000個に対して販売量が4,000個になっていますので、以下の通りとなります。

全部原価計算による固定加工費:840,000円×4,000個/5,000個=672,000円

その他は直接原価計算と同じ計算方法(@4,000個で計算)となります。

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以上により⑤の答え228,000円⑥の答え396,000円となります。

全部原価計算の方は、固定加工費の部分で1,000個余計に製造しているにもかかわらず、その分を翌月回し(売れたときに改めて計上)にしています。そのため、直接原価計算より営業利益が増える結果となってしまうのです。

純粋に利益を知りたいときには直接原価計算が適していることとなります。

156回日商簿記2級の解答について~第5問 直接原価計算(CVP分析)①~

今回の直接原価計算の特徴は、全部原価計算との比較と会話形式の解答用紙となっています。直接原価計算損益計算書を作成した後に、全部原価計算損益計算書との違いを検討することとなります。

 

 米菓を製造・販売するニッショウ製菓では、これまで全部原価計算による損益計算書のみを作成してきたが、製品Aの月間利益計画を作成するため、直接原価計算による損益計算書を作成することとした。製品Aの販売価格は1㎏当たり1,000円を予定している。次の[資料]にもとづいて、その下の[会話文]の(ア)(イ)に入るもっとも適切な語を選んで○で囲みなさい。また、(①)~(⑥)に入る金額を計算しなさい。

[資料]

⑴ 製品A1㎏当たり全部製造原価

 直接材料費 400円/㎏ 

 変動加工費 140円/㎏

 固定加工費 月額 840,000円

(全部原価計算では月間生産量をもとに配賦率を算定する)

⑵ 販売費及び一般管理費

 変動販売費 80円/㎏

 固定販売費及び一般管理費 月額 452,000円

⑶ 月間生産・販売計画(仕掛品は存在しない)

 月初在庫量 0㎏

 月間販売量 4,000㎏

 月間生産量 4,000㎏

 月末在庫量 0㎏

[会話文]

社長:全部原価計算と違って、直接原価計算では、売上高から変動費を差し引いて(ア)利益が出てくるわけですね。

経理部長:そうです。月間生産・販売量を4,000㎏とする現在の計画では、月間(ア)利益は(①)円になります。仮に、月間生産・販売量を5,000㎏とすると、月間(ア)利益は(②)円になります。

社長:なるほど。(ア)利益は売上利益に(イ)変化するわけですね。

経理部長:そうです。次に(ア)利益から固定費を差し引いて営業利益を出します。月間生産・販売量を4,000㎏とする現在の計画では、月間営業利益は(③)円になります。

社長:月間営業利益がマイナスにならないようにするためには、月間売上高はいくら必要になりますか。

経理部長損益分岐点ですね。損益分岐点の月間売上高は(④)円です。

社長:わかりました。この月間売上高は上回らないといけませんね。ところで、直接原価計算の営業利益は全部原価計算の営業利益と同じ金額になるのですか。

経理部長:現在の計画ではそうですが、生産量と販売量が一致しないときは同じ金額になりません。仮に、月間生産量だけを5,000㎏に増やし、月間販売量は4,000㎏のまま変わらないとします。直接原価計算では、月間営業利益は(⑤)ですが、全部原価計算では、月間営業利益は(⑥)円になります。

社長:販売量が変わらないのに、生産量を増やして利益が増えるのはおかしいですね。

経理部長:そのとおりです。直接原価計算の方が利益計画に適しているといえるでしょう。

[解答用紙]

アの選択肢:売上総・貢献・経常

イの選択肢:比例して・反比例して・関係なく

 直接原価計算の各データの計算

まずは、直接原価計算損益計算書を作成するためのデータを作成します。

売上高については、月間販売量は4,000㎏となっています。販売単価は問題文本文により@1,000円ですから、これを掛けて売上高を計算します。

売上高:@1,000円×4,000㎏=4,000,000円

次に売上原価の方ですが、⑶のデータより月間生産量は4,000㎏となっています。変動費については、この4,000㎏を掛けて金額を出します。

固定費は賃借料・減価償却費など製造量に関係なく発生するものです。何も作業しなかったからと言って家賃がゼロになることはありません。したがって、そのままの数字を使用します。

直接材料費:@400円×4,000㎏=1,600,000円

変動加工費:@140円×4,000㎏=560,000円

固定加工費840,000円

変動販売費:@80円×4,000㎏=320,000円

変動費の計算ですが、(@400円+@140円+@80円)×4,000㎏というように電卓で打てば、多少のスピードアップにつながります。

固定販売費及び一般管理費452,000円

これを変動費と固定費にまとめると以下の通りとなります。

変動費:1,600,000円+560,000円+320,000円=2,480,000円

固定費:840,000円+452,000円=1,292,000円

直接原価計算による損益計算書の作成①

直接原価計算では売上高から変動費を差し引いたものを貢献利益、そこから固定費を差し引いたものが営業利益となります。

したがって、アの選択肢は、「貢献」となります。

売上高-変動費=貢献利益

貢献利益-固定費=営業利益

これを表にまとめると以下の通りとなります。

 

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 表から①の答え1,520,000円となり、③の答え228,000円となります。

直接原価計算による損益計算書の作成②

次は月間生産費及び販売量を5,000個に変更したらどうなるかという問題です。

変動費は販売量によって変動しますが、固定費の変動はありません。

売上高:@1,000円×5,000個=5,000,000円

変動費:(@400円+@140円+@80円)×5,000個=3,100,000円

固定費1,292,000円

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したがって、②の答え1,900,000円となります。

売上高も変動費も同じ量を掛けていますので、生産量・販売量の数に応じて増減します。つまり、イの選択肢は、「比例して」が正解となります。

次回は、損益分岐点売上高から解説をします。

 

156回日商簿記2級の解答について~第4問 費目別計算②~

前回に引き続き第4問からです。

製造間接費の計算

 4.から直接作業時間を配賦基準として予定配賦率を計算します。

予定配賦率=(年間)製造間接費予算÷(年間)直接作業時間

 ∴ 44,800,000円÷32,000時間=@1,400円

これに2.直接工の作業時間2,600時間を掛けたものが、当月の製造間接費予定配賦額となります。

 製造間接費予定配賦額:@1,400円×2,600時間=3,640,000円

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借方には、間接材料費、間接労務費、間接経費の金額が入ります。そして、貸借差額が製造間接費配賦差異となります。

本来は、この配賦差異の流れは、製造間接費配賦差異勘定(借方)⇒売上原価勘定(借方)となりますが、問題上、製造間接費配賦差異勘定は出てきませんので、直接売上原価勘定へ計上します。

なお、借方差異ということは予定よりも費用が余計にかかっているということで不利差異となります。

仕掛品ボックスの完成

1.の仕掛品の情報と材料費・労務費・製造間接費のボックスの情報から以下のものが完成します。

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これを元に解答用紙の仕掛品勘定を作成します。

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製品ボックスと売上原価ボックスの作成

1.製品の情報と仕掛品ボックスで製品ボックスを作成します。さらに、その製品ボックスの当月販売高と製造間接費配賦差異(原価差異)を足すと売上原価ボックスが完成します。

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この2つのボックスをもとに月次原価計算書の解答用紙を埋めると、以下の通りとなります。

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仕掛品ボックスまで出来てしまえば、後は流れ作業のようになります。

受験生が一番つまづきやすい点は、製造間接費の予定配賦額をきちんと出せるかという点でしょうか。

難易度的にはそれほど難しくない部類に入りますので、ひとつひとつボックスからボックスへの転記を間違えないように注意しましょう。

 

 

156回日商簿記2級の解答について~第4問 費目別計算①~

今回は工業簿記です。なお、問題順ではなく解く順番で解説しています。

余談ですが、ファイナンシャルプランニング技能士試験にも簿記の知識が多く入っています。保険関係では、前払保険料の仕訳、税金関係では、事業所得のところで減価償却費の計算なんかが出てきます。意外にも月割計算をさせてくるので、驚きです。

このように社会に使えそうな資格(簿記・FP・宅建行政書士司法書士試験など)はいろいろなところで繋がっていることが多く、複数の資格取得を狙うチャンスもありますので、是非チャレンジしてみてください。

 

 次の[資料]にもとづいて、A工業の当月の仕掛品勘定と月次損益計算書を作成しなさい。

[資料]

1.棚卸資産有高(単位:円)

(月初有高)

素材  1,500,000

部品  1,400,000

燃料     250,000

仕掛品 3,520,000

製品  1,400,000

(月末在高)

素材  1,600,000

部品  1,350,000

燃料     310,000

仕掛品 3,650,000

製品  1,200,000

2.直接工の作業時間及び賃率

直接工の作業時間の内訳は、直接作業時間2,600時間、間接作業時間250時間であった。なお、賃金計算では、平均賃率である1時間当たり1,300円を適用している。

3.当月中の支払高(単位:円)

素材仕入高         5,800,000

部品仕入高         4,720,000

燃料仕入高            750,000

工場消耗品消費高        35,000

間接工賃金当月支払高    740,000

間接工賃金前月未払高    120,000

間接工賃金当月未払高    130,000

電力料金(測定値)     240,000

保険料(月割額)      390,000

減価償却費(月割高) 1,200,000

水道料金(測定値) 80,000

4.製造間接費は直接作業時間を配賦基準として予定配賦し、配賦差異は売上原価に賦課している。なお、A工業の年間の製造間接費予算は44,800,000円、年間の予定総直接作業時間は32,000時間である。

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材料費の計算

まずは材料費の計算です。材料費に関係する勘定科目は、素材・部品・燃料・工場消耗品の4つです。

この4つを直接材料費と間接材料費に選別する必要があります。

直接材料費:主要材料費(主に素材、材料)、買入部品

間接材料費:補助材料費(塗料、燃料など)、工場消耗品費、消耗工具器具備品費

マニュアル通りでは以上のような区分となります。

ど忘れしたりして、どうしてもわからない場合には、大きい金額は直接材料費で、小さい金額は間接材料費となります。部品勘定もそこそこ多いよと言えばそうなのですが…あくまで苦肉の策です。

この問題はボックスで解いていきます。

素材・部品・燃料は、月初有高+当月仕入高-月末在高で当月消費高を計算します。

工場消耗品は、消費高が最初から示されていますので、そのままの金額となります。

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労務費の計算

労務費は直接工賃金と間接工賃金に分けて解くのがスタンダードですが、直接費(仕掛品へいくもの)と間接費(製造間接費にいくもの)に分けて計算した方が早いです。

 仕訳問題の場合は別ですが、今回の解答は仕掛品ボックスと月次損益計算書の作成となりますので、途中経過はなるべく省略した方が良いです。

まず、直接労務費ですが、直接工の直接作業時間のみです。したがって、次のとおりとなります。

直接工の直接労務:@1,300円(平均賃率)×2,600時間=3,380,000円(当月消費高)

この金額はそのまま仕掛品ボックスへ移動となります。

引き続き間接労務費の計算です。材料費と同じくボックスで解きますが、直接工の間接作業時間を当月消費高に加算します。

直接工の間接労務:@1,300円(平均賃率)×250時間=325,000円(当月消費高)

間接工の間接労務費は、当月支払高+当月未払高-前月未払高で当月消費高となります。ボックスが他と比べて特殊なので注意が必要です。

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製造間接費合計:325,000円(直接工)+750,000円(間接工)=1,075,000円

間接経費の計算

外注費などの直接経費は今回ありません。電気代、保険料、減価償却費、水道代のすべてを加算したものとなります。

間接経費:240,000円(電力料金)+390,000円(保険料)+1,200,000円(減価償却費)+80,000円(水道料金)=1,910,000円

 

次回は製造間接費から解説をします。