問2 [資料Ⅰ]の⑵ ⑶ ⑷、および、[資料Ⅱ]の⑴ ⑵ ⑷に関する決算に必要な整理仕訳を、答案用紙の該当欄に示しなさい。ただし、勘定科目は、次の中から最も適当と思われるものを選び、正確に記入すること。
現金、当座預金、普通預金、仮払金、受取手形、仮払法人税等、不渡手形、消耗品費、広告宣伝費、通信費、為替差損益、受取配当金、支払配当金、借入金、買掛金
問2は、当座預金と現金についての決算整理仕訳となります。まずは、前半部分の当座預金を説明します。
⑵は不渡手形の話です。通常、授業で習った知識だけでいえば、未決済で保管中の受取手形が不渡りになるので、以下の仕訳をします。
*通常時の仕訳*
(不渡手形)500,000/(受取手形)500,000
ところが、今回31日の時点で受取手形が決済され、その金額が当座預金に入金されたと思って、仕訳をしています。
*31日のときの仕訳*
つまり、受取手形の残高はすでに消えているので、代わりに当座預金を減らす仕訳が正解となります。
*⑵正解の仕訳*
(不渡手形)500,000/(当座預金)500,000
このようにして、授業で習わなかった内容でも、流れをつかむ事で正解に導くことができます。このことを「現場対応力」と呼んでいます。自分の知ってる知識と前後の仕訳を組み立てる応用力が必要となります。
⑶は電話料金の自動引落しがなされたのを記帳すればいいだけなので、特に問題はないと思います。
*⑶正解の仕訳*
(通信費)14,000/(当座預金)14,000
⑷は小切手を銀行に持って行って当座預金口座に入金するつもりが失念して、金庫に残っていたケースです。そのため、31日に以下の仕訳をしています。ちなみに他店振出の小切手は、現金扱いですね。
*31日の仕訳*
(当座預金)120,000/(現金)120,000
この31日に仕訳を取消しすればいいので、正解は逆仕訳をすればいいだけとなります。
*⑷正解の仕訳*
(現金)120,000/(当座預金)120,000
確認ですが、⑵、⑶、⑷ともに問1の当座預金勘定調整表の当座預金の減算の項目になっています。続いては後半の部分、現金査算に入ります。
まずは、[資料Ⅰ]の現金の状況について確認をします。現金の帳簿残高が1,575,650円、現金の実際在高が1,703,650円になっています。つまり、128,000円現金が不足していることとなります。
今回は、仕訳がしっかりしていれば、ここの部分は無視しても問題ありません。でも、「この数字は何のためにあるんだろうか」と思う人のために、あえてここの金額を今のうちに確認しておきます。
⑴は外貨建て換算の問題です。米国紙幣100ドル札50枚、50ドル札90枚を3月31日の為替レートに換算すると以下のとおりとなります。
ドル紙幣の総額:(100ドル×50枚)+(50ドル×90枚)=9,500ドル
3月31日時点の換算額:9,500ドル×@110円=1,045,000円
帳簿の換算によると950,000円のため、95,000円値上がりしたことがわかります。
これについて、為替差損益で処理します。この為替差損益勘定については、借方残高で費用、貸方残高で収益とオールマイティに使えるものです。今回、為替差益が起こっているので、貸方に為替差損益が入ります。あとは現金も増加するので、以下の仕訳が正解となります。
*⑴正解の仕訳*
(現金)95,000/(為替差損益)95,000
⑵では従業員の出張のため、旅費の仮払いを行っています。しかし、出金の会計処理が行われていなかったので、その仕訳を行います。
簿記の試験では、なぜか経理を正しく行っていないダメ社員がたびたび出現します。この社員のせいで、面倒な後始末をしなければならないと思うと複雑な気持ちになります。そんなときは、心の中で「しっかり仕事しろよ!」と思いながら解くんでしょうね。
通常は、期中に戻ってきて精算を行い、仮払金の金額はゼロになるはずですが、決算日をまたいでしまった場合には、そのままにするしかありません。
*⑵正解の仕訳*(仮払い時の仕訳のみ)
(仮払金)100,000/(現金)100,000
⑶は[資料Ⅰ]の⑷と同じ内容なのでカットされています。現金は120,000円増やしています。
⑷は少し難しい問題となっています。まずは( )内は無視して考えます。
金庫内実査表の最後の欄「12月決算会社の配当金領収証」について、仕訳を行います。配当金領収書については、現金とみなすので、現金の増加となります。そして、相手勘定は受取配当金(収益)で処理します。
*⑷の( )を無視した仕訳*
(現金)8,000/(受取配当金)8,000
個人事業であれば、この仕訳でOKなのですが、法人企業となると、源泉所得税のことも考えないとなりません。この源泉所得税は、法人税の支払と考えるため、仮払法人税等(資産)で処理します。
源泉所得税控除前の金額:8,000円÷(100%-20%)=10,000円
源泉所得税の金額:10,000円-8,000円=2,000円
計算式を書きましたが、金額がきれいなので暗算でできますね。そして、受取配当金も所得税控除前で記入するため10,000円に修正します。
*⑷の正解の仕訳*
(現金)8,000/(受取配当金)10,000
(仮払法人税等)2,000
この⑴から⑷の現金を銀行勘定調整表風にすると以下の結果となります。
現金帳簿残高 1,575,650
(加算)⑴95,000+⑶120,000+⑷8,000=223,000
(減算)⑵100,000
現金実査残高 1,698,650
ここで、[資料Ⅱ]の金庫内実査表は1,703,650円なので、現金が合わないことがわかります。では、この合わない原因は何でしょうか?
まず、⑴ですが、実査の段階では3月31日のレート換算前なので、金庫内実査表の方を変えないと合わない原因となります。
また、⑵の仮払金も従業員からの受取書を現金とみなして計算しています。こちらも本当は現金ではないので、金庫内実査表を訂正しないとなりません。
*正しい金庫内実査表*
これで、間違いなく仕訳が行われていると確認できますが…どうでしょう?確認作業をすることによって逆に混乱しますよね。そして、実務なら仕方ありませんが、試験でこんなことやってられません。
ということで冒頭にも話しましたが、仕訳がしっかりしていれば、[資料Ⅰ]の現金の表(帳簿残高と実査残高)は必要ない情報ということになります。これを深くまで突き詰めると、「仕訳が間違っているのではないか」という罠に陥ることになり、時間を無駄に費やすことになります。
このように簿記の試験には、必要ない情報も散りばめられていることもあるので、注意が必要です。
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