ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

153回日商簿記2級の解答について~第4問 本社工場会計~

いきなり「第3問抜けているのでは?」と思われるかもしれませんが、弊事務所での解き方の推奨は、1・2・4・5・3もしくは1・4・5・2・3となっています。

まれに1・4・5・3・2(第150回)のような、第2問の個別論点問題が難しくて、第3問が単純な貸借対照表だったりしますが、原則は第3問の財務諸表は最後に解きます。その理由は、第3問にてこずってしまって、簡単な工業簿記を手が付けられず、不合格となってしまう可能性があるからです。

ということで、今回は工業簿記です。予想していた問題が唯一当たった場所です。毎年1回は工業簿記でも仕訳問題が出ることと、本社工場会計の問題がご無沙汰だったことから、さほど予想が難しくなかったといえます。

この論点のポイントは、「製品の倉庫がどこにあるか?」ということです。問題によって、工場にあったり、本社にあったり、また両方にある場合もあります。

材料と作業途中の仕掛品は工場で保管するのは間違いないのですが、完成品については、それぞれのパターンによって仕訳が変わりますので、注意が必要です。

あとは基本ですが、本社では現金預金の決済をし、工場では製造を行います。そのため、勘定科目の振り分けを頭の中で整理しておきましょう。

第4問 本社工場会計

問 X社は本社会計から工場会計を独立させている。材料と製品の倉庫は工場に置き、材料購入を含めて支払い関係は本社が行っている。なお、11月1日の工場元帳の諸勘定の残高は次のとおりであった。

 

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下記の⑴から⑸はX社の11月の取引の一部である。これらについて、工場及び本社で行われる仕訳を示しなさい 。勘定科目は次の中から最も適当と思われるものを選び、正確に記入することとし、工場で使用する勘定科目は、上記の残高試算表に示されているものに限る。

現金 材料 賃金・給料 製造間接費 仕掛品 製品 売上原価 本社 工場 買掛金 当座預金 機械減価償却累計額

 

今回は、工場で使用するものは問題文で指摘されていますので、それ以外が本社で使用する勘定科目となります。

第4問の(1)材料の購入

問 材料900,000円を掛けにて購入し、工場の倉庫に搬入された。

 

通常の仕訳だと以下のとおりです。

(材料)900,000/(買掛金)900,000

これを工場側と本社側に分解します。

まず工場側の仕訳です。残高試算表のとおり、材料勘定は工場ですから、

(材料)900,000/

となります。

原則的な覚え方ですが、本社と工場のどちらが得をしたか、損をしたかで借方に書くか、貸方に書くかが決まります。

(借方)得をした方/(貸方)損をした方

基本的なことですが、工場側の仕訳で工場勘定は使いません。どこと取引をしたのかという意味ですから、工場側の仕訳で使うのは、本社勘定となります。

本社はお金を支払って損をしています。ということで、本社勘定は貸方で処理します。

一方、本社側の仕訳ですが、本社は決済だけを行っていますので、

        /(買掛金)900,000

となります。

工場は材料を受け取って得をしているので、工場勘定は借方で処理します。

このように工場と本社、取引の双方が関わるときは分解して仕訳をします。また、片方だけの仕訳の場合で、何もしない場所は仕訳なしとなります。

なお、今回の問題はすべて双方が絡む仕訳となっています。

*工場側の仕訳*

(材料)900,000/(本社)900,000

*本社側の仕訳*

(工場)900,000/(買掛金)900,000

第4問の(2)賃金の支払い

問 直接工賃金1,400,000円と間接工賃金600,000円を現金で支払った。

 

通常の仕訳は以下のとおりです。

(賃金・給料)2,000,000/(現金)2,000,000

借方が工場側の仕訳、貸方が本社側の仕訳となります。相手勘定は前述のとおりで、賃金が工場側で支払わなければならないのに、実際は本社が支払っています。つまり、工場が得をして、本社が損をしています。

*工場側の仕訳*

(賃金・給料)2,000,000/(本社)2,000,000

*本社側の仕訳*

(工場)2,000,000/(現金)2,000,000

第4問の(3)経費の支払い

問 当月に行われた外部業者による工場清掃作業料金120,000円が当座預金の口座から引き落とされた。

 

通常の仕訳は以下のとおりです。

(製造間接費)120,000/(当座預金)120,000

これも理屈は(2)と同じです。よって、借方が工場側、貸方が本社側となります。

*工場側の仕訳*

(製造間接費)120,000/(本社)120,000

*本社側の仕訳*

(工場)120,000/(当座預金)120,000

ここまでやってきて本社工場会計が出題されれば、当たりの回です。ただし、簡単な分ケアレスミスが起きる問題でもあります。

文中に「外部業者」と書かれているので、とっさに外注加工賃(直接経費)と考えてしまうと、

*工場側の仕訳(誤り)*

(仕掛品)120,000/(本社)120,000

というミスが発生してしまいます。内容は工場の清掃代金ということですから、製造間接費(間接経費)となりますのでご注意ください。

第4問(4)機械の減価償却費の計上

問 工場の機械について、当月の減価償却費300,000円を計上した。

 

通常の仕訳は以下のとおりです。

(製造間接費)300,000/(機械減価償却累計額)300,000

なお、商業簿記では、製造間接費は減価償却費となりますが、工業簿記では工場の備品や機械などにかかる減価償却は製造間接費に計上します。

そして、ここではどっちが得をしたとかいう話ではない例外です。固定資産の処分や売却に関係する帳簿価額の管理については、本社が行うので、機械減価償却累計額は本社側の勘定科目となります。

*工場側の仕訳*

(製造間接費)300,000/(本社)300,000

*本社側の仕訳*

(工場)300,000/(機械減価償却累計額)300,000

第4問の(5)売上原価の計上

問 販売した製品の製造原価は、8,000,000円であった。

 

通常の仕訳は以下のとおりです。

(売上原価)8,000,000/(製品)8,000,000

製品を販売すると倉庫から当然無くなってしまうので、工場が損をします。一方、売上の管理は本社でします。将来その売上金が本社に振り込まれるからです。よって、本社側が得をすることとなります。

製品倉庫は工場にあるため、工場側の仕訳となります。また、損益計算書に関係する売上原価は本社側の仕訳となります。

*工場側の仕訳*

(本社)8,000,000/(製品)8,000,000

*本社側の仕訳*

(売上原価)8,000,000/(工場)8,000,000

なお、製品倉庫が本社にあるときは、通常の仕訳を本社側の仕訳とし、工場側は仕訳なしとなります。

考え方は強引ですが、大体はそれで解けますので、最初のうちはそんなカタチで覚えるといいです。これは、商業簿記でいうところの本支店会計でも使うことができます。

なお、テキストでは、ただ単に相手勘定は本社勘定などと書かれています。 

 

弊事務所では、簿記講座をはじめとする社会に使える資格を個別指導方式で教えています。この簿記2級の本試験問題については、「日商簿記2級実戦編」として北海道旭川市近辺の方を対象に行っていますので、よろしくお願いいたします。

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