ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

製造間接費(費目別計算)その3~原価差異分析(固定予算)~

前回、製造間接費配賦差異について触れました。そもそも、これって何の原因で差異が生まれたのでしょうか?

商業簿記は、財務会計の枠内に入っており、株主や債権者などの利害関係人(ステークホルダー)への外部報告のために会社の通知表たる成績を公表します。

一方、工業簿記や原価計算は、管理会計という枠内に入っており、内部管理のための会計なのです。原価計算をすることによりムダやムリを省き、今後効率的な工場経営ができるためにあります。

そのため、「差異が発生しました。」「あっ、そうですか。」で終わるものではありません。きちんと原因を分析し、次に繋げて行かなければならないのです。

この差異を分析することを原価差異分析といいますが、製造間接費の原価差異分析の方法には固定予算によるものと(公式法)変動予算によるものがあります。

材料費や労務費、そして公式法変動予算については、標準原価計算のところで一気にやっていきます。今回は、この固定予算による原価差異分析をテーマに解説していきます。

実際の問題では、この費目別計算や次の個別原価計算にくっついて出題されることがありますので、ここでしっかり第1段階として覚えておきましょう。

固定予算は、製造間接費の年間予算と年間の稼働時間(基準操業度)をもとに決めていきます。月間の稼働時間に関係なく、予算を固定的に決めてしまう予算です。

固定予算における原価差異の原因には2つの要素があります。ひとつは、予算自体の設定と実際発生額の差異(予算差異)で、もう一つは、作業効率による基準操業度(予定操業度)と実際操業度との差異(操業度差異)です。

簿記2級では、製造間接費配賦差異(総差異)をこの2つの要素に分類する問題が出題されます。どのようにしていくかは、例題で説明します。

 

例)当工場では、製造間接費の年間予算額8,100,000円、年間の基準操業度は9,000時間により予定配賦をしている。なお、当月の製造間接費の実際発生額は720,000円、実際操業度は740時間であった。当月における製造間接費配賦差異及び予算差異、操業度差異をそれぞれ求めなさい。

 ①製造間接費配賦差異(総差異)を求める。

まずは、もととなる予定配賦率を求めます。

今回は、年間算額年間基準操業度とそろっていますので、そのまま計算します。これが片方月間になっていたときには、両方を単月に直して計算します。

予定配賦率:8,100,000円÷9,000h=@900円/h

これに実際操業度を掛けて、予定配賦額を出します。

予定配賦額:@900円/h×740h=666,000円

この予定配賦額と実際発生額の差額が、製造間接費配賦差異となります。

製造間接費配賦差異(総差異):666,000円ー720,000円=▲54,000円(不利差異・借方差異)

ここまでは、前回の復習となります。ここから、製造間接費配賦差異(総差異)の内訳を出していきます。

つまり、製造間接費配賦差異(総差異)=予算差異+操業度差異となります。問題文で予算差異や操業度差異しか求められていなくても、この総差異を出すことで検算ができます。

②予算差異の計算

年間の予算額から12ヶ月を割って月間の予算額に直した上で、予算差異を計算します。

予算差異:月間予算額ー実際発生額

月間予算額:8,100,000円÷12か月=675,000円

予算差異:675,000円ー720,000円=▲45,000円(不利差異・借方差異)

今月は、予算よりも多く使用したことになります。これは予算の設定が甘かったのか、不確定要素があったのか、というところでしょうか。

③操業度差異の計算

こちらも年間操業度を月間のものに直してから、操業度差異を計算します。

操業度差異:予定配賦率×(実際操業度ー基準操業度)

月間操業度:9,000h÷12か月=750h

操業度差異:@900円/h×(740h-750h)=▲9,000h(不利差異・借方差異)

今月は予定の稼働時間よりも多くかかってしまいました。少し作業効率が良くなかったようです。

 

理系の頭脳の持ち主なら、公式あてはめて終わりなのですが、私のように数式はちょっと…という方には、図式を使った解法があります。

図式を使った解法

 ①ますは、外枠から

ⅰ.グラフの縦線・横線を記入します。

ⅱ.横長の長方形を記入します。

ⅲ.長方形の内側に一本縦線を入れ、上方向へ突き出すように記入します。

ⅳ.グラフのゼロ地点から長方形の対角線を同じく突き出すように記入します。

そうすると、次のような形になります。

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②各部の名称

縦線が金額、横線が操業度になります。それ以外の名称は以下のとおりです。

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③各部分に数字を埋めていく。

予定配賦率実際操業度を掛けると予定配賦額になり、基準操業度を掛けると算額になります。また、実際発生額は、予算額よりもマイナスであってもこの位置に記入するのがポイントです。

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④差異分析は内側の線で見る。

実際操業度から上に伸びる線で差異分析を行います。

予定配賦額-予算額は、実際操業度と基準操業度の差を表します。よって、ここは操業度差異ということになります。

また、算額ー実際発生額が実際操業度を除く要素になりますので、ここが予算差異となります。

したがって、予定配賦額から実際発生額の間製造間接費配賦差異(総差異)ということになります。ポイントは、内側から外側に向かって差し引くということです。

このポイントは、差異分析での原則となります。のちのち、材料費や労務費、公式法変動予算においても同じことをいいますので、しっかりと覚えておいてください。

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