その他の引当金
今回は、その他の引当金です。(2022年1月7日①と②を統合しました。)
退職給付引当金
社員や従業員が退職すると、会社は退職金を支払うことになります。その退職金に備えておく評価勘定を退職給付引当金といいます。
今まで、「○○引当金」ときたら費用は「○○引当金繰入」というパターンでしたが、ここでの費用計上については、退職給付費用(費用)で処理します。
①引当金設定時(決算時)の処理
例)退職給付引当金の当期繰入額は200,000円であった。
(退職給付費用)200,000/(退職給付引当金)200,000
②退職金を支払ったときの処理
この処理も前回と同じように、まずは退職給付引当金を取り崩した上で、不足する部分については、退職給付費用(費用)で処理します。
例)社員が退職し、退職金100,000円を現金で支払った。なお、退職給付引当金の残高は200,000円である。
(退職給付引当金)100,000/(現金)100,000
退職金の設定は、全従業員に対して見積もるので、会社が倒産しない限りは、大体は退職給付引当金の範囲内で足りるはずです。
賞与引当金
社員や従業員にボーナスを支給する場合も、多額の金銭移動を伴うため、賞与引当金を設定します。
多くの場合は、年2回の賞与を支払う会社が多いと思います。そして、大体は6月と12月に支払うところが多いようです。
12月のボーナスについては、6月~11月の勤務実績によって支払うこととなります。3月決算の会社の場合、賞与の計算期間と支払日が同じ年度になっているので、賞与引当金の処理は不要となります。なぜなら、原則、賞与引当金の設定は年度末決算に行われるからです。
問題となるのが6月の賞与です。賞与の計算期間は12月~5月までとなり、年度をまたいでしまうので、この部分についてのみ賞与引当金を設定します。
対応する費用計上は、原則通り、賞与引当金繰入(費用)で処理します。
①引当金設定時(決算時)の処理
例)決算にあたり、次の資料に基づいて賞与引当金を設定する。
【資料】
1.当社の会計年度は、×1年4月1日から×2年3月31日である。
2.賞与の支給日は、6月30日と12月10日である。
3.賞与の計算期間は以下のとおりである。
6月分:12月1日から5月31日まで
12月分:6月1日から11月30日まで
4.×2年6月30日に支給予定の賞与は、600,000円である。
賞与の支払額を6か月で割ると1か月分の賞与の支払額がわかります。
600,000円÷6カ月=100,000円
そして、決算日は3月31日であり、計算月は12月~3月までの4か月分を引当金として処理します。
賞与引当金:100,000円(1か月分の賞与)×4ヶ月分=400,000円
(賞与引当金繰入)400,000/(賞与引当金)400,000
②賞与を支払ったときの処理
まずは、退職給付引当金を取り崩すところは、他の引当金と同じです。ただし、4月~5月の2か月分については、賞与引当金繰入(費用)で処理するのではなく、賞与(費用)で処理します。
例)×2年6月30日 賞与600,000円を現金で支払った。なお、賞与計算期間は×1年12月1日から×2年5月31日までであり、前期の決算において賞与引当金400,000円が設定されている。
(賞与引当金)400,000/(現金)600,000
(賞与)200,000
修繕引当金
建物、車両、備品などの固定資産については、毎年修繕(メンテナンス)が行われます。このため、修繕にかかる費用に備えて、修繕引当金を設定します。
費用計上する勘定科目は、修繕引当金繰入(費用)となります。
①引当金設定時(決算時)の処理
例)修繕引当金の当期繰入額を50,000円とする。
②修繕費を支払ったときの処理
まずは、修繕引当金を取り崩した上で、不足する分については修繕費(費用)で処理します。
例)建物の定期修繕により、修繕費100,000円を現金で支払った。なお、修繕引当金50,000円が設定されている。
(修繕引当金)50,000/(現金)100,000
(修繕費)50,000
この修繕費については、「固定資産の収益的支出と資本的支出」の論点で出てきますので、覚えておいてください。
商品(製品)保証引当金
商品や製品には、無償の保証期間があるものがあります。この場合、補修費用については小売店やメーカー側が負担します。この保証期間の修理のために費用として備えておく評価勘定を商品(製品)保証引当金といいます。
①引当金設定時(決算時)の処理
その他の引当金の場合、2級の試験では具体的な数字が与えられていますので、そのレ基づいて仕訳をすればいいだけになります。費用計上する場合には、商品(製品)保証引当金繰入(費用)で処理します。
例)当期の商品保証引当金の繰入額は30,000円とする。
(商品保証引当金繰入)30,000/(商品保証引当金)30,000
②保証対応時(リコール時)の処理
まずは、商品(製品)保証引当金を取り崩します。それでも足りない分については、商品保証費(費用)で処理します。
ここで注意点ですが、引当金は前期の保証期間に対応したものだけを商品(製品)保証引当金で処理します・当年度分の修理に関するものは、引当金を使わずに商品保証費(費用)で処理します。これ以降の引当金も同様の考え方です。
例)品質保証付きで販売した商品について、修理の申出があったため、修理業者に対して修理費用100,000円を現金で支払った。なお、商品保証引当金30,000円を設定している。
(商品保証引当金)30,000/(現金)100,000
(商品保証費)70,000