今回は、単純総合原価計算の平均法と仕損があったときの処理方法を解説します。
平均法は、(月初仕掛品の金額+当月投入の金額)÷(月初仕掛品数量+当月投入数量)で単価を出し、それぞれ完成品数量と月末仕掛品数量にその単価を掛けることによって、計算します。
製造過程で失敗してしまったことを仕損といい、その不合格品が仕損品、その費用は仕損費といいます。その仕損で生じたスクラップについては、売却する価値がある場合があります。そのときの仕損品の売却価額を仕損品評価額といいます。
仕損品評価額がある場合については、訳が分からなくなるので、現時点では取り上げません。そして、仕損費が正常なもの(正常仕損費)という文言が出てきますが、2級では正常なものしか扱わないので、ここは無視していただいても構いません。
もう一つ、減損というものがあります。製造過程で原料が蒸発や飛散により、どうしても減ってしまうことをいいます。無くなってしまうものなので、減損品というものはありません。、全て費用として計算されます。
そして、仕損(減損)が生じたときの処理ですが、ここでも2つの方法があります。
仕損(減損)が生じたときが、完成間際(工程の終点)で発生した場合、完成品総合原価のみに仕損費を負担させます。このときの仕損費の処理方法を「完成品のみ負担」といいます。
一方、仕損(減損)が生じたときが、製造当初・途中もしくは不明の場合、月末仕掛品にも影響を及ぼすので、完成品総合原価と月末仕掛品原価の両方に負担させます。このときの仕損費の処理方法を「両者負担」といいます。
このように、総合原価計算は、「先入先出法」・「平均法」、「完成品のみ負担」・「両者負担」の組み合わせで出題されます。
今回の例は、「平均法」の「完成品のみ負担」で見ていきます。
例)当社は製品Aを製造・販売し、製品原価の計算は単純総合原価計算により行っている。次の【資料】に基づいて、総合原価計算表を完成させなさい。なお、原価投入額を完成品総合原価と月末仕掛品原価に配分する方法として、平均法を用いるものとする。
【資料】
1.当月の生産・販売実績データ
月初仕掛品 800個(加工進捗度50%)
当月投入量 3,200個
正常仕損 200個
月末仕掛品 800個(加工進捗度50%)
当月完成品数量 3,000個
2.原価データ
月初仕掛品原価
直接材料費 1,600,000円
加工費 749,500円
当月製造費用
直接材料費 7,520,000円
加工費 7,573,700円
※1 直接材料費は工程の始点で投入している。
※2 仕損は工程の終点で発生している。
仕掛品/直接材料費ボックスの処理
前回と同じように分かるところから数字を埋めると次のようになります。
今回は平均法ですので、借方の金額合計を借方の数量合計で割れば単価が出ます。
(1,600,000円+7,520,000円)÷(800個+3,200個)=@2,280円
この単価を貸方のそれぞれの枠内に埋めていくのですが、その前に仕損の処理を説明します。今回は、工程の終点(「完成品のみ負担」)という指示が与えられています。
この場合、仕損じた200個を完成品数量に加えれば、その分完成品総合原価に反映されます。そのため、一時的に完成品総合数量の個数を3,200個で計算します。
あくまで、完成品の個数は3,000個ですので、加工費を加えた最終的な総合原価が出たときに、単価を出すときは、3,000個で割らなければなりませんので注意しましょう。
完成品総合原価:3,200個×@2,280円=7,296,000円
月末仕掛品原価:800個×@2,280円=1,824,000円
仕掛品/加工費ボックスの処理
ここも同じように問題文をもとに数字を入れていきます。加工進捗度を忘れずに記入しましょう。
貸方へ割り振る単価は以下のとおりです。
(749,500円+7,573,700円)÷(400個+3,200個)=@2,312円
完成品総合原価:3,200個×@2,312円=7,398,400円
月末仕掛品原価:400個×@2,312円=924,800円
総合原価計算表の完成
以上の結果を総合原価計算表に書き写します。
先ほど話した通り、ここから完成品(製品)の単価を出すときは、14,694,400円に3,000個で割れば出るのですが、ここでも割り切れないので割愛します。