前回の単純総合原価計算の問題例を使って、再度お話ししたいと思います。ただし、今回は一部変えて、仕損の処理を両者負担とし、仕損品(スクラップ)を売却できる価値があるものとします。
例)当社は製品Aを製造・販売し、製品原価の計算は単純総合原価計算により行っている。次の【資料】に基づいて、総合原価計算表を完成させなさい。なお、原価投入額を完成品総合原価と月末仕掛品原価に配分する方法として、平均法を用いるものとする。
また、正常仕損の処理は、度外視法によるものとする。
【資料】
1.当月の生産・販売実績データ
月初仕掛品 800個(加工進捗度50%)
当月投入量 3,200個
正常仕損 200個
月末仕掛品 800個(加工進捗度50%)
当月完成品数量 3,000個
2.原価データ
月初仕掛品原価
直接材料費 1,600,000円
加工費 749,500円
当月製造費用
直接材料費 7,520,000円
加工費 7,573,700円
※1 直接材料費は工程の始点で投入している。
※2 工程の始点で発生している正常仕損品は100,000円の処分価値があるものとする。
仕掛品/直接材料費ボックスの処理
数字を埋めた状態は、前回と同じです。
今回も「平均法」ですので、単価を出したいところですが。仕損の処理方法が「両者負担」に変わっていますので、そちらをまず説明します。
問題文の最後に「度外視法」という新しい一文が加わっています。仕損の処理方法には、「度外視法」と「非度外視法」がありますが、2級では度外視法しか扱いませんので、この文言もとりあえずスルーしても大丈夫です。
ただし、今回の「両者負担」には、とても関係していますので、手順によって説明していきます。
「度外視」とは、無視をするということですが、何を無視するかというと、仕損の数量を無視して、0個にしてしまいます。そうすると、借方の数量が多くなりますが、ここは加工費のときと同じように、当月投入の個数を減らして、調整をします。
その状態のボックスが次のとおりとなります。
(1,600,000円+7,520,000円)÷(800個+3,000個)=@2,400円
前回と比べて、割り振る単価が高くなっています。したがって、完成品総合原価が減り(3,200個⇒3,000個)、月末仕掛品原価が増えることとなります。これにより、月末仕掛品にも仕損費の負担をしてもらっていることとなるのです。
完成品総合原価:3,000個×@2,400円=7,200,000円
月末仕掛品原価:800個×@2,400円=1,920,000円
仕掛品/加工費ボックスの処理
こちらも同じように処理すると以下のとおりとなります。まずは、数字を埋めたボックスから…
続いて、単価の計算
(749,500円+7,573,700円)÷(400個+3,000個)=@2,448円
その単価を貸方へ割り振ったものが下の図となります。
完成品総合原価:3,000個×@2,448円=7,344,000円
月末仕掛品原価:400個×@2,448円=979,200円
仕損品評価額の処理
最後に、仕損品評価額の処理をします。製造原価や仕損費は、もともと費用です。そして、仕損品評価額は売却できる価値になるので、売れば利益となります。
普通に考えれば、収益となりそうですが、ここは別に計上するのではなく、この段階で清算してしまいます。つまり、製造原価から仕損品評価額を差し引いたものを完成品製造原価とします。
したがって、以下の計算となります。
完成品総合原価:7,200,000円(直接材料費分)+7,344,000円(加工費分)-100,000円(仕損品評価額)=14,444,000円
総合原価計算表は以前のものは使えないので、ここでは省略します。