税効果会計とは?
会計上の処理と税務上の処理は似ていますが、ところどころ違いがあります。この違いを調整する会計処理を税効果会計といいます。
まず、用語から覚えましょう。
会計上の収益は税法上では益金といいます。また、会計上の費用は税法上では損金といいます。さらに会計上の利益は当期純利益ですが、法人税が引かれる前の状態でとくに税引前当期純利益といいます。これを税法上では課税所得といいます。
式で表すと以下のとおりとなります。
会計上:税引前当期純利益=収益-費用
税務上:課税所得=益金-損金
法人税等(法人税、住民税及び事業税)は課税所得に税率をかけて算出します。ちなみに正式名称は長いので、ここでは「法人税等」とします。
法人税等:課税所得×税率
試験では、法人税等の税率を実効税率として問題文に表示されます。大体、30%、35%、40%の中で指示があります。
永久差異と一時差異
次になぜ税効果会計が使われるかということですが、会計上で費用として処理をしても、税法上ではその費用が損金として認められないことがあります。
この認められない部分を差異として調整していくのですが、この差異も永久差異と一時差異があります。
永久差異は、一生解消されないものなので、税効果会計から除外されます。つまり、帳簿はそのままで、法人税を納税するときに処理をします。
一時差異は、いったん差異が生じても、将来その差異が解消されるものをいいます。この一時差異の場合に税効果会計が使われるのです。
具体的な数字を使うのは次回以降となりますので、この時点ではそういうものなんだという程度で構いません。
税効果会計を行う一時差異(日商簿記2級の範囲)は以下のものとなります。
・貸倒引当金の繰入限度額
・減価償却費の償却限度額
・その他有価証券の評価差額金
これについては次回から各項目別にお話ししていきます。
損金(益金)不算入と損金(益金)算入
実際の問題では、「損金不算入となった」とか「損金算入となった」などという言葉が出てきます。この内容がわからないと解くことができませんので、ここでは、この話について触れていきます。
損金不算入:会計上は費用として計上したが、税務上損金とならなかった。
損金算入:会計上として費用として計上しなかったが、税務上損金となった。
益金不算入:会計上は収益として計上したが、税務上益金とならなかった。
益金算入:会計上として収益として計上しなかったが、税務上益金となった。
大抵のテキストにはこの通りとなっており、私もこれでは内容がさっぱりわかりませんでした。これにもとづいて仕訳をしなければならないので、結果的に何をすればいいのかを押さえればいいこととなります。
税金はそもそも利益に対して課されますから、利益に注目すると次のようになります。
損金不算入:想定していた費用が減らされるので、その分利益は増えます。結果、税金を多く納めることとなります。
損金算入:費用が増えるので、その分利益は減ります。結果、税金は少なくて済みます。
益金不算入:収益が減りますので、その分利益は減ります。結果、税金は少なくて済みます。
益金算入:収益が増えますので、その分利益が増えます。結果、税金を多く納めることとなります。
赤枠の悲しいマークは、税金を多く支払わなければならないものです。青枠のニコニコマークは、税金が安くて済むものです。このように感情で覚えることも記憶への近道となります。
特に左の損金不算入と損金算入パターンのセットがほとんどなので、こちらを間違いなく覚えましょう。益金については逆と覚えておけばまずはOKです。
税効果会計は、一時差異なので、当期が損金不算入であったとしても、次期以降には損金算入となって、最終的にはプラスマイナスゼロになります。
もう一つ覚える文章のフレーズがあります。文章には「損金不算入となった」という風には書かれていないことが多く、「損金算入が認められなかった」という記載が多いのです。
税効果会計は、最初に会計上の正しい仕訳をさせておいて、次に「認められなかった」として、前の仕訳を税効果会計により費用を減額させること(=税金が増える)を要求します。そして最終的に「認められた」として、2回目の仕訳の逆仕訳をさせるパターンとなります。
ということで、「認められなかった」=前の仕訳の費用を減額、「認められた」=前の仕訳の逆仕訳というように覚えましょう。
それでは次回は具体的な問題を3つ説明をします。一通り終わったら、もう一度ここに戻って確認をお願いいたします。