さて、いよいよ実際の解き方に入ります。ここで、分岐点を3つ作ります。
①:貸借対照表だけを狙い撃ちして10~14点を手堅く取りに行く方法
②:①の方法の後、少し時間に余裕ができたから区分式損益計算書に表示される売上総利益だけを狙う方法(①+1~2点)。
③:今まで繰り返し練習してきたので、全て取りに行く欲張りの方法(20点)
今回は、①の方法を説明してから、最後に+αで②の方法を説明します。③については、この方法に加えて、前回の最後に説明した法人税、住民税及び事業税の計算を一通りするだけです。
問題については再掲しませんので、前回までのをご参照ください。
1.3月中の取引について
基本編では、材料・賃金・製造間接費ボックスなどいろいろ出てきましたが、ここでは仕掛品の期末残高だけ計算します。
あとは、貸借対照表に関するものを拾えば、ここの工程は終了です。
(以下、文章の順番による)
買掛金:862,000円(前T/B)+90,000円(材料仕入)=952,000円
現金預金:18,542,100円(前T/B)-80,000円(賃金支払)-32,500円(製造間接費支払)=18,429,600円
売掛金:2,237,000円(前T/B)+320,000円(当月売上)=2,557,000円
仕掛品:60,000円(ボックスの月末在高)
2.棚卸資産の棚卸
ここは、材料と製品の実際在高をそのまま書き写すだけです。
材料:48,000円
製品:33,000円
3.固定資産の減価償却
( )内の内容は無視して、前T/Bの残高にそれぞれの数字を加算します。その際に、建物と機械装置の残高を前T/Bから記入して、差引残高も計算して記入します。
建物減価償却累計額:128,000円(前T/B)+4,000円=132,000円
機械装置減価償却累計額:490,000(前T/B)+11,200円=501,200円
4.貸倒引当金の計上
貸借対照表には差額補充法のくだりは不要なので、そのまま売掛債権(受取手形と売掛金)と短期貸付金の貸倒引当金を計算します。
貸倒引当金(売掛債権):(3,345,000円(前T/B受取手形)+2,557,000円(1.の売掛金残高))×1%=59,020円
貸倒引当金(短期貸付金):90,000円(前T/B)×2%=1,800円
貸倒引当金:59020円+1,800円=60,820円
究極的には受取手形も短期貸付金も採点箇所ではないので、記入しなくても差し支えありませんが、そんなに時間がかからないので記入しています。
5.退職給付引当金の計上
文中に書かれている金額をすべて前T/Bに加算すれば完成です。
退職給付引当金:1,460,000円(前T/B)+24,000円(製造活動用)+16,000円(それ以外)+1,500円(見積もり超過分)=1,501,500円
なお、( )引当金が流動負債と固定負債にそれぞれあります。どちらに入れるべきでしょうか?
退職給付引当金は長年勤めてきた従業員の退職金支出のために積み立てる引当金です。したがって、1年基準に照らし合わせると長期の引当金となります。
6.製品保証引当金の計上
前T/Bに関する製品保証引当金は特約期間は終了したので、前の設定金額6,000円については無視します。改めて5,000円を新たに設定することとなります。
製品保証引当金:5,000円
空いている残りの( )引当金の方に記入しますが、一応説明しておきます。製品保証引当金とは、電化製品を購入したときに、故障が生じたときの無料保証期間の特約に対する引当金をいいます。概ね1年保証が多いので、今回は短期負債の部として計上します。なお、5年保証とかの長期保証の場合は、長期負債の部に計上しますね。
今回は退職給付引当金が「長期負債の部」1択なので、製品保証引当金は「短期負債の部」ということになります。
7.の法人税、住民税及び事業税は税引前当期純利益がわからないと解けないので、ここまで書き終えれば、一応終了となります。
採点としては、区分式損益計算書に表示される利益各4問が各1点ないし2点、未払法人税等の部分が2点だとすると、除く10点~14点が今ある解答用紙の中に配点されています。なお、各合計は採点箇所には該当しないので空欄にしてあります。
+α 売上総利益の計算
速攻解答ですると、おそらく20分かからない程度で終了すると思います。この場合、他の問題の見直しに回って頂いて確実に70点を取っていく方法がベターなのですが、それでも時間が余りそうなときは、その時間だけここに費やしてください。
売上総利益を出すには、前回からお話ししている原価差異を押さえておかなければなりません。そこさえ計算できれば、+1~2点は取れるでしょう。
原価差異の計算前の売上と売上原価は単純に前T/Bから1.の数字を加算すればよいだけです。
売上:3,530,000円(前T/B)+320,000円(当月売上高)=3,850,000円
売上原価(原価差異除く):2,265,000円(前T/B)+220,000円(当月売上原価)=2,485,000円
原価差異は、ボックスか計算式で計算します。
原価差異:100円(材料)+1,800円(製造間接費)+2,000円(製品)=3,900円
売上総利益:3,850,000円(売上)-2,485,000円(売上原価)-3,900円(原価差異)=1,361,100円
最後に
全体の解き方としては、第2問が重くなければ、先に工業簿記を解きに行くので、第3問が最終問題となります。その段階で30分程度しか残されていないときは、①の方法を取って下さい。1時間ぐらい余裕があり、勘定科目の区分が十分理解できているのであれば、最初から③の方法でも構いません。
最初から②か③の選択をした方は、[資料2]1.3月の取引の段階で、各ボックスをすべて作成して原価差異の把握に努めてください。ボックス作るのが得意な方は、さほど時間がかからない作業だと思います。また、計算式の方が得意な方は、ボックスをあえて作らなくても構いません。ボックスの作成に概ね7.8分かかると思います。事前にどのぐらいかかるか測ってみても良いかと思います。
ちなみに、③の選択をした方は、以下の流れになります。
⑴ 1.でボックスを作成し、原価差異の数字を押さえる。
⑵ 今回の①速攻編の順に仕上げる。
⑶ 7.の段階で残る未払法人税等と区分式損益計算書に表示される利益の4問を解く。
以上でおまけの部分を足した日商簿記2級の解説を終了します。今まで、ご覧いただきありがとうございました。ロクに見直しもしていないので、誤字や誤変換などでわかりにくいところもあったかもしれません。そこはご容赦願います。
あとは、各検定の解答か全経簿記または建設業簿記に関するものを増やすかもしれませんが、気長にお待ちいただければと思います。