ポリテク火星出張所!

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直接原価計算その4~CVP分析②~

前回で154回の解答解説が終了し、本題に戻ってきました。前回のつながりを忘れている方は、どうぞ前に戻ってご確認ください。本日は、直接原価計算の第4回目です。

 例)ニッショウ産業は、全国にカフェチェーンを展開している。現在、大門駅前店の利益計画を作成している。10月の利益計画では、売上高は3,500,000円であり、変動費と固定費は次の【資料】のとおりであった。11月の利益計画は、変動費率と固定費額について10月と同じ条件で作成する。下記の問いに答えなさい。

【資料】

変動費

食材費 805,000円

アルバイト給料 420,000円

その他 70,000円

②固定費

正社員給料 650,000円

水道光熱費 515,000円

支払家賃 440,000円

その他 285,000円

目標営業利益率を達成するための売上高

前回は目標営業利益でしたが、○%の目標を掲げるのように目標営業利益率で出題されることがあります。150回では出題されなかったため、この題材を使った類題を作成しました。

問 目標営業利益率23%としたときの売上高を計算しなさい。

まずは、金額をまとめた損益計算書をご覧ください。

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営業利益が23%となっています。これは売上高に対するものなので0.23Ⅹとなります。

貢献利益以下を方程式にして解いてみます。

0.63Ⅹ-1,890,000=0.23Ⅹ

0.63Ⅹ-0.23Ⅹ=1,890,000

0.4Ⅹ=1,890,000

Ⅹ=1,890,000÷0.4=4,725,000円

問の答え 4,725,000円

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目標営業利益率の公式は、以下のとおりです。

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安全余裕率

損益分岐点売上高は、どれだけ売り上げを上げたら利益がプラスになるかの指標でした。逆のいい方をすると、どれだけ売り上げが下がったら赤字になるのかということもいえます。

安全余裕率とは、予想売上高または実際売上高が損益分岐点をどれだけ上回っているかの指標となります。つまり、この数値が高いと会社経営が安全であることを意味します。

これも過去問を使って解くのですが、問題が少し違うのでまた題材だけピックアップします。

問4 11月の売上高は3,750,000円と予想されている。11月の利益計画における貢献利益と営業利益を計算しなさい。

まずは、この問題を解いてから安全余裕率を出すこととします。

貢献利益率は63%でした。これに基づいて解けば最初の貢献利益は楽勝でしょう。

貢献利益:3,750,000円×63%=2,362,500円

これに固定費を差し引けば営業利益は出ますね。

営業利益:2,362,500円ー1,890,000円=472,500円

問4の答え 貢献利益 2,362,500円 営業利益 472,500円

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ここまでが、本試験問題です。次にこのときの安全余裕率を計算しましょう。

最初に公式を見てください。

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予想売上高は3,750,000円です。そして、損益分岐点売上高は問2で出した通り3,000,000円となっています。これを公式に当てはめると次のとおりとなります。

安全余裕率:(3,750,000-3,000,000)/3,750,000=0.2(20%

2級のCVP分析で出題されるのは、この4つです。以下の公式をまとめましたので覚えられる方は公式を使えばすんなり解けることと思います。また、公式が覚えにくいという方には、損益計算書から方程式で解く方法をおすすめします。

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154回日商簿記2級の解答について~第3問 損益計算書の作成③~

それでは、154回日商簿記第3問速攻編を始めます。

前々回からの問題を再度検証しながら、必要な情報(今回は損益計算書の勘定科目)だけを抜き出して解答用紙に記入する実際の解き方を解説します。仕訳の詳しい説明は前回をもって終わっていますから、もし、その内容がちょっとわからないという方は基礎編に戻って確認をお願いします。

また、問題については、前回と同様、最後に掲載します。では、さっそく始めていきましょう!

未処理事項の処理

1.貸し倒れの処理

基礎編でお話しした通り、この部分は資料Ⅲの貸倒引当金の設定に影響します。

売掛金10,000円が貸し倒れたので、売掛金残高を減らします。

売掛金:550,000(前T/B)-10,000=540,000円

※脇役なので黒で表示します。

当期分の6,000円貸倒損失(費用)です。前期分の4,000円は貸倒引当金から差し引いておきます。

貸倒損失(借方):6,000円

貸倒引当:6,000(前T/B)-4,000=2,000円

本当は、この時点で損益計算書(以下P/Lとします。)の貸倒損失の借方に記入しますが、本ブログでは未処理事項の処理が終わった時点で一旦P/Lを表示いたします。

2.未決算の清算

600,000円の建物に対し、500,000円しか保険金が支払われなかったため、100,000円火災損失(費用)となります。

火災損失(借方):100,000円

3.土地の売却

500,000円の土地に対し、550,000円で売却することができたため、50,000円固定資産売却益(資産)となります。

固定資産売却益(収益):50,000円

この3つを解いたらすぐに解答用紙へ記入します。冒頭にも話した通り、今回の問題は損益計算書の作成ですから、貸借対照表の勘定科目は無視して進みます。

 

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抜粋表示しています(以降同じ)

固定資産の売却や火災は頻繁に起きることがないため、それぞれ特別利益特別損失となります。ここで、他社の配点予想通りに計算すると4点となります。

 決算整理事項の処理

1.貸倒引当金の設定

この部分については、貸倒引当金繰入を計算するだけのことです。

売掛債権:360,000(前T/B受取手形)+540,000(未処理事項1より)=900,000円

貸倒引当金繰入:900,000×2%-2,000(貸倒引当金:未処理事項1より)=16,000円

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ここでの配点は2点(計6点)です。

2.売上原価の算定

仕訳はする必要がないので、「仕・繰・繰・仕」も不要です。期首棚卸高・当期仕入高・期末棚卸高はそのままの金額を記入すればOKです。

ただし、棚卸減耗損や商品評価損は、計算式やボックスによる計算が必要となります。

商品期首棚卸高:220,000円(前T/B繰越商品)

当期商品仕入:5,880,000円(前T/B仕入

商品期末棚卸高:@¥400×850個=340,000円(帳簿棚卸高)

棚卸減耗損:@¥400×(850個-844個)=2,400円

商品評価損:(@¥400-@¥395)×844個=4,220円

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時間のある方はこの計算を埋めて、売上総利益まで出してもいいのですが、今回は時間が押している設定で行います。ここでの配点は4点(計10点)です。

この時点で第3問全体の半分取れていることとなります。この時点で未処理事項や決算整理事項の仕訳を丁寧にメモ用紙に書いてる状態では0点のままですよ。

3.減価償却費の計上

減価償却費は、基礎編の計算と同じように計算します。

建物の減価償却:3,000,000÷40年×8か月/12か月=50,000円

備品の減価償却:(900,000-324,000)×0.2=115,200円

※改定償却率との選択は基礎編で説明していますので省略しています。

減価償却:25,000(前T/B)+50,000+115,200=190,200円

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ここでの配点は2点(計12点)です

4.のれんの償却

のれんの償却の計算も基礎編と同じです。

のれん償却:240,000(前T/B)÷3年(残りの償却年数)=80,000円

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ここでの配点は2点(計14点)です。

5.満期保有目的債券の評価

損益計算書に関係する科目は有価証券利息営業外収益)です。

満期保有目的債券(社債)の取得金額:700,000×99円/100円=693,000円

償却原価法による有価証券利息:(700,000-693,000)÷5年=1,400円

有価証券利息(P/L):10,500(前T/B)+1,400=11,900円

 

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ここでの配点は2点(計16点)です。

6.退職給付引当金の計上

 ここは、退職給付費用(費用)81,000円をそのまま記入するだけです。

 したがって配点はありません。

7.貯蔵品の棚卸

これは、費用の前払いがわかれば解ける問題です。収入印紙を購入時に租税公課(費用)で180,000円計上したが、25,000円余ったので実際の消費高155,000円に修正して記入します。

こちらも3級レベルの問題ですから配点はありません。

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8.借入金利息の未払い分の計上

こちらは未払いの問題ですが、金額を計算させる問題で7.と比べて手間はかかります。

未払分の借入金利:900,000(前T/B)×1.2%(年利率)×8か月/12か月=7,200円

この金額を支払利息(営業外費用)として記入します。

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ここでの配点は2点(計18点)です。

この時点で残り2点は当期純利益となります。時間に余裕のある方はそのまま完成を目指します。しかし、費用対効果を考えると、ここは捨て問の対象となります。

なぜかというと…

当期純利益は、今までのすべての問題をクリアして初めて正解が出るものです。したがって、決算整理事項の1問でも間違えるとダメなのです。

もし、当期純利益を捨てれば、決算整理事項6、7、9、10は解く必要はありません。途中の( )内も埋める必要はありません。おそらく5分以上は時間が浮くと思われます。

その浮いた時間を他の問題を解く時間に使えますし、検算をする時間に使うこともできます。特に第1問の仕訳問題は各4点となっており、この問題の倍の配点となっています。

簿記検定問題は70点ぎりぎりでも100点満点でも合格は合格です。ですから、この費用対効果という考え方は、基準の合格点が設定されている検定問題では重要となります。

ということで18点で満足して別の問題に切り替えることは、戦術上必要なことです。

 

ここからは、満点目指している方向けとなります。

9・10 法人税等の計上および税効果会計

 まずは、税引前当期純利益を出す必要があります。139,080円までたどり着ければいいので、どこが経常利益で、どこが営業利益だとかいうことは、採点箇所ではないので極端にいえば記入不要です。というか考えるだけ無駄です。

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税引前当期純利益法人税等実効税率30%を掛けたものが、すぐ下の( )となります。

法人税:139,080×30%=41,724円

これが出ればもう当期純利益がわかりますね。

当期純利益:139,080-41,724=97,356円

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この当期純利益2点(計20点)となります。

ということは、9.法人税等の計上で法人税等調整額を計算しなくてもOKということになりますが...

採点箇所が法人税等調整額の場合がありますし、ここまできたら最後まで記入しましょう。

法人税等調整額:8,000×30%=2,400円

法人税、住民税及び事業税は逆算で計算できます。

法人税、住民税及び事業税:41,724+2,400=44,124円

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以上で154回の解答解説は終了となります。

 第5問(参考)

 次の[資料Ⅰ][資料Ⅱ]および[資料Ⅲ]にもとづいて、答案用紙の損益計算書を完成しなさい。なお、会計期間は2018年4月1日から2019年3月31日までの1年間とする。
[資料Ⅰ]

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[資料Ⅱ] 未処理事項

1.売掛金¥10,000が回収不能であると判明したので、貸倒れとして処理する。なお、このうち¥4,000は前期の商品販売取引から生じたものであり、残りの¥6,000は当期の商品販売から生じたものである。

2.未決算は火災保険金の請求にかかわるものであるが、保険会社より火災保険金¥500,000の支払いが決定した旨の通知があったので、適切な処理を行う。なお、決算整理前残高試算表に示されている減価償却費¥25,000は、期中に火災により焼失した建物の減価償却費を月割で計上したものである。

3.土地の一部(帳簿価額¥500,000)を売却し、売却代金¥550,000は当座預金としていたが、この取引は未記帳である。

[資料Ⅲ]決算整理事項

1.売上債権の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金は差額補充法によって設定する。

2.商品の期末棚卸高は次のとおりである。棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する。

帳簿棚卸高:数量850個、帳簿価額@¥400

実地棚卸高:数量844個、正味売却価額@¥395

3.有形固定資産の減価償却は次の要領で行う。

 建物:建物は当期の8月1日に取得したものであり、耐用年数は40年、残存価額はゼロとして、定額法により月割で減価償却を行う。

 備品:耐備品は数年前に取得したものであり、耐用年数10年、残存価額はゼロとして、200%定率法により減価償却を行っている。なお、保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。

4.のれんは2016年4月1日に他企業を買収した取引から生じたものであり、取得後5年間にわたって効果が見込まれると判断し、定額法で償却している。

5.満期保有目的債券は、2017年4月1日に他社が発行した社債(額面総額¥700,000、利率年1.5%、償還日は2022年3月31日)を額面@¥100につき@¥99の価額で取得したものであり、償却原価法(定額法)で評価している。

6.退職給付引当金の当期繰入額は¥81,000である。

7.すでに費用処理した収入印紙の期末未使用高は¥25,000である。

8.長期借入金は、当期の8月1日に借入期間5年、利率年1.2%、利払いは年1回(7月末)の条件で借り入れたものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。

9.法人税、住民税および事業税について決算整理を行う。仮払法人税等¥18,000は中間納付にかかわるものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。なお、当期の費用計上額のうち¥8,000は、税法上の課税所得の計算にあたって損金算入が認められない。法人税等の法定実効税率は30%である。

10.上記9.の損金算入が認められない費用計上額¥8,000(将来減算一時差異)について、税効果会計を適用する。

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154回日商簿記2級の解答について~第3問 損益計算書の作成②~

それでは基本編の後半を始めます。なお、問題文等は最後に掲載しますので、ご確認ください。

決算整理事項5 満期保有目的債券の評価

 満期保有目的債券は、2017年4月1日に他社が発行した社債(額面総額¥700,000、利率年1.5%、償還日は2022年3月31日)を額面@¥100につき@¥99の価額で取得したものであり、償却原価法(定額法)で評価している。

今回の満期保有目的債券は5年満期の有価証券です。取得原価は以下の計算式で行います。

取得原価:額面金額×100円あたりの購入価額/100

∴700,000×99/100=693,000円

償却原価法とは、決算日に一定金額を取得原価に加算または減算して、満期日(償還日)までに額面金額にする方法をいいます。

額面金額と取得価額との差は7,000円(700,000円-693,000円)です。これに保有年数5年(通常は7,000円×12か月/60か月で計算)で割ると1,400円という数字が出ます。この数字が毎期取得原価に加算していく金額となります。相手科目は有価証券利息(収益)で処理します。

ちなみに前T/Bの満期保有目的債券の残高は694,400円ですから、すでに1回加算されていることがわかります。

【決算整理事項5の仕訳】

(満期保有目的債券)1,400/(有価証券利息)1,400

決算整理事項6 退職給付引当金の計上

 退職給付引当金の当期繰入額は¥81,000である。

貸倒引当金のように仕訳すればOKです。ただし、退職給付引当金の場合は、「退職給付引当金繰入」ではなく退職給付費用(費用)で処理します。

【決算整理事項6の仕訳】

(退職給付費用)81,000/(退職給付引当金)81,000

決算整理事項7 貯蔵品の棚卸

 すでに費用処理した収入印紙の期末未使用高は¥25,000である。

期中に通信費(郵便切手類)や租税公課収入印紙等)で購入時に費用計上したものが期末に未使用だった場合、貯蔵品(資産)に振り替えます。

【決算整理事項7の仕訳】

(貯蔵品)25,000/(租税公課)25,000

決算整理事項8 借入金利息の未払い分の計上

問 長期借入金は、当期の8月1日に借入期間5年、利率年1.2%、利払いは年1回(7月末)の条件で借り入れたものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。

支払日は来年の7月末ですが、8月1日から3月31日までの8か月分の借入金利息はすでに発生しているものと捉え、未払費用(負債)で計上します。

未払分の借入金利:900,000(前T/B)×1.2%(年利率)×8か月/12か月=7,200円

【決算整理事項8の仕訳】

(支払利息)7,200/(未払費用)7,200

決算整理事項9・10 法人税等の計上および税効果会計

 法人税、住民税および事業税について決算整理を行う。仮払法人税等¥18,000は中間納付にかかわるものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。なお、当期の費用計上額のうち¥8,000は、税法上の課税所得の計算にあたって損金算入が認められない。法人税等の法定実効税率は30%である。(決算整理事項9)

 上記9.の損金算入が認められない費用計上額¥8,000(将来減算一時差異)について、税効果会計を適用する。(決算整理事項10)

決算整理事項9の内容を見れば、税効果会計をしなければならないことがわかりますから、正直10の情報は見なくてもわかりますね。

今までの情報を答案用紙に記入したとき、税引前当期純利益139,080円となります。

そして、費用計上と認められなかった8,000円をプラスします。これについて、法定実効税率30%を掛けたものが法人税法人税、住民税及び法人税、以下同じ)となります。

当期の法人税:(139,080(税引前当期純利益)+8,000(損金不算入))×30%(実効税率)=44,124円

そして、損金不算入となった8,000円×30%=2,400円法人税等調整額となります。

【決算整理事項9の仕訳】

法人税、住民税及び事業税)44,124/(仮払法人税等)18,000

                 /(未払法人税等)26,124

【決算整理事項10の仕訳】

繰延税金資産)2,400/(法人税等調整額)2,400

 

前回と今回の未処理事項と決算整理事項の仕訳をもとに答案用紙に記入していくと完成となります。なお、解答用紙への記入作業については基本編では説明しません。

次回の速攻編において基礎を踏まえた上で、どのように考えて答案用紙に記入していくのか説明いたします。

第3問 損益計算書の完成 問題文

 次の[資料Ⅰ][資料Ⅱ]および[資料Ⅲ]にもとづいて、答案用紙の損益計算書を完成しなさい。なお、会計期間は2018年4月1日から2019年3月31日までの1年間とする。
[資料Ⅰ]

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[資料Ⅱ] 未処理事項
1.売掛金¥10,000が回収不能であると判明したので、貸倒れとして処理する。なお、このうち¥4,000は前期の商品販売取引から生じたものであり、残りの¥6,000は当期の商品販売から生じたものである。

2.未決算は火災保険金の請求にかかわるものであるが、保険会社より火災保険金¥500,000の支払いが決定した旨の通知があったので、適切な処理を行う。なお、決算整理前残高試算表に示されている減価償却費¥25,000は、期中に火災により焼失した建物の減価償却費を月割で計上したものである。

3.土地の一部(帳簿価額¥500,000)を売却し、売却代金¥550,000は当座預金としていたが、この取引は未記帳である。

[資料Ⅲ]決算整理事項

1.売上債権の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金は差額補充法によって設定する。

2.商品の期末棚卸高は次のとおりである。棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する。

帳簿棚卸高:数量850個、帳簿価額@¥400

実地棚卸高:数量844個、正味売却価額@¥395

3.有形固定資産の減価償却は次の要領で行う。

 建物:建物は当期の8月1日に取得したものであり、耐用年数は40年、残存価額はゼロとして、定額法により月割で減価償却を行う。

 備品:耐備品は数年前に取得したものであり、耐用年数10年、残存価額はゼロとして、200%定率法により減価償却を行っている。なお、保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。

4.のれんは2016年4月1日に他企業を買収した取引から生じたものであり、取得後5年間にわたって効果が見込まれると判断し、定額法で償却している。

5.満期保有目的債券は、2017年4月1日に他社が発行した社債(額面総額¥700,000、利率年1.5%、償還日は2022年3月31日)を額面@¥100につき@¥99の価額で取得したものであり、償却原価法(定額法)で評価している。

6.退職給付引当金の当期繰入額は¥81,000である。

7.すでに費用処理した収入印紙の期末未使用高は¥25,000である。

8.長期借入金は、当期の8月1日に借入期間5年、利率年1.2%、利払いは年1回(7月末)の条件で借り入れたものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。

9.法人税、住民税および事業税について決算整理を行う。仮払法人税等¥18,000は中間納付にかかわるものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。なお、当期の費用計上額のうち¥8,000は、税法上の課税所得の計算にあたって損金算入が認められない。法人税等の法定実効税率は30%である。

10.上記9.の損金算入が認められない費用計上額¥8,000(将来減算一時差異)について、税効果会計を適用する。

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154回日商簿記2級の解答について~第3問 損益計算書の作成①~

2級の最後、財務諸表の作成問題です。今回は損益計算書が出題されました。予想をしましたが、今回は2勝2敗でした。外貨建ては入りませんでしたが第2問の商品売買、第3問の損益計算書が一応予想の範囲内でした。

この予想問題は各社の予想とあわせることで、ほぼほぼ100%に近い予想が出ます。直前期にはこの各社の予想問題を一通りやれば合格するのではないでしょうか。

 

polytech-mk.hatenablog.com

 それでは第3問の中身に入っていきます。今回、損益計算書の問題ということで、貸借対照表の勘定科目は一切必要ありません。

市販のテキスト類や問題集には必ず仕訳をして解くような感じになっています。これは、初心者向けに仕訳から解説した方がわかりやすいようにできているからです。

私のブログでは3回にわたって説明をしていきますが、最初の2回は市販と同じように細かい説明をしながら進めていきます。それを踏まえた上で最後の1回は極力仕訳をせずに短時間で攻略する方法を説明いたします。わからなかった場所については最初の2回に戻って確認をしてください。

冒頭に話した通り、損益計算書を作成するにあたっては、損益計算書に関する科目だけ押さえればよいので、貸借対照表の科目は無視することになります。

3級第5問でお話しした財務諸表の解き方に2級のものを加えたものが以下のとおりとなっています。

一、完璧な財務諸表を作成する必要はなく、予想される配点箇所さえ正しく答えることができていれば、スカスカでも得点は望める。

二、決算整理前残高試算表(前T/B)の数字を単に移すだけの箇所は配点にはなっていない。

三、合計は配点箇所ではなく、ひと通り終えた後の検算のためにする作業でしかない。

四、解く前にひと通り問題文を読んで、各小問の関連付けを確認する。その上で、解ける部分から解いていって構わない。

五、作成する財務諸表の勘定科目だけに集中して、仕訳は極力しない。

六、決算整理事項を一つ解いたら、解答用紙にすぐ書き込むこと。 

以上のことを考えながら3回目の説明を読んでいってください。それでは、基本編を2回に分けて説明していきます。

 

 次の[資料Ⅰ]資料Ⅱ]および[資料Ⅲ]にもとづいて、答案用紙の損益計算書を完成しなさい。なお、会計期間は2018年4月1日から2019年3月31日までの1年間とする。

[資料Ⅰ]

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[資料Ⅱ] 未処理事項

1.売掛金¥10,000が回収不能であると判明したので、貸倒れとして処理する。なお、このうち¥4,000は前期の商品販売取引から生じたものであり、残りの¥6,000は当期の商品販売から生じたものである。

2.未決算は火災保険金の請求にかかわるものであるが、保険会社より火災保険金¥500,000の支払いが決定した旨の通知があったので、適切な処理を行う。なお、決算整理前残高試算表に示されている減価償却費¥25,000は、期中に火災により焼失した建物の減価償却費を月割で計上したものである。

3.土地の一部(帳簿価額¥500,000)を売却し、売却代金¥550,000は当座預金としていたが、この取引は未記帳である。

[資料Ⅲ]決算整理事項

1.売上債権の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金は差額補充法によって設定する。

2.商品の期末棚卸高は次のとおりである。棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する。

帳簿棚卸高:数量850個、帳簿価額@¥400

実地棚卸高:数量844個、正味売却価額@¥395

3.有形固定資産の減価償却は次の要領で行う。

 建物:建物は当期の8月1日に取得したものであり、耐用年数は40年、残存価額はゼロとして、定額法により月割で減価償却を行う。

 備品:耐備品は数年前に取得したものであり、耐用年数10年、残存価額はゼロとして、200%定率法により減価償却を行っている。なお、保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。

4.のれんは2016年4月1日に他企業を買収した取引から生じたものであり、取得後5年間にわたって効果が見込まれると判断し、定額法で償却している。

5.満期保有目的債券は、2017年4月1日に他社が発行した社債(額面総額¥700,000、利率年1.5%、償還日は2022年3月31日)を額面@¥100につき@¥99の価額で取得したものであり、償却原価法(定額法)で評価している。

6.退職給付引当金の当期繰入額は¥81,000である。

7.すでに費用処理した収入印紙の期末未使用高は¥25,000である。

8.長期借入金は、当期の8月1日に借入期間5年、利率年1.2%、利払いは年1回(7月末)の条件で借り入れたものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。

9.法人税、住民税および事業税について決算整理を行う。仮払法人税等¥18,000は中間納付にかかわるものである。決算にあたって、借入利息の未払分を月割計算で計上する。なお、当期の費用計上額のうち¥8,000は、税法上の課税所得の計算にあたって損金算入が認められない。法人税等の法定実効税率は30%である。

10.上記9.の損金算入が認められない費用計上額¥8,000(将来減算一時差異)について、税効果会計を適用する。

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未処理事項1 貸倒れの処理

 売掛金¥10,000が回収不能であると判明したので、貸倒れとして処理する。なお、このうち¥4,000は前期の商品販売取引から生じたものであり、残りの¥6,000は当期の商品販売から生じたものである。

前期の商品売買における貸倒れ4,000円については、前期末に積み立てた貸倒引当金6,000円を使うことができます。

ところが、当期の商品売買における貸倒れ6,000円については、引当金を積み立てていないので貸倒引当金がまだ2,000円余っていたとしても、使うことができず、貸倒損失(費用)で全額処理します。

【未処理事項の仕訳】

(貸倒引当金)4,000/(売掛金)10,000

(貸倒損失)6,000/

売掛金と貸倒引当金については、決算整理事項の1.の処理に影響を及ぼします。残高をしっかり控えておきましょう。

売掛金:550,000(前T/B)-10,000(未処理事項1)=540,000円

貸倒引当金:6,000(前T/B)-4,000(未処理事項1)=2,000円

未処理事項2 未決算の清算

 未決算は火災保険金の請求にかかわるものであるが、保険会社より火災保険金¥500,000の支払いが決定した旨の通知があったので、適切な処理を行う。なお、決算整理前残高試算表に示されている減価償却費¥25,000は、期中に火災により焼失した建物の減価償却費を月割で計上したものである。

建物が火災により焼失したため、保険会社に火災保険金を請求しました。そのときの仕訳が以下のとおりとなります。

【保険金請求時の処理】(前T/B処理済み)

(未決算)600,000/(建物)600,000

減価償却累計額は不明ですが、特に問題に支障がないためこの仕訳としています。

そして今回、保険金が500,000円下りてくることが確定しました。そのため、見積もっていたものよりも100,000円少なかったので、火災損失(費用)または災害損失(費用)で処理します。

第3問については、問題文中に勘定科目の指定がないのと、前T/B・解答用紙の損益計算書に該当する勘定科目が記載されていないため、どちらでも正解となります。

【未処理事項の仕訳】

(未収入金)500,000/(未決算)600,000

(火災損失)100,000/

※今回は、火災損失で処理しています。

「なお、前T/Bに示されている減価償却費~」の件は、月割で減価償却済みなので、今回の仕訳で減価償却が不要であることを意味しています。

未処理事項3 土地の売却

 土地の一部(帳簿価額¥500,000)を売却し、売却代金¥550,000は当座預金としていたが、この取引は未記帳である。

土地500,000円が550,000円で売れたので、50,000円利益が出ました。この場合、利益分については固定資産売却益(収益)または土地売却益(収益)で処理します。

【未処理事項の仕訳】

当座預金)550,000/(土地)500,000

          /(固定資産売却益)50,000

※今回は、固定資産売却益で処理しています。

決算整理事項1 貸倒引当金の設定

 売上債権の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金は差額補充法によって設定する。

未処理事項の仕訳に気をつけながら売掛債権に対して、新たな貸倒引当金の設定を行います。今回の売掛債権受取手形(資産)と売掛金(資産)となります。売掛金のみで計算しないように気をつけましょう。

おさらいしますが、売掛金540,000円、貸倒引当金2,000円に残高が変更されています。設定方法は差額補充法によります。

貸倒引当金:(360,000(前T/B受取手形)+540,000(未処理事項1の売掛金))×2%=18,000円

貸倒引当金繰入:18,000円(上の行より)-2,000円(未処理事項1より)=16,000円

【決算整理事項1の仕訳】

(貸倒引当金繰入)16,000/(貸倒引当金)16,000

決算整理事項2 売上原価の算定

 商品の期末棚卸高は次のとおりである。棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する。

帳簿棚卸高:数量850個、帳簿価額@¥400

実地棚卸高:数量844個、正味売却価額@¥395

まずは、3級と同じように「仕・繰・繰・仕」の仕訳を行います。

(繰越)商品期首棚卸高:220,000(前T/B繰越商品)

(繰越)商品期末棚卸高:@¥400×850個=340,000(資料Ⅲ.2帳簿棚卸高)

棚卸減耗損と商品評価損については、以下の式もしくは図を使って計算します。

棚卸減耗損:@¥400×(850個-844個)=2,400円

商品評価損:(@¥400-@¥395)×844個=4,220円

 

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【決算整理事項2の仕訳】

仕入)220,000/(繰越商品)220,000

(繰越商品)340,000/(仕入)340,000

(棚卸減耗損)2,400/(繰越商品)2,400

(商品評価損)4,220/(繰越商品)4,220

 決算整理事項3 有形固定資産の減価償却

 有形固定資産の減価償却は次の要領で行う。

 建物:建物は当期の8月1日に取得したものであり、耐用年数は40年、残存価額はゼロとして、定額法により月割で減価償却を行う。

 備品:耐備品は数年前に取得したものであり、耐用年数10年、残存価額はゼロとして、200%定率法により減価償却を行っている。なお、保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。

建物の減価償却

取得日(8月1日)から決算日(3月31日)まで8か月分の減価償却を定額法にて行います。

建物の減価償却:3,000,000(前T/B建物)÷40年×8か月分/12か月分=50,000円

備品の減価償却

 200%定率法は、その名の通り通常の定率法の2倍の償却率を使うものです。

償却率の計算式:1÷耐用年数×200%

本問では耐用年数が10年ですから償却率は以下の通りとなります。

∴1÷10年×200%=0.2

これに基づいて減価償却費を計算すると以下の通りです。

定率法の計算方法:(取得原価-減価償却累計額)×償却率

備品の減価償却:(900,000-324,000)×0.2=115,200円

ところで、問題文には気になる数字が付け加えられています。

「保証率は0.06552、改定償却率は0.250である。」

これがある場合には、もう一つ確認作業が増えます。

①「200%定率法での償却」と②「取得原価×保証率」を比較して、

①<②だった場合、改定償却率を用いて計算しなければならなくなります。

(取得原価-減価償却累計額)×改定償却率

それでは、②の計算式を計算してみます。

∴900,000×0.06552=58,968円

その結果、①115,200円>②58,968円のため、①の数字が備品減価償却累計額となります。

【決算整理事項3の仕訳】

減価償却費)165,200/(建物減価償却累計額)50,000

           /(備品減価償却累計額)115,200

決算整理事項4 のれんの償却

のれんの問題文により償却年数は5年となっています。そして、2016年4月1日から2018年3月末まで2回の決算期を経ていますから、3年分の償却が残っています。

2018年度の減価償却はこれからですから、残りの償却年数を間違えないようにしましょう。なお、のれんの償却直接法で行います。

のれん償却:240,000(前T/B)÷3年=80,000円

【決算整理事項4の仕訳】

(のれん償却)80,000/(のれん)80,000

 

決算整理事項5からは次回とします。

 

 

154回日商簿記2級の解答について~第2問 商品売買②~

今日は第2問の4月15日から始めます。まずは、問題から…。

 日商商事株式会社(会計期間は1年、決算日は3月31日)の2019年4月における商品売買及び関連取引に関する次の[資料]にもとづいて、下記の[設問]に答えなさい。

なお、払出単価の計算には先入先出法を用い、商品売買取引の記帳には、「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法」を用いている。また、月次決算を行い、月末には英米式決算法によって総勘定元帳を締め切っている。

[資料] 2019年4月における商品売買および関連取引

4月1日 商品の期首棚卸高は、数量500個、原価@¥3,000、総額¥1,500,000である。

4日 商品200個を@¥3,100で仕入れ、代金のうち¥150,000は以前に支払っていた手付金を充当し、残額は掛けとした。

5日 4日に仕入れた商品のうち50個を仕入先に返品し、掛代金の減額を受けた。

8日 商品450個を@¥6,000で販売し、代金は掛けとした。なお、この掛けの代金には、1週間以内に支払えば、代金の0.1%を割り引くという条件が付されている。

10日 商品200個を@¥3,200で仕入れ、代金は手許にある他人振出の約束手形を裏書譲渡して支払った。

12日 8日の掛けの代金が決済され、所定の割引額を控除した金額が当座預金口座に振り込まれた。

15日 商品300個を@¥3,300で仕入れ、代金は掛けとした。

18日 商品420個を@¥6,300で販売し、代金は掛けとした。また、当社負担の発送運賃¥8,000は小切手を振り出して支払った。

22日 売掛金¥800,000の決済として、電子記録債権記録機関から取引銀行を通じて債権の発生記録の通知を受けた。

26日 得意先に対して¥10,000の割戻しを行うことになり、当座預金口座から得意先の当座預金口座に振り込んで支払った。

30日 月次決算の手続として商品の実地棚卸を行ったところ、実地棚卸数量は280個、正味売却価額は@¥5,500であった。

[設問]

問1 答案用紙の売掛金勘定および商品勘定への記入を完成しなさい。なお、摘要欄への記入も行うこと。

問2 4月の純売上高および4月の売上原価を答えなさい。

問1 各総勘定元帳への記入

4月15日

商品300個を@¥3,300で仕入れ、代金は掛けとした。

商品:@3,300×300個=990,000円

4月4日とほぼ同じです。摘要欄は「買掛金」です。なお、ここで借方が終了したので、合計を出しておきます(この段階で貸方合計にも同じ金額を書いてもOK)。

ちなみに第3問の決算書の合計欄は採点になることはまずありませんが、第2問については採点となる場合がありますのでしっかり記入しましょう。

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【仕訳(参考)】

(商品)990,000/(買掛金)990,000

4月18日

商品420個を@¥6,300で販売し、代金は掛けとした。また、当社負担の発送運賃¥8,000は小切手を振り出して支払った。

4月8日とほぼ同じです。「また、当社負担の~」からも今回の問題に関係ありません。ただし、摘要欄は「諸口」です。

売上:@6,300×420個=2,646,000円

商品:1,321,000円(下の商品ボックスの合計)

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この時点で商品ボックスがすべて埋まりました。そこで次月繰越も差し引きで記入してしまいます。

【仕訳(参考)】

売掛金)2,646,000/(売上)2,646,000

(売上原価)1,321,000/(商品)1,321,000

(発送費)8,000/(当座預金)8,000

4月22日

売掛金¥800,000の決済として、電子記録債権記録機関から取引銀行を通じて債権の発生記録の通知を受けた。

売掛金800,000円を減額します。摘要欄は「電子記録債権」です。

 

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26日と30日を残して、問1は終了です。一応、2つの取引を説明いたします。

4月26日

得意先に対して¥10,000の割戻しを行うことになり、当座預金口座から得意先の当座預金口座に振り込んで支払った。

 得意先の割戻しは、「売上割戻」となります。「売上割戻」勘定も使うこともありますが、仕訳問題では無いので、直接「売上」の減額となります。

【仕訳(参考)】

(売上)10,000/(売掛金)10,000

この仕訳は、問2を解く上での情報となります。

4月30日

月次決算の手続として商品の実地棚卸を行ったところ、実地棚卸数量は280個、正味売却価額は@¥5,500であった。

まず、メモ書きに記入した商品ボックスをもう一度確認してみましょう。

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実地棚卸高は問題文のとおり280個です。商品ボックスの帳簿棚卸高は@3,300円の商品が280個です。数量が一致していますから、棚卸減耗損は発生していません

商品の正味売却価値が@¥5,500に対し、在庫の仕入れ値は@¥3,300ということで、値上がりしています。したがって、商品評価損の計上もありません

よって、「仕訳なし」の取引となります。

純売上高および売上原価の算定

 売上に関する取引は、8日・18日・26日です。売掛金勘定の答案用紙(借方)と26日の取引を見て計算します。

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純売上高:2,700,000(8日)+2,646,000(18日)-10,000(26日:割戻分)=5,336,000円

 売上原価に関する取引は、商品勘定の答案用紙(貸方)を見て計算します。

なお、4月5日は仕入返品のため売上原価には含まれません。

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売上原価:1,350,000(8日)+1,321,000(18日)=2,671,000円

 

155回も中止の会場が出ているようですが、コロナで自粛モードになっている分、自己啓発に取り組む方は増えているようです。

実際ありがたい事に、このブログを見てくださる方が急上昇しています。普通の受験では、競争率が上がるため合格率が下がりライバルが増えてしまいますが、簿記検定は合格を目指す同士が増えます。

独学は孤立無援でさみしいものですが、見えないところで自分と同じ苦労をしています。中止の会場はこれから増えるのかも知れませんが、これからも頑張って勉強を続けて行きましょう。私も陰ながら応援しています!

154回日商簿記2級の解答について~第2問 商品売買①~

順番でいけば第3問なのですが、今回のメインディッシュたるものですので、第2問を先に説明いたします。なお、少し長いので2回に分けてやっていきたいと思います。

 日商商事株式会社(会計期間は1年、決算日は3月31日)の2019年4月における商品売買及び関連取引に関する次の[資料]にもとづいて、下記の[設問]に答えなさい。なお、払出単価の計算には先入先出法を用い、商品売買取引の記帳には、「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法」を用いている。また、月次決算を行い、月末には英米式決算法によって総勘定元帳を締め切っている。

[資料] 2019年4月における商品売買および関連取引

4月1日 商品の期首棚卸高は、数量500個、原価@¥3,000、総額¥1,500,000である。

4日 商品200個を@¥3,100で仕入れ、代金のうち¥150,000は以前に支払っていた手付金を充当し、残額は掛けとした。

5日 4日に仕入れた商品のうち50個を仕入先に返品し、掛代金の減額を受けた。

8日 商品450個を@¥6,000で販売し、代金は掛けとした。なお、この掛けの代金には、1週間以内に支払えば、代金の0.1%を割り引くという条件が付されている。

10日 商品200個を@¥3,200で仕入れ、代金は手許にある他人振出の約束手形を裏書譲渡して支払った。

12日 8日の掛けの代金が決済され、所定の割引額を控除した金額が当座預金口座に振り込まれた。

15日 商品300個を@¥3,300で仕入れ、代金は掛けとした。

18日 商品420個を@¥6,300で販売し、代金は掛けとした。また、当社負担の発送運賃¥8,000は小切手を振り出して支払った。

22日 売掛金¥800,000の決済として、電子記録債権記録機関から取引銀行を通じて債権の発生記録の通知を受けた。

26日 得意先に対して¥10,000の割戻しを行うことになり、当座預金口座から得意先の当座預金口座に振り込んで支払った。

30日 月次決算の手続として商品の実地棚卸を行ったところ、実地棚卸数量は280個、正味売却価額は@¥5,500であった。

[設問]

問1 答案用紙の売掛金勘定および商品勘定への記入を完成しなさい。なお、摘要欄への記入も行うこと。

問2 4月の純売上高および4月の売上原価を答えなさい。

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 第2問の商品売買の問題は、簡単な商品有高帳のようなものを作成しなければ解けません。こちらでは、T字勘定の商品ボックスを使って解いていきます。

今までの過去の解説でも申し上げましたが、配られたメモ用紙に一生懸命書いている状態では0点ですから、答えがわかった都度解答用紙に記入していきましょう。

それでは日付順に再度問題を添えて解説していきます。

問1 各総勘定元帳への記入

4月1日

商品の期首棚卸高は、数量500個、原価@¥3,000、総額¥1,500,000である。

この期首棚卸高をまず、メモ用紙の商品ボックスに記入していきます。

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商品有高帳のように使用するので、すべて原価で記入します。仕入れたときは借方に、売り上げたときは貸方に記入します。

商品ボックスに記入したら、解答用紙の該当箇所に転記します。

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4月4日

商品200個を@¥3,100で仕入れ、代金のうち¥150,000は以前に支払っていた手付金を充当し、残額は掛けとした。

解答に必要なデータは、商品の仕入の部分だけです。「代金のうち~」は総勘定元帳の摘要欄に関係しますが、書いている内容から「諸口」だと判断できればOKです。

商品:@3,100×200個=620,000円

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解答には特に必要ありませんが、参考のために仕訳を示しておきます。

【仕訳(参考)】

(商品)620,000/(前受金)150,000

        /(買掛金)470,000

4月5日

4日に仕入れた商品のうち50個を仕入先に返品し、掛代金の減額を受けた。

先入先出法とは関係なく、4日の在庫について返品を行ったことに注意です。また、「掛代金から減額」なので、摘要欄には「買掛金」が入ります。

商品:@3,100×50個=155,000円

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単価ごとに払出後の在庫を記入しておくとわかりやすくなります。

【仕訳(参考)】

(買掛金)155,000/(商品)155,000

4月8日

商品450個を@¥6,000で販売し、代金は掛けとした。なお、この掛けの代金には、1週間以内に支払えば、代金の0.1%を割り引くという条件が付されている。

売上:@6,000×450個=2,700,000円

商品:@3,000×450個=1,350,000円

先入先出法なので、前月繰越の在庫から払い出します。「なお、この掛けの代金~」の文章は、12日の情報なので、無視します。

また、売上原価対立法(販売の都度売上原価に振り替える方法)のため、減らした商品を売上原価にすぐ振り替えます。したがって、摘要欄は「売上原価」となります。

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【仕訳(参考)】

売掛金)2,700,000/(売上)2,700,000

(売上原価)1,350,000/(商品)1,350,000

4月10日

商品200個を@¥3,200で仕入れ、代金は手許にある他人振出の約束手形を裏書譲渡して支払った。

商品:@3,200×200個=640,000

一度受け取った約束手形を裏書して使ったので、摘要欄には「受取手形」が入ります。

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【仕訳(参考)】

仕入)640,000/(受取手形)640,000

4月12日

8日の掛けの代金が決済され、所定の割引額を控除した金額が当座預金口座に振り込まれた。

8日の「なお~」の0.1%の割引きが適用されます。ですが、当座預金の総勘定元帳はないため、この部分も無視することとなります。また、「売上割引」は営業外費用のため問2の純売上高や売上原価算定にも影響しません。

その結果、単純に8日分の売掛金が全額減るだけのことです。摘要欄は「諸口」となります。

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【仕訳(参考)】

売上割引:2,700,000×0.1%=2,700円

(売上割引)2,700/(売掛金)2,700,000

当座預金)2,697,300/

 

次回は15日からとします。

154回日商簿記2級の解答について~第5問 単純総合原価計算~

第5問は単純総合原価計算です。本編では省略しましたが、今回は「材料の追加投入」のあるケースです。

問1 当社は製品Ⅹを生産・販売し、実際総合原価計算を採用している。次の[資料]にもとづいて、答案用紙の総合原価計算表の( )内に適切な金額を記入しなさい。

なお、原価投入額合計を完成品総合原価と月街仕掛品原価に配分する方法として先入先出法を用いること。

[資料]

[生産データ]

月初仕掛品量 4,000㎏(50%)

当月投入量 59,000㎏

合計 63,000㎏

差引:正常仕損量 1,000㎏

  月末仕掛品量 2,000(50%)

完成品量 60,000㎏

[原価データ]

月初仕掛品原価

 A原料費 480,000円

 加工費 220,000円

 小計 700,000円

当月製造費用

 A原料費 7,080,000円

 B原料費 660,000円

 加工費 9,600,000円

 小計 17,340,000円

 合計 18,040,000円

(注)( )内は加工費の進捗度である。A原料は工程の始点で投入している。B原料は工程の60%の点で投入しており、B原料費はすべて完成品に負担させる。正常仕損は工程の終点で発生し、それらはすべて当月作業分から生じた。正常仕損費はすべて完成品に負担させ、仕損品に処分価値はない。

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問2 上記[資料]について、同じデータで仕損品の売却による処分価値を1㎏当たり120円としたときの完成品総合原価を計算しなさい。

各ボックスの作成(下準備)

生産データや原価データが出てきた場合、すぐにA原料費・B原料費・加工費の仕掛品ボックスを作成します。

A原料費の仕掛品ボックス

 

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A原料費は、工程の始点で投入していますので、通常通りに計算します。

先入先出法の場合、当月完成高は月初仕掛品在高の単価と当月投入の単価が混在しています。一方、月末仕掛品在高は当月投入の単価のみとなっているため、まずは月末仕掛品在高の金額を計算します。 

当月投入の単価:7,080,000÷59,000=120円/㎏

月末仕掛品在高の金額:2,000㎏×120円/㎏=240,000円

仕損品は「完成品に負担させる」ため、完成品の個数に含めて計算します。

A原料費の完成品原価:480,000(月初仕掛品在高)+7,080,000(当月投入)-240,000(月末仕掛品在高)=7,320,000円

B原料費の仕掛品ボックス

B原料費は、工程の60%の時点で追加投入するものです。この追加投入する方法は、このブログでは新論点となりますので、少し説明をいたします。

 解き方のポイントは、月初仕掛品在高及び月末仕掛品在高の進捗度に注目することです。本問では月初仕掛品在高・月末仕掛品在高ともに50%の進捗度で止まっています。

B原料費は60%以上でないと投入できないため、月初・月末ともにB原料費は使用されていません。ですから、当月投入分がそのまま当月完成品の金額となります。

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なお、仕損費が完成品に含まれて61,000㎏になっていますので、借方の個数調整は当月投入で行うこととなります。

B原料費の完成品原価:660,000円(当月投入の金額と一致)

加工費の仕掛品ボックス

加工費の月初仕掛品在高と月街仕掛品在高の数量に進捗度(%)を掛けて数量を変更します。あとは、先ほどと同じようにボックスを作成します。

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当月投入の単価:9,600,000÷60,000=160円/㎏

月末仕掛品在高の金額:1,000㎏×160円/㎏=160,000円

加工費の完成品原価:220,000(月初仕掛品在高)+9,600,000(当月投入)-160,000(月末仕掛品在高)=9,660,000円

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仕損品評価額を考慮した完成品総合原価

仕損品もスクラップパーツとして売ることができる場合があります。今回は完成品に負担させるため、完成品総合原価から仕損品評価額を差し引きます。

仕損品評価額:@120円(1個あたりの処分価額)×1,000㎏(正常仕損量)=120,000円

完成品総合原価:17,640,000(問1の完成品総合原価)-120,000(仕損品評価額)=17,520,000円