ポリテク火星出張所!

商業高校あがりの行政書士が日商簿記をはじめとして資格支援のためにブログを書いています。

労務費(費目別計算)その1~労務費の分類と基本的な仕訳~

今回は、費目別計算の2つ目労務費に関して解説していきます。

労務費の分類

労務とは、工場で働く従業員(工員)に対してかかる賃金や給料のことをいいます。労務費は、以下の区分によって分類されます。

①賃金

②給料

③従業員賞与手当

④退職給付費用

法定福利費

また、①の賃金は、さらに次のような区分に分けられます。

ⅰ直接工 直接作業分

ⅱ直接工 間接作業分

ⅲ間接工

直接工とは、切削や組立など製造過程に直接携わる工員のことをいいます。間接工とは、製造過程に直接携わらないが、運搬や修繕など直接工をサポートする工員のことをいいます。

また、直接作業分とは、製造に直接関わっている時間帯をいいます。間接作業分とは、材料が到着するのを待っていたり、故障した機械が動くのを待っている時間(手待時間)や製造をしている時間帯以外の作業時間(間接作業時間)のことをいいます。

このうち、①のⅰ直接工の直接作業分のみが直接労務となり、それ以外は、すべて間接労務となります。

①賃金

工員に支払われる給与のことを特に賃金といいます。

②給料

工場での事務職や工場長(管理者)などの工員以外について支払われる給与を給料といいます。

③従業員賞与手当

従業員に支払われる賞与や、家族手当や通勤手当、住居手当などの基本手当を総称して従業員賞与手当といいます。

④退職給付費用

従業員の退職金に備えて計上する費用を退職給付費用といいます。そのうち商業簿記でも出てきます。

法定福利費

健康保険料などの社会保険料は、従業員と会社が折半して支払うこととなっています。そのうち、会社が支払う社会保険料法定福利費といいます。

これも直接労務費だけが仕掛品に配賦され、間接労務費が製造間接費に配賦されます。覚えるときは、直接の直接だけが直接労務で、それ以外が間接労務費を覚えましょう。

基本的な仕訳

①賃金や給料を支払った場合

賃金や給料を支払った場合は、賃金(費用)・給料(費用)または賃金給料(費用)で処理します。なお、源泉所得税社会保険料などは、賃金給料から天引きして代わりに会社が支払う形になるので、預り金(負債)で処理します。

 

例)当月の賃金の支給額は10,000円だった。なお、このうち源泉所得税社会保険料の合計500円を差し引いた残額を現金で支払った。

(賃金)10,000/(預り金)500

       /(現金)9,500

 

②賃金・給料の消費額の計算

原価計算期間は月単位となっているので、毎月1日から月末までの1ヶ月間となっています。ところが、「20日締め、25日支払」給与の締め日(給与計算期間)が違う場合があります。この場合、このズレを調整して消費額の計算をする必要があります。

 

例)5月の賃金支給額(20日締め、25日支払)は10,000円だった。なお、前月未払分(4月21日~4月30日)は2,000円、当月未払分は3,000円だった。

これを図にすると以下のとおりとなります。

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基準値はオレンジの帯です。まずは、はみ出している前月未払分を差し引きます。そして、足りない当月未払分を足します。

当月消費額:賃金支給額-前月未払分+当月未払分

     :10,000円-2,000円+3,000円=11,000円

仕訳については、再振替仕訳、賃金支払時、当月未払分の計上(費用の見越し)の3つとなります。

*5月1日(再振替仕訳)*

(未払賃金)2,000/(賃金)2,000

*5月25日(賃金支払日)* ⇒①の例

(賃金)10,000/(預り金)500

       /(現金)9,500

*5月31日(費用の見越し計上)*

(賃金)3,000/(未払賃金)3,000

 

労務費の振り替え処理

消費した労務費については、直接労務については仕掛品(資産)へ、間接労務については製造間接費(費用)へ振り替えます。

 

例)5月の賃金消費額を計上する。なお、直接工の賃金消費額は9,000円、作業時間は45時間(うち直接作業時間は40時間、間接作業時間は5時間)で、間接工の賃金消費額は2,000円であった。

前段でお話しした通り、直接の直接だけが直接労務費で、それ以外は間接労務費になります。それを元にして、それぞれ計算していきます。

また、直接工については、1時間当たりの賃金(消費賃率)を計算し、これに作業時間を掛けていきます。

消費賃率:9,000円/45時間=@200円

直接工の直接作業分:@200円×40時間=8,000円 ⇒これだけが直接労務

直接工の間接作業分:@200円×5時間=1,000円

間接工の賃金消費額:2,000円

直接労務:8,000円

間接労務:1,000円(直接工の間接作業分)+2,000円(間接工分)

仕訳にすると以下のとおりとなります。

(仕掛品)8,000/(賃金)11,000

(製造間接費)3,000/

 

そして、①~③をまとめたものが以下の図となります。

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有価証券その1~有価証券の購入~

有価証券とは、株式、債券、手形、小切手などの財産価値のある証券をいいます。簿記2級においての有価証券としては、4種類あります。

①売買目的有価証券

安いときに買って、高いときに売るという売買をすることによって、利ざやを得て儲けるための株式や債券をいいます。

②満期保有目的債権

満期まで保有することによって、それまでの利息を得るための国債社債などの債券をいいます。

③子会社株式

ある会社を支配するため、一定数購入した当該株式をいいます。それにより支配した側を親会社、支配された側を子会社といいます。A社の株式を購入した場合は、A社株式(資産)として表示される場合もあります。

④関係会社株式

ある会社と有効な関係を築くために購入した当該株式をいいます。①~③のどれにも当てはまらない有価証券は、その他有価証券(資産)として分類されます。

有価証券を購入した場合の処理は、固定資産と同じです。購入代価に証券会社に支払う手数料などの付随費用を足した金額が取得原価となります。

有価証券の取得原価=購入代価+付随費用

 

例)マーズ株式会社では、以下の有価証券を購入した。

①売買目的でA社株式10株(@1,200円)を購入し、代金は売買手数料500円とともに現金で支払った。

②満期保有目的で、B社社債100,000円を額面100円につき97円で購入し、代金は現金で支払った。

③C社株式60株(@700円、発行済み株式総数100株)を購入し代金は現金で支払った。

④業務提携のため、D社株式10株(@300円)で購入し、代金は小切手で支払った。

 

①売買目的有価証券

取得原価:@1,200円×10株+500円=12,500円

(売買目的有価証券)12,500/(現金)12,500

②満期保有目的債権

取得原価:100,000円×97円/100円=97,000円

(満期保有目的債権)97,000/(現金)97,000

③子会社株式

発行済み株式の過半数を取得することで支配権を得ることができます。

取得原価:@700円×60株=42,000円

(子会社株式)または(C社株式)42,000/(現金)42,000

④関係会社株式

取得原価:@300円×10株=3,000円

(その他有価証券)3,000/(当座預金)3,000

 

材料費(費目別計算)その4~予定消費単価~

材料費の最後です。いままでは、実際の購入単価を用いて計算していました。ところが、毎回の購入単価は一定のものではなく、時価によって変動するものです。そのため、総平均法で計算をしていると、月末まで消費した金額を確定させることはできず、それまで仕訳もできないし、材料費がその都度いくらかかったのか計算することさえもできないという現場の問題が生じます。

そこで、年度初めに今年の材料費の単価はこれだけですと決めておけば、予算にもとづいた材料の購入もできますし、計算や仕訳もその都度行うことができるようになります。このときの材料費の単価を予定消費単価といいます。

最終的には予算消費額と実際消費額とは相違しますが、月末時にその処理をすることで帳尻を合わせることができます。この考え方も工業簿記としてはセオリー通りの処理となりますので、予算と実際の金額をここで押さえておいてください。

材料を消費したときの処理

例)当月、直接材料として原材料80㎏を消費した。なお、この予定消費単価は@250円である。

仕訳の仕方は、なんら変わりなく従来と同じようにします。

予定消費額:@250円×80㎏=20,000円

(仕掛品)20,000/(材料)20,000

月末時の処理

月末に実際消費額が判明したら、予定消費額と比較をして、その差額分を材料消費価格差異という勘定科目で処理します。これは月末に予算と比べてどのくらい相違があったかという資料になる数字となります。

 

例)当月の直接材料費の実際消費額は19,200円(@240円×80㎏)であった。なお、予定消費額は20,000円(@250円×80㎏)で処理をしている。

 

さて、今までの考え方でいくと、材料費を800円多く計上していたのだから、その分減らして正しい数字にすればいいので、

(材料)800/(仕掛品)800

という風な仕訳を考えてしまいがちです。

しかし、これでは「今月は800円節約できたね♪」という情報が埋もれてしまいます。工業簿記は管理会計に属するものなので、自社の分析も簿記に要求しているのです。そのため、材料費価格差異を使って情報を残しています。

*正しい仕訳*

(材料)800/(材料消費価格差異)800

 

ちなみに仕掛品が800円多く計上されていますが、決算時に売上原価に組み込んでいくので、ここでは予算のまま無視して進めることとなります。

そして、試験対策としてもう一つ。この差異が貸方に出ているときは、有利差異として予算よりも少なく済んで良かったね。ということになります。また、この差異が借方に出ているときは、不利差異として予算よりも多く使ってしまったことになります。○○差異という勘定科目はこれからたくさん出てきますので、ここでは一旦こういうものだということで、心の隅にでも気に留めておいてください。

年度末決算の処理

材料消費価格差異は、毎月計上されていきますが、最終的には売上原価(費用)に振り替えられていきます。貸方差異(有利差異)の場合は、売上原価はその分減ることになりますし、借方差異(不利差異)の場合は、売上原価がその分増えることになります。

仮に前項目の例の数字(800円の有利差異)が年間の差異だった場合はこのような仕訳となります。

(材料消費価格差異)800/(売上原価)800

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当座預金その4~銀行勘定調整表②~

前回に引き続き、銀行勘定調整表の後半です。今回は企業側の処理になるので、仕訳を伴います。

④入金(出金)連絡未通知

売掛金などの回収のために入金があったり、水道光熱費などの引き落としがあって、預金口座残高の変動の連絡がきていない状態のことです。

企業側としては、その未通知の一つ一つを処理しなければなりません。

 

例)売掛金回収のため6,000円が当座預金口座に振り込まれていたにもかかわらず、連絡が未達だった。

*処理すべき仕訳*

当座預金)6,000/(売掛金)6,000

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⑤未渡小切手

取引先に渡す予定で小切手を作成し、仕訳済みであるにもかかわらず、実際には取引先には渡すことができず、月末調べてみると金庫にその小切手が残ってしまっている状態の場合、銀行では出金処理がなされていないため、不一致が生じます。この場合は、いったん仕訳をした処理を元に戻す仕訳をしなければなりません。

 

例)買掛金15,000円の支払いのため小切手を振り出したが、金庫に保管されたままであることが判明した。

*以前行っていた仕訳*

(買掛金)15,000/(当座預金)15,000

*処理すべき仕訳*

当座預金)15,000/(買掛金)15,000

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⑥誤記入

これはただ単純に仕訳が間違っていて、企業側に不一致が生じた状態です。正しい仕訳にし直せば解消することができます。

 

例)売掛金20,000円の口座振り込みを誤って28,000円と記入していたことが判明した。

*以前行っていた仕訳*

当座預金)28,000/(売掛金)28,000

*正しい仕訳*

当座預金)20,000/(売掛金)20,000

当座預金に8,000円多く振り込まれたことにしているので、その分を減らす仕訳をします。

*処理すべき仕訳*

売掛金)8,000/(当座預金)8,000

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まとめ

銀行勘定調整表は、この6種類をしっかり分類し、作成することが必要です。そのため、割と苦手とする受験生も多いようです。152回で出題されましたので、しばらくは出ないと思いますが、ごくまれに2回連続出題されることもあり得ますので、基本だけは押さえておきましょう。

決算書について

弊事務所では、個人事業主や小規模の会社向けに会計記帳の代行とコンサルティングを行っています。

会計記帳というと最終的には確定申告をするための書類に関連してくるのですが、確定申告については税理士業務であるため、手を出せないので、提携先の税理士に依頼することになります。

ただ、会計記帳は、確定申告書のためだけにされているのは、とてももったいないことだと思います。月次締めをすると、月次の残高試算表及び貸借対照表などの財務諸表も出力できます。一番真っ先に目に入るのは、売上高や粗利と呼ばれる売上総利益、最終的な税引前当期純利益だと思います。それ以外にも見るべき場所がたくさんあることをご存知でしょうか?

例えば、貸借対照表において簿記2級までの知識であれば、このぐらいの内容となっています。

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ところが、決算書の見方という観点になれば、だいぶ様変わりします。

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貸借対照表右側は、どのようにして資金を集めたかがわかるものとなっています。また、貸借対照表左側は、その集めた資金をどのように使ったのかがわかるものとなっています。

そして、この貸借対照表を見ることでいろいろな自己分析と、今後の経営判断をすることができます。この図であれば、自己資本比率という数値があります。

自己資本比率とは、右側の総資本(負債・純資産合計)に対する自己資本(純資産)の割合をいい、安全性をチェックするのに役に立つ数値となります。当然ながら、自分でかき集めた自己資本が多い方が良いとされています。

今回1つではありますが、このような数値を用いてコンサルティングを行います。決算書は確定申告だけの書類にするのではなく、今後の経営指針となる書類ですので、興味を持っていただければ幸いです。最後に業種別の自己資本比率(「中小企業実態基本調査」(平成30年調査速報))を掲載します。20人以下の事業所をピックアップしています。

数値がより少なければ、借金が多すぎるので整理をすべきということになり、数値がより多ければ、まだ融資ができるという判断材料となりますので、参考にしてみてください。 

 

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材料費(費目別計算)その3~棚卸減耗費の発生~

商業簿記で棚卸減耗損と商品評価損の話をしましたが、工業簿記でも月末の棚卸の結果、き損や紛失で在庫が合わないときがあります。この場合は、棚卸減耗費となります。商業簿記では、棚卸減耗だったので、間違わないようにしましょう。

また、棚卸減耗費は間接経費となるため、製造間接費として処理します。

商品評価損の論点は工業簿記ではありません。しかし、商業簿記で使ったボックスが登場します。詳しくは標準原価計算のときまでお預けになります。

 

polytech-mk.hatenablog.com

  例)月末における材料の帳簿棚卸数量は100㎏(1㎏@250円)であるが、実地棚卸数量は90㎏だった。なお、棚卸減耗は正常に発生したものである。

棚卸減耗費:@250円×(100㎏-90㎏)=2,500円

(製造間接費)2,500/(材料)2,500

 

ちなみに2級では問題の最後に「棚卸減耗は正常に発生したものである。」との文言がありますが、これは気にする必要はありません。2級では一通りのパターンしかないからです。

正常なものについては、製造原価に含めて計算します。

(もし、盗難や火災などの正常なものでなければ、非原価項目として処理することになります。)

当座預金その3~銀行勘定調整表①~

銀行勘定調整表とは、月末や決算期に銀行から当座預金の残高証明書を取り寄せ、これと帳簿残高が一致しているかを調整するために作成する表をいいます。

作成方法は、両者区分調整法企業残高基準法銀行残高基準法があります。企業残高基準法は、企業側の残高をベースにして銀行勘定調整表を作成します。銀行残高はそれとは逆に銀行残高をべースとするものです。ここでは、両方の合体型である両者区分調整法を見ていきます。

企業残高と銀行残高が不一致になる原因はいくつかあります。まずは、企業側が処理不要な銀行側の記入について説明します。銀行勘定調整表でいえば右側の記入になります。

 

①時間外預入

企業側が銀行の時間外金庫を使用して、入金をしたため、銀行では処理ができていません。このため、銀行残高と企業残高に不一致が生じます。

企業側としては、入金は正しいものであり、翌営業日には解消されるため、仕訳は不要です。銀行側としては、入金処理が必要となるため、銀行残高に加算します。

 

例)当社の当座預金残高は337,000円であったが、銀行の残高証明書の残高は285,000円であった。なお、当座預金口座について次の事項が判明した。(以降すべてに適用)

①現金18,000円を預け入れた際、銀行で翌日付の入金として処理されていた。

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②未取立小切手

銀行に小切手の取立を依頼していたがまだ完了していない場合、銀行残高と企業残高の不一致が生じます。

企業側が仕訳を間違っているわけではないので、修正仕訳は不要です。銀行側が小切手を取り立てれば、不一致が解消されます。

 

②小切手58,000円の取立を銀行に依頼したが、まだ銀行が取り立てていなかった。

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③未取付(呈示)小切手

代金の支払などのため小切手を振り出したが、その受け取った相手方が銀行に赴いて現金化していない場合(未取付、未呈示)、銀行残高と企業残高の不一致が生じます。

企業側が間違っている訳ではないので、修正仕訳は不要です。小切手が現金化されれば、不一致が解消されます。

 

③買掛金11,000円の支払いのため小切手を振り出したが、まだ銀行に呈示されていなかった。

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①~③までで銀行側の記入が終了しました。この時点で正しい処理が行われていれば、合計は必ず一致します。

次回は、企業側の処理を説明します。